『組織が変わる』は組織の原因がはっきりしない問題を慢性疾患に例えて、
2on2を活用した対話でセルフケアする意義と手法を紹介した本です。
ゆるやかに悪化していく業績や組織の雰囲気をなんとかしたい!
と考えるリーダーやマネジメント層に役立つ1冊。
ただし、特効薬になる解決策ではなく、
ゆるやかにじわじわ効いてくる対話的アプローチです。
対話については、前著『他者と働く』も参考になります。
『組織が変わる』では特に組織が抱える複雑な問題における対話の重要性、
そして対話の方法論としての2on2がくわしく紹介されています。
★『組織が変わる』の要約ポイント★
・組織の慢性疾患には問題解決モードではなく対話モードで臨む
・2on2のステップ:他者の視点を借りて問題を立体的に捉える
・2on2の特徴:反転の問いかけと問題の外在化
問題の当事者から関連の薄い他者を交えることで、
新たな視点や気づきに価値をおいたアプローチです。
この記事では2on2の特徴を中心に『組織が変わる』の要約と感想を紹介します。
目次
『組織が変わる』の要約
『組織が変わる』の要約ポイントは次のとおりです。
★『組織が変わる』の要約ポイント★
・組織の慢性疾患には問題解決モードではなく対話モードで臨む
・2on2のステップ:他者の視点を借りて問題を立体的に捉える
・2on2の特徴:反転の問いかけと問題の外在化
1つずつ詳しく紹介します。
組織の慢性疾患には問題解決モードではなく対話モードで臨む
『組織が変わる』では、組織が抱える問題を慢性疾患にたとえています。
組織の慢性疾患:回復に長期間かかり、原因が特定しにくく複雑な問題
たとえば、次のような例が考えられます。
・自由に発言できない
・職場の人間関係が悪くなっている
・アイディア出しのミーティングで意見が出ない
・受け身な態度や自分の専門範囲から出ようとしない社員が増えた など
このような慢性疾患には、問題解決モードではなく対話モードで臨む必要があります。
問題解決モード:問題の原因を特定し論理的思考で解決策を見つける
対話モード :対話を通じて問題をいろいろな視点でながめてみる
問題解決モードではなぜ組織の慢性疾患を解決できないのでしょうか?
それは、問題解決モードだと問題の原因と解決策に目が行きがちで、
問題自体を単純化してしまう傾向があるからです。
問題解決策を言うとは、その問題はすでにわかっていると宣言することであり、それ以上何が問題なのかを考えることを放棄することだと肝に銘じてください。
と繰り返し書かれています。
ある人は問題だと思っていても、別の人から見れば問題ではないかもしれません。
だから問題を決めつけずに、困っている人からじっくり話を聞きます。
さらに他者の視点を聞くことで、今までの風景が違って見えるでしょう。
2on2のステップ:他者の視点を借りて問題を立体的に捉える
2on2はただ4人で話せばよいというわけではありません。
問題からある程度の距離がある他者を含めるのがポイントです。
まず、2on2のメンバー構成は当事者・関係者で2人組、外部者で2人組を作ります。
【αチーム】
Aさん(当事者):問題の当事者、困っていることを話す
Bさん(関係者):Aさんの問題の背景を聞く
――――――――――――――――――――――――――
【βチーム】
Cさん&Dさん :他者の視点を提供、問題解決をしない
αチームが会話をしてβチームは黙って聞く
⇒次にβチームが先のαチームの会話について話し、αチームは黙って聞く
と繰り返します。
CさんとDさんは、自分からAさんがどう見えたか?等の自分の視点を話し、
具体的な解決策を提案することはしません。
他者が自分の問題について話すのを黙って聞く、というのは不思議ですよね。
カウンセリングに使われるオープンダイアローグに似ていると感じました。
オープンダイアローグでは、リフレクティング(反想法)という時間があります。
患者の前で医療関係者が患者についてどう感じたかをオープンに語り、
それを患者が聞くというものです。
(参考)オープンダイアローグについては、
『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』がわかりやすくておすすめです。
2on2の特徴:反転の問いかけと問題の外在化
2on2ミーティングは投げかけられる質問や問題へのアプローチ方法も特徴的です。
2on2ミーティングの特徴のうち、反転の問いかけと問題の外在化を紹介します。
反転の問いかけ
反転の問いかけとは、
・もっと状況を悪くするにはどうしたらいいか?
・他の人やチームでも同じ問題を引き起こすにはどうしたらよいか?
と問いかけることです。
反転の問いかけは、問題そのものよりも発生プロセスに目を向けさせ、
自分が問題にどうかかわっているかを考えるきっかけになります。
たとえば「チームが協力的でない」という問題なら、
「まったく協力しない、会話も交わさないようなチームにするためには何をしたらよいか」、
「協力的でない部下を育成するにはどうすればよいか」等が反転の問いかけです。
反転しないまま「どうすればチームが協力的になるか」という問いかけでは、「チームメンバーがこうしてくれたら…」と他人のせいにしがち。
反転の問いかけにより、自分がどうかかわるとどうなるのかを考える・問題を違う角度から見ることができます。
問題の外在化
問題の外在化とは、問題を自分から切り離して眺めることです。
近くで見ていると気づかないことが、少し距離を取れば違った気づきがあるかもしれません。
『組織が変わる』では、問題に妖怪っぽい名前をつけて生態研究をする方法をおすすめしています。
(本の事例では忖度しすぎてしまう『ソンタック』が出てきます)
この妖怪はどんなときに現れて、何が好物で、どんな口ぐせでどんな見た目なのか等、
ユーモアを交えて考えることで問題をいろいろな角度から立体的に捉えることができます。
視野が狭くなっているとき、対象と距離を取りたいときに活用したいと思いました。
『組織が変わる』のオーディオブック
『組織が変わる』は耳で聴けるオーディオブックがあります。
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『組織が変わる』の次に読むなら?おすすめ本3選
『組織が変わる』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『ウィニングカルチャー』
『ウィニングカルチャー』は勝ちぐせのある組織文化づくりがわかる本。
企業のビジョンは所属するメンバーの組織文化の中心的な価値観になります。
組織文化は人がつくるものであり、対話によるビジョンの共有が欠かせません。
参考記事:『ウィニングカルチャー』の要約:組織文化を変革するためには?
②『両利きの組織をつくる』
既存事業と新規事業を共存させる組織カルチャーをつくるための本。
既存事業を守る保守的な文化とイノベーションを起こす挑戦的な文化、
組織を継続するにはどちらも必要です。
対話を通じて社会の変化に適応しながら自己変革する重要性がわかります。
参考記事:『両利きの組織をつくる』の要約まとめ:深化と探索を共存させるには組織文化が重要
③『他者と働く』
『組織が変わる』の著者の前作。
知識やノウハウで一方的に解決が難しい問題(適応課題)を対話で解決するための本です。
特に意見が対立するときや一緒に目指すゴールを見つけたいときに、
他者との関係性を見つめて再構築する方法がわかります。
参考記事:『他者と働く』の要約:正解のない適応課題を対話とナラティヴで解決する
まとめ:『組織が変わる』ために2on2で対話を始めよう
・組織の慢性疾患には対話によるアプローチが必要
・問題解決モードでは問題を決めつけて解決策に飛びつく危険あり
・2on2で他者の視点を借りると問題がより立体的に捉えられる
・反転の問いかけで発生プロセスと自分の問題への関わりに注目させる
・問題に名前をつけて外在化(自分と切り離す)と違って見える
著者は安易に問題解決策を求めようとする姿勢をやめるように強調しています。
具体的な解決策を考えるのは問題を多面的に理解してから、ということです。
著者は2on2で問題解決モードになりそうなときは、
おもちゃのバナナを掲げて合図するそうですよ。
”問題=嫌なもの”を反転させて、
”問題=楽しそう、ワクワクする、チャンス”と捉える組織に変えていきたいです。
★今回紹介した本★
★前著『他者と働く』の要約はこちら★
『他者と働く』の要約:正解のない適応課題を対話とナラティヴで解決する
★参考:オープンダイアローグのおすすめ本★
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