『シンプルで合理的な人生設計』は、進化的合理性と論理的合理性のバランスを取りながら幸せな人生を考えられる本。
人生にはいろいろな制約があり、選択を積み重ねることで人生がつくられていきます。
なるべく選択のコストを減らし、短期的な進化的合理性と長期的な論理的合理性のバランスを取りながら3つの資本(金融資本・人的資本・社会資本)を増やす戦略を考えます。
★ 『シンプルで合理的な人生設計』 の要約ポイント★
・進化的合理性と論理的合理性とは?
・3つの資本を増やす戦略(金融資本/人的資本/社会資本)
この記事では 『シンプルで合理的な人生設計』 の要約を紹介します。
目次
要約①:進化的合理性と論理的合理性とは?
人間にはいろいろな制約があるため、人生は選択の連続です。合理的な選択を積み重ねることで人生の土台が築かれます。
・物理的制約:人間は跳べない、ずっと起きていられない
・資源的制約:1日は24時間、集中力に限界がある
・社会的制約:社会の良識、ルール、法律は守らなければならない
1日は24時間しかないし体力にも限界があるので、やりたいことがたくさんあっても優先順位をつけて選択をしなければなりません。2時間かかる映画を観ると決めたら、その2時間でできるはずだった他のことは諦めることになります(トレードオフ)。
選択基準として、2つの合理性があります。
・進化的合理性=短期的な最適化
・論理的合理性=長期的な最適化
たとえば目の前にケーキがあるとき、すぐに食べておいしい気持ちを味わうか(進化的合理性)、ガマンしてダイエットを継続するか(論理的合理性)を選択できます。
論理的合理性のほうが長期的な視野を持っているので良いように思えますが、脳は進化的合理性から喜びを感じるようにできています。幸福を最大化するには、常に論理的合理性の選択が良いとは限りません。
つねに目先の幸福度(効用)にとらわれていては破滅が待っているだけだ。これはたしかに正しいものの、その一方で、脳が論理的合理性だけでつくられているわけではない以上、合理的な選択・行動が幸福(効用の増大)を保証してくれるわけでもない。
幸福とは、直観(進化的合理性)と理性(論理的合理性)の微妙な綱渡りのなかでしか見つからないのだ。
人間が欠乏に反応するときは「食べ物がない」という反応になります。お金がなくても時間がなくても、「食べ物がない」と同じように警告が鳴るのです。
「食べ物がない」のは人間の生存にとって危機的状況なので、集中力やパフォーマンスが落ちます。貧困な子ども時代から意志力で強力なアラートを止めて成功した人はストレスで寿命が短くなる傾向があるという研究結果もあるそうです。
欠乏のアラートを止め、選択コストを減らすのに有効なのは、お金を増やすことです。
お金を増やしても無限に幸せになれるわけではありませんが、年収800万円・世帯年収1500万円、または、資産1億円まではお金が増えるだけ幸福も増えます。
要約②:3つの資本を増やす戦略
幸福の土台を築くには3つの資本が必要です。
・金融資本(お金)
・人的資本(労働力、スキル)
・社会資本(家族、友人)
3つの資本を増やす戦略について紹介します。
金融資本
金融資本は一定のレベルまでは幸福を増大させる効果があります。
金融資本を増やすには投資が有効ですが、元本が少なければ貯蓄に回しても大きな効果はありません。
若くて貯蓄がなく代わりに人的資本(労働力)が大きい期間は、わずかな金額を貯蓄するよりも、人的資本を大きくするほうに投資しましょう。
つまり、体験やスキルアップなどに使い、人的資本を大きくしてから金融資本を貯めるほうが効率的です。
人的資本
人的資本を大きくするには時間や労力を一極集中します。人的資本を大きくする努力にも、パレートの法則が適用できます。
パレートの法則(80対20の法則):20%の要素が全体の80%を生み出している
(例)2割の優良顧客が店の売上の8割を占めている
20%の基本を押さえて努力をすれば、80%の能力は獲得できます。自分の能力の優位性を持つ市場を見つけること、そして能力に汎用性があることが重要です。
天才データアナリストと天才バイオリニストの対比がとても興味深かったです。
オンライン・ポーカーで稼いでいたネイト・シルバーは、法規制でかものプレイヤーが撤退したため、20%の努力ではポーカーの世界で生きていけなくなってしまいました。
そこから統計分析のスキルを活かして、天才データアナリストに転身しました。そこでは20%の努力でまだ80%のラインを達せられる市場だったからです。
一方、子どものころから天才バイオリニストと言われた男性は、20%の努力で太刀打ちできない市場から撤退して、デリヘルドライバーになりました。それはバイオリンの能力が統計分析ほど汎用性がなかったからでしょう。
社会資本
幸福な人生には、5~15人の親密な人間関係が重要です。
親密な人間関係を維持するには大きな時間の投資が必要なので、人数を広げることはできません。
愛情でつながる親密な家族と、そのときどきの仕事でつながる仲間。
その2つの異なる人間関係をうまく維持するようになるでしょう。
労働市場が流動化した新しい世界では、わたしたちはギバーとなってネットワークをつくりつつ、ギグのためのアドホックな(その場かぎりの)仲間を募って、人間関係のコストを最小化しようとするだろう。それによって浮いた時間資源は家族や恋人との小さな愛情空間に注ぎ込むことができる。
『シンプルで合理的な人生設計』 の次に読むなら?
『シンプルで合理的な人生設計』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『幸福の資本論』
幸福の条件を自由/自己実現/共同体=絆と定義し、
その3つに対応した資本に基づいて幸せになる戦略を立てようという本。
自分はどの資本を持っていて、どの資本を増やせばよいか?が見直せます。
参考記事:『幸福の資本論』の要約まとめ:3つの資本を増やして幸せになる戦略がわかる
②『サイコロジーオブマネー』
お金とつきあうマインドがわかる本です。自分の感情と行動をコントロールし、長期・安定的に資産形成するための心構えを知ることができます。
紹介される事例が示唆深くて読みものとしても面白かったです。
参考記事:『サイコロジー・オブ・マネー』の要約:お金持ちになるには感情のコントロールが大切
③『スマホ脳』
デジタル社会が人間に与える影響をわかりやすく解説した本。
著者はスウェーデンの精神科医である、アンデシュ・ハンセンさんで、
60万部のベストセラーです。
長い時間かけて進化した脳はデジタル社会に適応しておらず、
スマホに脳がハック(攻略)されている現実を認識してつき合い方を考えましょう。
参考記事:『スマホ脳』の要約と感想:スマホやSNSの悪影響を改善するには?
★今回紹介した本★
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