『「利他」とは何か』の要約まとめ:純粋な利他は個人の意思を超えたところにある

『「利他」とは何か』の要約まとめ:純粋な利他は個人の意思を超えたところにある

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『「利他」とは何か』は、5人の研究者が利他をテーマにした論じた本です。

美学者、政治学者、批評家/随筆家、哲学者、小説家という、ジャンルの違う視点からの利他の捉え方を知ることができます。著者5名は東京工業大学の「未来の人類研究センター」のメンバーだそうです。

利他の落とし穴は他者に対する支配であり、純粋な利他は個人の意思を超えたところにある。

自己犠牲ではない利他、他者を傷つけない利他とは何か?を考えさせられました。

★ 『「利他」とは何か』 の要約ポイント★

 

・数値化による利他=共感による利他の否定

 

・よき利他には意外性がある

 

・純粋な利他は意思を超えたところにある

正直、難解なものもありましたが、利他について考えるきっかけや材料としておすすめの本です。

この記事では 『「利他」とは何か』 の要約(第1章・第2章中心)を紹介します。

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要約①:数値化による利他=共感による利他の否定

 

近年の利他主義には合理性や数値化という特徴があります。

合理的利他主義(ジャック・アタリ)

自分のために他人の利になる行為をする。”情けは人のためならず”精神。

回り回って自分のためになるから利他的になる(=合理的)。

 

効果的利他主義(ピーター・シンガー)

限られたリソースでいちばんたくさんの良いことをする。

効果を数値化し、一番大きな効果が得られるところに使う。

どちらも利益を動機としており、利益を出すからには効果を数値化して比較することが重要です。

数値化の利他主義は、共感を理由とする利他に対する反発・否定でもあります。

 

共感による利他とは、たとえば、身内ががんで亡くなったからがんの研究をする組織に寄付する等を指します。そうすると、身近にかかる人がめったにいないような難病や一生のうちに一度も訪れない国で困っている人は、寄付を集めにくいことになりますよね。

同じ10万円を寄付しても、がんの研究は微々たるものしか進まないのに、発展途上国に寄付すれば確実に100人に予防接種を受けさせられる(=効果的)かもしれません。

ところが、効果的利己主義は、こうした共感にもとづく利他を否定します。共感にもとづいて行動してしまうと、ふだん出会うことのない遠い国の人たちや、そもそもその存在を意識していない問題にアプローチできないからです。

もちろん、だからといって、効果的利他主義者も共感そのものを否定するわけではありません。しかし、利他的な行動が共感に支配されないようにすること、共感よりも理性にもとづいて利他を行うことが重要である、と言うのです。

 

共感から利他が生まれるなら、共感されないと助けてもらえないということになってしまいます。

特別支援学校の廊下に「好かれる人になりましょう」という標語があり、著者の伊藤さんは愕然としたそうです。共感にもとづいた利他は、共感する側とされる側に上下関係を生んでしまうかもしれません。

また、地球の環境問題のような大きすぎるテーマには共感しにくく、支援が集まりにくくなります。

日本が国債をバンバン発行できるのは、

生まれていない未来の人類への共感が足りないからでしょうか。

理性にもとづいたら、もっと違う結論になるのかも。

 

ただ、数値化による利他の欠点もあります。

<数値化による利他の欠点>

 

・数値化しやすいもの(お金、物質的な支援)を重視しやすくなる

 

・数値化することで利他の気持ちが消える

利他の精神として”魚を与えるより魚の釣り方を教えること”といわれますが、魚の数のほうが数値化しやすいですよね。効果を求め過ぎると、効果が測りやすいもの・短期的に効果が見えやすいものばかりに支援が集中します。

 

また、数値化することで利他の気持ちや倫理感が低下する、という実験結果もあります。

ボストン消防署では、月曜日と金曜日に欠勤する消防士が多かったため、「病欠は15日まで、それ以上は減給にする」と決めました。すると、クリスマスと元日の病欠連絡が前年の10倍になって欠勤日数が増えてしまったそうです。

この制度がつくられる以前は、現場のために行動するというひとりひとりの倫理規範がありました。ところが、そこに数字による管理が入ってきたとき、この職場は倫理的・感情的なつながりでは回っていないんだ、とスタンダードが変わってしまった。そうなったことで、結局いちばん大事な消防士としての倫理が急速に消失してしまったというのです。

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要約②:よき利他には意外性がある

 

利他には、他者のコントロールにつながる危険性があります。良かれと思ってやったことが、相手の尊厳や成長の機会を奪ってしまうことがあるのです。

 

全盲の女性は、自分の生活が「毎日はとバスツアーに乗っている感じ」になったと表現しています。良かれと思って、周りの人が先回りして教えてくれるのだそうです。

 

善意の押し付けでない、他者をコントロールしないよき利他とは、相手への信頼があります。押しつけになる利他は、信頼ではなく安心を得ることが目的になっています。

安心:想定外の行動が起きない、コントロール下にある

 

信頼:想定外の行動が起きて不利益を被るかもしれないけど、相手を信じている

たとえば、子どもがケガをしないように、危ないものを取り除き、転んでも痛くないマットを敷き詰めてベビーゲートで囲っておけば安心です。それに対して、子どもが自由に遊ぶのを見守り、もしかしてちょっと痛い思いや部屋を汚す等するかもしないけど、やらせてみるのが信頼ではないでしょうか。

つまり、安心は不確実性に閉じていて、信頼は不確実性に開いています。

利他の行為の結果を手放し、予測できなさを受け入れることが、よき利他の条件です。

要約③:純粋な利他は意思を超えたところにある

 

善意から行った行為だとしても、利他は支配や残酷さ、負債感(お返ししなきゃ)と結びつきやすいです。

インド独立の父・ガンディーはこの問題に非常に繊細で、どんな者に対しても、何千もの人が見ているなかで食物を与えてはならない、つまり、慈悲とは尊厳という問題と絶対にペアでなければ成立しないものである、と言っています。

与えたことが、与えた相手から直接的に、または、別の誰かから間接的にでも、返ってくると思っている時点で、利己的な利他であり相手に負債感を与えることになります。

 

それでは、相手に負債感を与えない純粋な贈与や利他はあるのでしょうか。

政治学者の中島岳志さんは、当たり前のオートマティカルな行為が純粋な利他ではないかと考察しています。

当たり前のオートマティカルな行為:

意思に還元されない何か、意思の外部の力、思わず・ふいにやってしまうこと

観音祈願型のわらしべ長者の物語が出てくるのですが、最初にわらを交換するとき、わらを交換して何か返してもらおうという意思は感じられません。子どもがほしがるから、ふと渡してしまうのです。

(わたしは知らなかったのですが)わらしべ長者のわらは、青年が観音様にお願いしてお寺に21日居座ってやっともらえたものでした。そんなわらをあっさりあげてしまいます。

そこに、青年の意思を超越した何かオートマティカルな力がありそうです。

 

また、ヒンディー語に残っている与格という構文も、オートマティカルな力を表現していると見ることもできます。

日本語   :「わたしはうれしい」

ヒンディー語:「わたしにうれしさがやってきてとどまっている」

与格は不可抗力で何かがやってくるとき(熱が出た、愛している等)に使います。どこからやってくるかというと、意思を超えたどこかといえるのではないでしょうか。

 

日本語にも、「わたしには~と思われる・感じられる」という言い方があります。自分で思おうと思っていないけど、自然にそう思える、というニュアンスですよね。

利他的な行為は、やろうと思ってやる限りは利己心や相手の尊厳を奪いかねないリスクがありますが、どこからかやってくる何かに突き動かされてやる利他が純粋な利他と言えそうです。

利他はどこからやってくるのかという問いに対して、利他は私たちのなかにあるものではない、利他を所有することはできない、常に不確かな未来によって規定されるものであるというのが、ここまでの議論を通じてお伝えしたかったことです。

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『「利他」とは何か』 の次に読むなら?おすすめの本3選

 

『「利他」とは何か』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。

①『共感という病』

 

共感したい人だけにスポットライトを当てることで他の人を排除してしまう、

共感を利用したマーケティングで共感疲労をしてしまう等、

”共感にどこか感じていた違和感”が言語化されています。

支援されにくい人ほど、支援を必要としていることがわかります。

参考記事:『共感という病』の要約:共感されない人をどうやって助けるか?【惻隠の情と社会規範】

②『効果的な利他主義宣言』

 

慈善事業は、科学的にそれがリソースの最善の使い方なのかを検証するシビアな目線が欠けがちです。しかし、最善の行動を選ぶ(それ以外は捨てる)ことが、支援者にも支援の対象者にも誠実で、世界をよくする近道だとわかります。

効果的利他主義は、数値化に偏り過ぎなければ良い考え方だと思います。

『「利他」とは何か』と合わせて読んで、自分なりの考えを深められます。

参考記事:『<効果的な利他主義>宣言』の要約まとめ:限られた資源の最高の使い方を考える

③『「わかりあえない」を越える』

 

NVCを使えば、自分の感情に自覚的になり、率直にリクエストを伝えられます。

NVC(非暴力コミュニケーション):

自分の内側と外側に平和をつくる、思いやりのある与え合いのコミュニケーション

自己尊重と他者の尊重を両立させるコミュニケーションがわかる本です。

参考記事:『「わかりあえない」を越える』の要約まとめ:NVC(非暴力コミュニケーション)とは?

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まとめ:利他とは何か?を探究する本

・数値化の利他主義は、共感を理由とする利他に対する反発・否定

 

・数値化の利他主義には欠点がある

 数値化できるものを重視しすぎる、数値化すると利他の心が消える欠点がある

 

・利他は他者の支配やコントロールにつながる危険性がある

 

・よき利他は相手を信頼し、利他の結果の意外性を受け入れる余地がある

 

・意思の力を超越したオートマティカルな力が純粋な利他行為を行わせる

相手の役に立ちたい、喜ぶことをしたいと思ったとき、相手の尊厳を守る方法で行っているか・見返りを求める気持ちがないかを点検したいと思います。

 

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