『パラドックス思考』の要約まとめ:矛盾する感情に気づいて受け容れる

『パラドックス思考』の要約まとめ:矛盾する感情に気づいて受け容れる

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『パラドックス思考』は、感情パラドックスに注目した問題解決方法がわかる本。


パラドックス(矛盾)がある問題を単純な二者択一(AかBか)にしてしまうことで、逆に問題の解決から遠ざかってしまいます。矛盾があることに気づいて受け容れる、そして二者択一でない解を探しだすことで創造的に解決できます。

★ 『パラドックス思考』 の要約ポイント★

 

・パラドックス思考の基本姿勢

 

・パラドックス思考の実践方法

ー感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する

ー感情パラドックスを編集して、問題解決策を見つける

一方の感情に蓋をするのではなく、自分の気持ちに正直になることがパラドックス思考のポイントだと感じました。

この記事では 『パラドックス思考』 の要約を紹介します。

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要約①:パラドックス思考の基本姿勢

パラドックスとは矛盾であり、論理パラドックスと感情パラドックスに分けられます。

論理パラドックス

矛盾する主張AとBがあり、どちらかを正しいとすると論理的に正しい答えが出せなくなる

(例)自己言及パラドックス(クレタ人が「クレタ人はみな嘘つきだ」と言う)

感情パラドックス

矛盾する感情AとBがあり、どちらかを優先すると納得のいく答えが出せない

(例)自由に働きたい vs 管理されて働きたい

現代のややこしい問題は、論理的な不整合よりも感情的な矛盾から起こる問題が多いです。VUCAと呼ばれる、この先どうなるか・何が起きているのか・どうすればいいのかわからない時代のわからなさが感情のパラドックスを引き起こしています。

たとえば、会社に縛られずに自由に働きたいと思う一方、適度に管理されて会社で働きたい思いもある。適度に管理されたい感情を無視してフリーランスになっても、会社にいたときのメリットを失ったことに気づき、辞めないほうがよかったのかもとモヤモヤする。しかし、自由に働きたい感情に蓋をして会社で働き続けてもやっぱりモヤモヤする。

どうすればうまくいくのか、自分が何をしたいのか見通せない時代に、感情パラドックスを認識することで問題解決に近づきます。

勇気を持って、最初から「Aしたいけれど、実はBもしたい」という「欲張りな感情」を受け入れてしまうこと。その上で、欲張りを両立する解決策をかしこく考えることが、パラドクス思考の基本姿勢なのです。

欲張りな感情は悪いことのように思われるかもしれませんが、見て見ぬふりをするほうが問題を余計にややこしくしてしまいます。

パラドクス思考では、「人間はめんどくさいけれど、愛らしい存在である」という前提に立ちます。相反する感情を持ってしまうことを人間らしいと考え、受け入れた上で解決策を考えるのです。

私たちが「ややこしい問題」の深みにはまってしまうのは、本当は複合的な要因が絡んだ問題を、安易に「A or Bの問い」にしてしまう、どちらかを悪者にしてしまったり、「存在してはいけないもの」としてしまったりすることにあります。どちらかを否定すればするほど、問題はより絡まってしまいます。

 

感情パラドックスには5つの基本パターンがあります。

基本パターンを知ることで、自分の感情パラドックスに気づくヒントになるでしょう。

①素直⇔天邪鬼(自己欺瞞)

仕事を任せたいけど自分がいなくてもうまくいくのは嫌

 

②変化⇔安定

変わりたいけど変わりたくない

 

③大局的⇔近視眼的

短期的にはこうしたいけど、長期的にはこうしたい

 

④もっと⇔そこそこ

もっと〇〇したいけど、〇〇しすぎたくない

 

⑤自分本位⇔他人本位

自分の好きなことをやりたいけど、他人からも評価されたい

感情パラドックスは、「AしたいけれどBしたい」という形で表現できます。問題に直面したら、その背景にどんな「AしたいけれどBしたい」があるかを考えてみましょう。

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要約②:パラドックス思考の実践方法

 

パラドックス思考には以下の3つのレベルがあります。

レベル1:感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する

 

レベル2:感情パラドックスを編集して、問題解決策を見つける

 

レベル3:感情パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める

ここでは、レベル1とレベル2について紹介します。

感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する

感情パラドックスに気づくだけでも、気が楽になる効果があります。意外と感情パラドックスに気づいていない、もしくは、気づかないフリをしていることが多いです。

自分がどんな感情を抱いているのか把握(メタ認知)して、「AしたいけれどBしたい」と言語化し、あるあるなこと・平凡なことだと受け入れましょう。

 

まず、問題を取り巻く感情を深掘りします。コツは主語をI(わたし)で考えることです。わたしはどう感じるか、何をしたいかを考えます。他人を主語にしないようにします(×上司に~してほしい)。

その際、プルチックの感情の輪を参考に、どんな感情があるか考えてみましょう。

プルチックの感情の輪

引用元:マーケター必見!感情は何種類?プルチックの感情の輪で分類してみた (marke-otaku.com)

 

次に、「AしたいけれどBしたい」の形で感情パラドックスを言語化します。

「この2つが同時に実現できれば、悩みが晴れる!」と思える感情を選びましょう。

 

なかなか感情が深掘りできないときは、次のような問いが有効です。

・真逆の感情があるとしたら?(機械的に反転させてみる)

・嫉妬していることはないか?(本当に望んでいることを見つける)

・言われると嬉しい褒め言葉は?(本当に望んでいることを見つける)

・なかなか決められないことは?(何かを失う不安、決めないで得ていることを見つける)

・もしあの制約がないとしたら?(どうせ無理と諦めていることを見つける)

・周囲からのツッコミどころは?(自分の矛盾を指摘してもらう)

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感情パラドックスを編集して、問題解決策を見つける

感情パラドックスに気づいて受け容れるだけでなく、レベル2では両立する解決策を見つけます。

”感情パラドックスを編集する”とは、感情AとBの関係性を別の視点、犠牲から両立に捉え直すという意味です。

犠牲のストーリー→A or B(AかB)

 

両立のストーリー→A and B(AもBも)

まず、犠牲のストーリーを特定します。自分が得たいものの対価として何を捨てなくてはいけないと考えているか(A or Bは何か)を明確にします。

そして、AとBについてそれぞれ深掘りします。

・もう少し具体的に言うと?

・なぜそれを達成したいのか?

・どうなったら達成なのか?

その上で、AとBを違う言葉に変えられないか?を考えます。

本で紹介されていた例としては、「自分のキャリアを大切にしたい、部下の働き方を認めたい」という上司が抱える感情パラドックスでした。自己犠牲の精神で出世してきた上司が、定時に帰って副業に勤しむ部下にイライラしてしまうという例です。

AとBの感情を深掘りした結果、”大切”を”挑戦”に、”認める”を”寛容”に言いかえました。

(例)

自分のキャリアを大切にしたい、部下の働き方を認めたい

 

⇓ ”大切”を”挑戦”に、”認める”を”寛容”に

 

自分が仕事で挑戦したい、部下に寛容になりたい

 

⇓ 犠牲のストーリーに言いかえ

 

自分が仕事で挑戦したいけれど、部下に寛容になれない

自分が挑戦することと部下に寛容であることは必ずしも矛盾しない、最後の犠牲のストーリーが常に成立するわけではないと理解できます。

 

ここから、両立のストーリーを考えます。

両立のストーリーには3つの戦略があります。

・切り替え戦略 AとB交互にリソースを振り分ける

 

・因果戦略  AだからこそB、または、BだからこそAの一石二鳥を考える

 

・包含戦略  AとBの上位感情Cを見つける

切り替え戦略の場合、自分のための時間と部下のための時間を切り替えます。AもBもないがしろにしない水準で、どのくらいのリソースがあればどちらも両立しているといえるか考えます。

 

因果戦略では、必然のストーリー(AだからこそB、または、BだからこそA)の可能性を考えます。どちらが目的でどちらが手段かは自分がしっくりくる方が自分なりの正解です。

「目的につながるように、どう手段をカスタマイズするか?」を試行錯誤することが、因果戦略の醍醐味です。

 

最後の包含戦略は、AとBを両立したいと考える欲張りの源泉を見つけます。これは、組織レベルの問いにも応用でき、難易度が高い戦略だそうです。発想を飛躍させる力や自分の価値観に自覚的である必要があります。

次のような質問で根源的な欲求を探していきます。

・なりたい自分の姿とは?

・真の目的は何か?

・理想の状態は何か?

 

さらに本書では、レベル3「感情パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める」の思考法も載っています。

創造的な問題解決力を身につけたい人におすすめの1冊です。気になった方はぜひ読んでみてくださいね。

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『パラドックス思考』 の次に読むなら?おすすめの本3選

 

『パラドックス思考』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。

①『問いのデザイン』

 

『問いのデザイン』はワークショップや会議を問いで設計していく本です。

”問いで認識の固定化・関係性の固定化を壊す”ことで、会議や研修の生産性や理解度、出てくる答えの創造性が上がります。

参考記事:問いのデザインの要約まとめ:答えのない課題に取り組むときに視野を広げる1冊

②『問いかけの作法』

 

『問いのデザイン』の続編ともいえるのが『問いかけの作法』。

『問いかけの作法』では、質の高い問いかけでチームの魅力と才能を引き出すための本です。

 

メンバーのどういう行動に注意して観察し、どんな仮説を立てるのか?など、

ファシリテーターや研修講師だけでなく、チームリーダーをはじめ多くの人に参考になる内容です。

参考記事:『問いかけの作法』の要約:問いかけのサイクルモデルでチームのアイディアを引き出す

③『言語化の魔力』

言語化で悩みを軽くする方法がわかる本。

悩みを3つの軸(コントロール軸/時間軸/自分軸)で切り分ける、視座を変える等の思考法を使えば、悩みの根本原因は解決しなくても、考え方次第で悩みを解消することができます。

 

言語化できれば他者に相談できる、相談できれば安心できる。1人で抱えて視野が狭くなっているのは危険な状態です。言語化して悩みを取り扱い可能な状態にしましょう。

参考記事:『言語化の魔力』の要約まとめ:言語化すれば悩みは軽くなる

 

★今回紹介した本★


 

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