『CQ 経営戦略としての異文化適応力』は、ホフステードの6次元モデルを元に、文化の違いを理解したうえで成果を出す異文化適応力について学べる本です。
ホフステード博士は、オランダの経営学・人類学の教授です。72か国、11万6000人のIBM社員を対象に文化の違いをスコア化した研究をきっかけに、異文化適応力を高めるツールとして6次元モデルを開発しました。
もちろん、同じ国出身だからと言って同じ性格なわけではありませんが、文化の影響は間違いなく存在します。
国籍の違う人と一緒に働くときに6次元モデルを知っておくと、相手の見ている世界観を理解するのに役立ちます。
★ 『CQ 経営戦略としての異文化適応力』 の要約ポイント★
・CQ(異文化適応力)とは何か?
・ホフステード博士の6次元モデル
自分が無意識に持っている価値観にも目を向けることができます。
日本は世界の中でも、特徴的な価値観を持つ国でした。
この記事では 『CQ 経営戦略としての異文化適応力』 の要約を紹介します。
目次
要約①:CQ(異文化適応力)とは何か?
ホフステード博士は文化を「ある集団と他の集団を区別する心のプログラム」と定義しています。
その文化=心のプログラムは玉ねぎのような構造をしており、表層に見られる慣行の奥には価値観が存在します。
たとえば、その文化の中でどんな人物・行動が評価されるかという表層の奥には、称賛すべき価値観があります。
日本を代表するスポーツ選手と聞かれてイチロー選手を挙げる人が多いですが、その奥にはイチロー選手のストイックさ、一つのことを磨き上げる美学に惹かれている日本人が多いのではないでしょうか。
文化の表出の奥にある価値観は、0~12歳で形成されると言われています。その価値観はあまりにも当たり前で、同じ文化の中にいるときには意識されません。
他の文化の人と出会って衝突が起こったときでさえ、文化的な価値観に起因していると気づかない可能性もあります。
ホフステード博士はビジネスと国民性の関係について、次のように述べています。
「文化のもたらす影響を理解せずに国境を超えたビジネスに取り組むのは、水に一度も触れたことがないのに泳げると錯覚することと同じだ」
もし異なる文化で育った人と関わるなら、文化の違いを理解して活かす力=異文化適応力が必要です。
CQ(cultural intelligence):異文化適応力
国民文化の違いを意識したうえで、多文化間で効果的に成果を出していく力
異文化適応力が高いというのは、海外滞在経験の長さや英語の堪能さとは関係ありません。
異なる文化に関心を持ち、知識を身につけながら行動・内省しながら、目的を達成できる力を指します。
異なる文化の人とうまくやりたいと願うのであれば、相手がどのような社会に属していて、どのようなシステムで動いているのか、また何を大事にしてどんなコミュニケーションをしているのかに、関心を抱きましょう。
文化の違いの理解を助けてくれるのが、ホフステード博士の6次元モデルです。
要約②:ホフステード博士の6次元モデル
ホフステード博士の6次元モデルでは、次の6つの次元で文化の違いを説明するフレームワークです。
①権力格差(小さい⇔大きい)
②集団主義⇔個人主義
③男性性⇔女性性
④不確実性の回避(低い⇔高い)
⑤短期志向⇔長期志向
⑥人生の楽しみ方 抑制的⇔充足的
違いを理解するためのフレームワークであり、どちらのほうが良い/悪いというわけではありません。
①権力格差(小さい⇔大きい)
権力格差の捉え方の違いは、「この世は不平等」という現実をどう扱うかという違いです。
権力格差が小さい文化では、格差はない方がよいと考えます。周りをやる気にさせる力が重要であり、階層は少ない方がよいという考え方です。
一方、権力格差が大きい文化では、格差は存在するものであり年長者に敬意を払います。部下や子どもは守られるべき存在です。
権力格差が小さい国:アメリカ、イギリス、ドイツ、北欧など
権力格差が大きい国:東南アジア諸国、中国、インド、アフリカ諸国など
※日本のスコアは54
EUは権力格差が小さい国が多いですが、その中でフランスは68と権力格差が比較的大きい国です。
フランスは威厳を持って子どもをしつけるという考えが主流で、2015年の調査では体罰禁止にフランス人の70%が反対と答えました。
②集団主義⇔個人主義
集団主義はWe(わたしたち)という内集団を優先する考え方を持つ一方、個人主義はI(わたし)が主語です。
集団主義の国:東南アジア諸国、中国、中東諸国、中南米諸国など
個人主義の国:アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、北欧など
※日本のスコアは46
集団主義の国では人間関係が重要なので、「この人と仕事をしても大丈夫か?」と人間性をチェックされます。個人主義の国では、職務にあったスキルがあるかが最重要です。
日本のスコアが46(少しだけ集団主義寄り)なのは意外でした。日本は集団主義だと言われますよね。
欧米諸国と比べると集団主義ですが、アジア諸国のなかでは個人主義が強いです。
この疑問の1つの解釈として、社会学者の山岸俊男氏の調査が紹介されていました。
その調査では、「周りの人が集団主義だと思うか?個人主義だと思うか?」という質問と、「あなた自身は集団主義だと思うか?個人主義だと思うか?」という質問をしたそうです。
そして、「日本人は自分たちのことを集団主義的な傾向があると考えているが、『自分だけは例外』と考えている集団である」としています。さらに山岸氏はこの日本人特有の「集団のパラドックス」が起きる原因を、「個人主義的に行動したら、周りの人たちに嫌われてしまうのではないか」と皆が思い込んでいるからではないかと説明しています。
③男性性⇔女性性
男性性の文化は、成功や地位の向上を目指して仕事を重視する文化です。
一方、女性性の文化とは、弱者への思いやりを大切にし、生活の質を重視する文化です。
男性性の国:日本、スロバキア、ハンガリー、スイス、メキシコなど
女性性の国:スウェーデン、デンマーク、オランダ、ノルウェー、フィンランドなど
※日本のスコアは95
この対比がとても印象的でした。
日本は95と男性性が群を抜いて高いです。男性性の特徴は目標のためにコツコツ粘り強く取り組む姿勢であり、1つの道を極める美学、職人気質な日本人に当てはまる特徴だと感じました。
北欧は教育費の負担ゼロなどの手厚い社会保障システムが称賛されますが、女性性が高く、生活の質のために高い税金を払うことに抵抗が少ない文化的な背景があるのかもしれません。
男性性の文化的価値観を持った日本は、北欧の社会保障システムのメリットには憧れても、そのまま導入することはできないでしょう。
女性性の文化は生活やワークライフバランスを重視するので優れているように見えますが、デメリットもあります。
もし非凡な才能や野心がある場合は、女性性の文化では自信過剰や攻撃的と受け止められ、自分の才能を発揮する足かせになるかもしれません。
④不確実性の回避(低い⇔高い)
不確実性の回避が低い文化では、不確実なことがあまりストレスにならず、成功のために積極的にリスクを取ることができます。
一方、不確実性の回避が高い文化では、規則はきっちり決まっていて、正解があるほうが安心できます。
不確実性の回避が低い国:ジャマイカ、シンガポール、デンマーク、香港など
不確実性の回避が高い国:中東諸国、中南米諸国、ロシア、日本、フランスなど
※日本のスコアは92
日本は不確実性の回避がとても高いです。公共機関のダイヤが正確なのも頷けます。
不確実性の回避が低い国出身の人たちは失敗を折り込み済みで小さく始めてみる、リーンスタートアップ型を好みます。しかし、不確実性の回避が高い国出身の人たちは事前によく検討し、計画を練った上で進めたいのです。
⑤短期志向⇔長期志向
突然ですが、「ニワトリ・牛・草」の中から2つ選ぶなら何を選びますか?
西洋人はニワトリと牛を選び、東洋人は牛と草を選ぶ確率が高いそうです。
西洋人は動物という対象物のカテゴリーで認識し、東洋人は「牛は草を食べる」という関係性を読み取っていると考えられています。西洋人は短期的で分析的な思考、東洋人は長期的で統合的な思考という傾向の違いがあります。
短期志向の国:中東諸国、中南米諸国、アフリカ諸国、アメリカなど
長期志向の国:韓国、台湾、香港、中国、日本、シンガポールなど
※日本のスコアは88
日本に100年以上続く長寿企業が多いのも、10年・20年先の長期的なビジョンを描くからかもしれません。
短期志向は目の前の事象を、長期志向は全体像を見るという特徴もあります。
長期志向の人から見ると、全体像もわからず走り出す短期志向の人が拙速に思われるかもしれませんし、逆に短期志向の人から見れば、全体像を把握してから取り掛かりたい長期志向の人は決断が遅いように見えているかもしれません。
⑥人生の楽しみ方 抑制的⇔充足的
人生の楽しみ方と言う次元は、人間の欲求に対してどのくらい肯定的/否定的に捉えるかという尺度です。
人生を楽しむ欲求は自由に満たしてよい=充足的で肯定的な捉え方
人生を楽しむ欲求は抑制して社会規範を守るべき=抑制的で否定的な捉え方
充足的な文化では、人生は自分でコントロールできると考え、楽観的で幸せだと感じる人が多いです。一方、抑制的な文化では、自分ではコントロールできないことが起こる(運命主義)と考え、真面目なふるまいが推奨されます。
充足的な国:ベネズエラ、メキシコ、スウェーデン、オーストラリアなど
抑制的な国:エジプト、パキスタン、ロシア、東欧、イラク、中国、インドなど
※日本のスコアは42(少し抑制的)
笑顔の捉え方に大きな違いがあります。
ロシアには”意味もなく笑うのは間抜けな証拠”ということわざがあるそうです。
抑制的な文化の国では真面目で厳格な態度が信用されます。一方、充足的な文化の国では笑顔でポジティブシンキングが基本です。
日本の文化に特徴的なのは、男性性が強いこと、不確実性の回避が高いことです。
異文化の人と接するときは相手の国のスコアも重要ですが、自分の無意識の文化的価値観を把握することも必要です。色眼鏡の存在を認識しないままでは認識のズレが大きくなってしまいます。
『CQ 経営戦略としての異文化適応力』 の次に読むなら?
『CQ 経営戦略としての異文化適応力』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『異文化理解力』
さまざまな文化を持つ人が一緒に働く上で起こる問題とその解決のヒントがわかる本。
外国人だけでなく、同じ日本人でも価値観は多様化しています。
組織として1つのビジョンを共有するために、価値観が違う人と協働する方法が学べます。
参考記事:『異文化理解力』の要約:カルチャーマップで自分と相手の文化を知る
②『多様性の科学』
多様性が組織に与えるプラスの影響がわかる本。画一的な組織の弱さ、怖さもわかります。
参考記事:『多様性の科学』の要約と感想:多様性がなぜ必要なのか?がわかる本
③『異なる人と「対話」する本気のダイバーシティ経営』
ダイバーシティ経営を進めるためのヒント、事例がわかる本です。
マイノリティに同化を求めるのではなく、違いを価値に変える組織へのステップが学べます。
参考記事:『異なる人と「対話」する本気のダイバーシティ経営』の要約と感想
まとめ:異文化適応力を高めよう
・表面上に表れる慣行の奥には、その文化特有の価値観がある
・文化の違いを理解して活かす力=異文化適応力
・ホフステード博士の6次元モデル
①権力格差(小さい⇔大きい)
②集団主義⇔個人主義
③男性性⇔女性性
④不確実性の回避(低い⇔高い)
⑤短期志向⇔長期志向
⑥人生の楽しみ方 抑制的⇔充足的
・日本は男性性が強く、不確実性の回避が高いのが特徴
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