『信頼学の教室』は、信頼を構成する要素や信頼を失ったときの対応方法がわかる本。
著者の心理学者と同名の先生とその友人の対話形式で読みやすく、もし自分だったらどうするか?と考えながら読めます。
信頼は能力/動機づけ・人柄/価値共有という3つの要素から導かれ、ケースによって何が重要視されるかが異なります。
信頼について考察したい人、信頼を失ったときの対外的な対応(クライシス・コミュニケーション)のヒントを知りたい人におすすめです。
★ 『信頼学の教室』 の要約ポイント★
・信頼を導く3要素(能力/動機づけ・人柄/価値共有)
・信頼を失ったときにどう回復するか
・自発的に監視と制裁システムを申し出る
子どもと話すのも良いと思いました。
この記事では 『信頼学の教室』 の要約を紹介します。
目次
要約①:信頼を導く3要素(能力/動機づけ・人柄/価値共有)
信頼は曖昧で多様なものという前提ですが、共通する要素があります。
それは、”「相手は自分に被害をもたらすことができる状況にある。しかし、そんなことはしないはずだ」と思い、相手に利害を委ねること”です。
なぜ信頼できるのか?の要因は主に3つあります。
・能力:専門性やスキルがある
・動機づけ・人柄:誠実だ、優しい、真面目など
・価値共有:同じ目的や価値を持っている
童話「ないたあかおに」を題材に、対話式でわかりやすく説明してくれます。
童話「ないたあかおに」は、村人と仲良くなりたい赤鬼のために、友人の青鬼が村で暴れて赤鬼に倒され、赤鬼が村人と仲良くなれる(青鬼はどこかに行ってしまう)というお話です。
赤鬼が最終的に村人に信頼されたのはなぜでしょうか?
青鬼を倒す戦闘力があったからだとしたら、能力から信頼が生まれています。しかし、能力だけなら次は赤鬼が村人を襲うリスクがあります。それに、たとえ青鬼に負けてボロボロになっても、村人の赤鬼に対する信頼度はアップするのではないでしょうか。
赤鬼は村人と仲良くなりたいとずっと言っていたことが人柄の信頼につながったのかもしれません。
能力や人柄はある程度自分の意思で高めることができます。しかし、価値共有は相手との関係性の中で決まります。
<主要価値類似性モデル>
信頼される側の特性だけでなく、信頼する側・される側の共通性によって決まる
もし本当に青鬼が悪い鬼だったと仮定して、青鬼を倒すという目的で赤鬼と村人が一致団結していたらどうでしょうか。価値共有をしているから信頼しているとも言えます。
しかし、村人がケガをしても赤鬼がなんとも思わないとしたら、それは本当の信頼と言えるか疑問です。
役に立つから信頼するという道具的な信頼から、利害の一致を超えた仲間的な信頼までグラデーションがあります。
価値共有が功を奏した例としては、DJポリスが挙げられます。
サッカーの日本代表チームがワールドカップ出場を果たしたとき、軽快な声かけで渋谷の交通整理をした警察官が話題になりました。ワールドカップ出場を祝うという価値を群衆と共有することで、仲間意識が芽生えたことが成功の要因とされています。
要約②:信頼を失ったときにどう回復するか
不祥事やミスなどで信頼を失ったとき、どうやって信頼を回復させれば良いでしょうか。
原発事故後のさまざまな組織(東京電力、原子力安全・保安院、JR東日本など)に対する信頼の調査結果によると、信頼が落ちたときこそ価値共有の重要性が高まっていました。
信頼が落ちたときには能力(例:最新技術で再発防止)や動機づけ(例:第三者機関の調査による公平性)を示すよりも、価値共有(例:被害を受けた人の気持ちを理解し寄り添っていること)のほうが重要です。
たとえば、原発事故で信頼が下がった原子力安全・保安院への信頼は、価値共有と強く紐づいていました。信頼が下がらなかった気象研究所への信頼は、能力と強く紐づいています。
つまり、信頼が下がっているときはまず価値共有、信頼されている組織がさらに信頼を高めたいときは能力や動機づけ・人柄の認知を広めることで信頼が高まります。
では、価値共有が最も重要として、次は能力と動機づけのどちらが重要でしょうか。
それは問題の性質によって異なります。
賛否が分かれる問題⇒価値共有の次は動機づけ(プロセスの公正さ)
賛同が得られる問題⇒価値共有の次は能力(実行してくれる)
たとえば、喫煙抑止策としてたばこ税増税と未成年者の喫煙防止があります。
たばこ税増税は賛否が分かれる問題ですが、未成年者の喫煙防止に反対な人はほとんどいないでしょう。
たばこ税増税に賛同してほしいなら、価値共有の次は動機づけが影響し、未成年者の喫煙防止は能力が影響しました。
また、関心が低いテーマの場合は共感する価値がないので、決定のプロセス=動機づけを重視する傾向があります。
<価値保護理論>
・関心が高い⇒実現する結果が大切
・関心が低い⇒決定プロセスが大切
組織に対する信頼があるのか/ないのか、賛否が分かれているのか/賛同が得られているのか、関心が高いのか/低いのか等で、どんな側面を前に出して信頼回復を図ればよいかが変わります。
要約③:自発的に監視と制裁システムを申し出る
実際に信頼回復を行うときは、自発性が重要です。
信頼回復策として監視や制裁システムを受け入れる場合、それが自発的でなければ信頼のレベルは受け入れないときと同じです。
原発事故の低線量被ばくの地域を題材に、次の3パターンの医師のうちだれが信頼できるか?というシナリオ実験が行われました。
・低線量被ばくの地域に自発的に住む医師
・低線量被ばくの地域に渋々ながら住む医師
・低線量被ばくの地域に住まない医師
低線量被ばくの影響はないと言った場合、医師自身がその地域に住んでいることで自動的に制裁システムが機能します。
この実験でわかったことは、自発的に住む医師が一番信頼され、渋々ながら住む場合と住まない場合はほぼ変わらないということです。自発的でなければ監視や制裁システムを受け入れても意味はありません。
まとめると、信頼を失ったときは価値の共有に重きをおき、監視と制裁システムを自主的に受け入れるのが優先で、その後、問題の性質によって能力や動機づけのアプローチを考えます。
『信頼学の教室』 の次に読むなら?おすすめの本3選
『信頼学の教室』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『人を動かす』
『人を動かす』はデール・カーネギーの古典的名著です。
人の信頼を獲得する、心を動かすために知っておくべき原則がまとまっています。
相手の自己重要感を満たすことが重要であり、『信頼学の教室』の価値共有に共通しています。
参考記事:『人を動かす』の要約まとめ:相手の自己重要感を満たすことを習慣にしよう
②『「利他」とは何か』
美学者、政治学者、批評家/随筆家、哲学者、小説家という、ジャンルの違う視点からの利他の捉え方を知ることができます。
善意の押し付けでない、他者をコントロールしないよき利他とは、相手への信頼があります。
参考記事:『「利他」とは何か』の要約まとめ:純粋な利他は個人の意思を超えたところにある
③『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』
どうして他人を誤解してしまうのか、をいろいろな事件・事例から考察した本。
自分の判断を過信しない、慎重さ・謙虚さが大切です。でも他者を信頼するから幸せに生きられるという側面もあります。
参考記事:『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』の要約まとめ:なぜ他人を誤解してしまうのか?
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