『PRESUASION(プリスエージョン)』は説得の下準備の重要性がわかる本。
PRESUASIONとは、persuasion(説得)の接頭辞perをpre(前)にもじった造語です。
説得の前に何に注意を向けているかが、その後の判断に大きく影響します。
★ 『PRESUASION(プリスエージョン)』 の要約ポイント★
・特権的瞬間をつくりだす
・好ましい概念を連想させる
・アイデンティティの共有が好意を生む
著者は『影響力の武器』で有名なロバート・チャルディーニ博士。
この記事では 『PRESUASION(プリスエージョン)』 の要約を紹介します。
目次
要約①:特権的瞬間をつくりだす
説得の下準備が重要なのは、下準備によって特権的瞬間をつくりだすためです。
特権的瞬間:受け入れ気分が特別に高められた、制限のある期間
説得のときに何を言うかは重要ですが、正確にはいつ何を言うかが結果を左右します。
説得の達人を達人たらしめるのは、下準備、すなわち受け手がメッセージに出会う前から、それを受け入れる気になるようにする行為なのです。
特権的瞬間がつくられる要因のひとつに、人間は言われたものに注意を向けやすいという特性があります。
たとえば占いで「あなたは頑固な人だ」と言われたら、頑固だったことを思い出して「頑固だったこともあるかもな」と思いますよね。これを肯定的検証方略と言います。
肯定的検証方略
ある可能性が正しいか判断するとき、ハズレではなく当たりを探す。
不在より存在に気づきやすい。
生きてきてずっと頑固でなかったことを確認するのは大変です。頑固だったことのほうが意識に上りやすく、占いが当たっているような気になってしまいます。
これをビジネスに活用すると、「〇〇に満足していますか」とアンケートで聞けば実際より満足の回答が増えます。「〇〇に満足していますか、あるいは、どのくらい不満を感じていますか」と聞けば影響を受けません。
ということは、後者のような聞き方をしている企業は信頼できる、と言えるかもしれませんね。
別の例では、「冒険心のあるタイプですか?」と聞いてから新商品のサンプルを試してもらうという実験もあります。
「冒険心のあるタイプですか?」と聞かれると冒険心があったことを思い出すからか、なんと97%が「はい」と答えました。そして、冒険心があるという自己イメージのまま新商品を試すか聞かれると、試す確率が33%から75.7%に上がったそうです。
ある決定を導く要因は往々にして、最も賢明なヒントを与えるものではなく、その直前に心に浮かんでいたものなのです。なぜなのでしょうか。その答えと関係しているのが、方向づけされた注意の徹底した性質です。方向づけされた注意は、その場で意識の向いている側面を目立たせるだけでなく、同時にそれと競合するような側面をすべて、たとえそれが非常に重要なものであっても覆い隠してしまうのです。
方向づけられた注意は、本人が意識していなくても影響を与えます。
ソファのECサイトでの実験では、サイトの背景を変えるだけで購買行動に影響を与えることができました。購買客は「背景に影響を受けていない」と答えているにも関わらず、です。
ふわふわした雲の背景⇒座り心地のよいソファの売れ行きが上がる
硬貨の背景 ⇒価格の安いソファの売れ行きが上がる
特権的瞬間は期間限定、一時的なものです。少しでも長く注意を留めておくには、次のようなポイントがあります。
・自分自身の情報にする(「あなた」を使う、当てはまっていると思わせる)
・未完了の状態にする(ツァイガルニク効果)
要約②:好ましい概念を連想させる
特定の概念に注意を向けると、その概念に関連する概念も影響を受けます。
人間が本能的に注意を向けてしまうのが性的魅力と暴力です。
性的魅力⇒独自性、自分らしいものに惹かれやすくなる
暴力的⇒大衆性、みんなと同じで安心なものに惹かれやすくなる
独自性を売りにした商品に性的魅力をアピールした広告を使うのは理にかなっています。
私たちが特定の概念に関心を向けただけで、その概念と綿密に結びついた別の諸概念も、私たちの心の中で特権的瞬間を享受し、それ以外の概念ではまったく太刀打ちできないほどの影響力を獲得するのです。
セールスでは、信頼を感じてもらうのが重要ですよね。信頼と自分を連想で紐づけているセールスマンの話が載っていました。
成績優秀なあるセールスマンは訪問セールスのとき、わざと資料を車に忘れてくるそうです。そして、アンケートを書いてもらっている間に「資料を忘れてしまったので、車から勝手に取ってきていいですか」と聞き、玄関を出入りして取ってきます。
すると、玄関を出入りさせるくらい信頼できる人という連想が特権的瞬間をつくり、成約率が上がるのです。
セールスの説明はほかのセールスマンと同じですが、そのセールスマンの成績の高さの秘密はセールス前に玄関を出入りすることでした。
ほかにも、連想を活用した例があります。
・目標達成の暗示
勝利、成就、成功、習得などの言葉を使う
優勝したランナーの写真を貼っておくと成績上昇、意欲は2倍
・メタファーを使う
犯罪を獣に例えたときと病気に例えたときで解決策が変わる
(獣は檻に入れるor病気は治療する)
・自己を連想させるものに価値を置く
名前や誕生日が同じだと選ばれやすい
・かんたんである
何かをスラスラ理解できると好感度や価値が増す
この連想を活用したのがif-thenプランニングです。
if-then(イフゼン)プランニング
『もし~になったら、・・・する』という形で、いつ何をするかを計画すること
<if-then(イフゼン)プランニングの例>
ダイエット⇒水曜日になったら、トレーニングジムで1時間運動する
勉強 ⇒8時になったら単語帳を開いて4ページ覚える
仕事 ⇒20時になったらテレビとスマホの電源を切って本を読む
など
if-thenプランニングは連想を自分で作って設定していると言えます。
「水曜日になったら、トレーニングジムで1時間運動する」なら、水曜日とジムを結び付けて、水曜日という言葉を見たり聞いたりしたらジムを連想するようになります。
要約③:アイデンティティの共有が好意を生む
同意を得るための下準備には、相手との関係性が重要です。
好意を引き出す関係性は、「あの人は自分たちの身内だ」という感覚、つまりアイデンティティを共有している状態です。
<アイデンティティを共有するには?>
・一緒に存在する:血縁、出身地、連想(兄弟、先祖、母国、遺産など)
・一緒に活動する:同調経験(歩調を合わせる、一緒に音楽を聴く)
この中では、一緒に音楽を聴くのが手軽にできる方法です。ライブの一体感を想像すると、音楽にアイデンティティを共有するパワーがあるのも納得でした。
気づきやすい規則性(リズム、拍子、音の強さ、ビート、テンポ)が他に類を見ないほどたくさんそろっているため、音楽には同期化を促す類まれな力が備わっているのです。音楽を聴くとき、人々は動き、知覚、声、感情といった次元で簡単に協調できます。そして、こうした状態から、自他の融合、社会的結束、支援行為といったおなじみのまとまりの目印が生じます。
最後に、好意的な関係性をつくるためにすぐに使えそうなTipsを紹介します。
相手の考えを聞きたいときは、”意見・要望”よりも”アドバイス”を使うほうがアイデンティティの結びつきを感じさせやすいです。
”意見・要望”と聞くと、相手は自分自身にフォーカスして内省的になります。”アドバイス”のほうが融合的なイメージを与えるそうです。これからはご意見を求めるシーンで、アドバイスを使ってみてくださいね。
『PRESUASION(プリスエージョン)』 の次に読むなら?
『PRESUASION(プリスエージョン)』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『影響力の武器』
『PRESUASION(プリスエージョン)』でも十分ですが、さらにたくさんの事例を知りたい人は『影響力の武器』もおすすめです。
営業や経営者の必読書ともいわれるくらい、鉄板のビジネス書。
影響力の6つの武器を使って、相手からYESを引き出します。
参考記事:『影響力の武器』の要約まとめ:人が動かされる理由がわかる【第三版の内容を紹介】
②『人は感情でモノを買う』
『人は感情でモノを買う』は、ストーリー性のあるメッセージをつくるときに役立ちます。
相手の立場に立ってどのくらい感情を引き出し、共感を得られるかがポイント。
なぜ自分の商品を買ってくれるのか、サービスを利用してくれるのかを理解することが重要です。
参考記事:『人は感情でモノを買う』の要約!共感されるストーリーフォーミュラとは?
③『価格の心理学』
『価格の心理学』は、心理学を活用した価格戦略がわかる本。
価格をどのように見せるかでビジネスの成功が左右されると言っても過言ではありません。
ストーリー仕立てで価格設定の奥深さが学べます。
参考記事:『価格の心理学』の要約まとめ:顧客の心理によって価格の感じ方は変わる
★今回紹介した本★
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