『「みんな違ってみんないい」のか』は、人それぞれを超えて正しいこたえをともにつくる大切さがわかる本。
多様性の尊重が当たり前になってきた社会は素晴らしいことです。しかし、人それぞれでは済まされないような答えが必要な問題に、人それぞれがともに理解しあうことを妨げているかもしれません。
また、人それぞれを強調しすぎることで、生物学的にはそんなに変わらない人間同士なのに、理解し合おうことを諦めてしまう可能性もあります。
★ 『「みんな違ってみんないい」のか』 の要約ポイント★
・相対主義と普遍主義
・人それぞれが分断を進めることもある
・人間はそんなに変わらない
「みんな違ってみんないい」という結論で終わりにするのではなく、その先の、より正しいと思える答えをつくる努力を諦めないこと。それが社会につながりを取り戻すことになるのではないかと感じました。
この記事では 『「みんな違ってみんないい」のか』 の要約を紹介します。
目次
要約①:相対主義と普遍主義
「みんな違ってみんないい」の考え方は、”人や文化によって価値観は人それぞれ”という相対主義です。
西洋文化はもともと普遍主義(客観的で正しい答えがある)でしたが、女性や黒人などのマイノリティの市民活動から相対主義が優勢になっています。
相対主義:人や文化によって価値観は人それぞれ
普遍主義:客観的で正しい答えがある
普遍主義の代表格は科学です。科学は人それぞれでは覆せない、正しい答えがある気がします。
しかし、科学でさえ、いろいろな考え方の学者が議論しながらより正しそうな答えをみなでつくりあげています。100年前のアインシュタインの理論も、現代で客観的で正しい答えに到達した!というところまで至っていません。ほぼすべての人が合意する統一的な見解に達するまでは途方もない時間がかかります。
正しい答えがあるという考え方は変化についていくのが難しいですし、多様性を尊重する相対主義のほうが今の時代に合っている気がします。ただ、人それぞれで終わらせることは「そこで議論はおしまい」と宣言するのに等しく、相反する意見の場合には人それぞれを乗り越えてより正しいと思える答えを模索する必要があります。
たとえば、趣味趣向の人それぞれは、人それぞれで利害が対立しないのでそのままで問題は起きません。肉が好きな人、魚が好きな人、野菜が好きな人など、人それぞれです。
しかし、原子力発電所をなくしたい人と稼働させたい人、移民を受け入れたい人と受け入れたくない人など、両立しない問題もあります。
私は、「正しさは人それぞれ」でも「真実は一つ」でもなく、人間の生物学的特性を前提としながら、人間と世界の関係や人間同士の間の関係の中で、いわば共同作業によって「正しさ」というものが作られていくのだと考えています。それゆえ、多様な他者と理解し合うということは、かれらとともに「正しさ」を作っていくということです。
要約②:人それぞれが分断を進めることもある
多様性には、文化の多様性と個人の多様性があります。
個人の多様性を突き詰めると、文化のような集団の多様性を理由に団結するのが難しくなり、けっきょく力のある集団の意のままになってしまうリスクがあります。権力に集団で対抗する術を失ってしまうのです。
現在、「文化の多様性」と「人それぞれの多様性」とはごっちゃにされているかもしれません。しかし、これまで見てきたように両者は本来まったく異質な主張です。「集団単位の多様性」は「個人単位の多様性」を切り捨てて成り立つものであり、「個人単位の多様性」の強調は集団の形成を阻むものだからです。
たとえば、女性が団結して女性の不当な扱いに抗議しようとするとき、女性という集団のなかの個人単位の多様性を強調すると団結が難しくなります。
たしかに女性という点では共通しているけど、私は黒人であの人は白人/私は貧乏であの人は豊か/私は働いていてあの人は専業主婦…などと違いに意識を向ければ、足並みがそろわなくなるでしょう。
他人と合意を作っていかなければならないことについて、「人それぞれ」などといって十分に話し合う努力をしないでいると、社会は分断されてしまいます。分断された社会で何かを決めようとすれば、結局のところ暴力に頼るしかなくなってしまいます。
要約③:人間はそんなに変わらない
多様性や異文化をテーマにした本を読むと、「文化によってこんなに考え方や価値観が違う!」といった例をたくさん知ることができます。
たしかに文化や言語によってものの捉え方が違うところもありますが、生物学的な構造は共通している以上、行動の動機や考え方のバリエーションはそれほど多くありません。
たとえば、日本人は虹を7色で表現する一方、3色で表現する文化の人もいます。でもそれは、3色しか見えていないわけではありません。目の機能としては同じであり、「日本ではこうやって7色に分けることが多いよ」で理解しあえるでしょう。
つまり、人間の行動や考え方、社会のあり方にはある程度の普遍性があり、文化的な多様性には限りがあります。人間が生物として生きていくうえで必要なことは基本的に同じであり、社会はまずそれらを満たすために構成されるからです。
文化の違いを楽しむのは悪いことではないですが、文化が違うからといって理解する努力を放棄していいことにはなりません。人間の根本的な欲求やニーズは共通しているので、理解しようと努力すれば理解し合える範囲の多様性だ、と認識しておくのが重要です。
『「みんな違ってみんないい」のか』 の次に読むなら?
『「みんな違ってみんないい」のか』 とあわせて読みたい本を紹介します。
①『「人それぞれ」がさみしい』
多様化した社会では、「人それぞれ」で対話が終わってしまうことが多いです。
「人それぞれ」のあふれた社会がどのようなもので、どんなデメリットがあるか、どうすればさみしさを払拭できるかのヒントがわかります。
参考記事:『「人それぞれ」がさみしい』の要約まとめ:やさしいようで冷たい言葉
②『多様性の科学』
多様性がある環境をポジティブに活用すれば、新しい視点がもたらされて今まで思いつかなかったアイディアが生まれやすくなります。
多様性は差別の原因となる場合もありますが、ポジティブに活用することもできます。
たとえば、見ている視点や世界が違えばカバーできる範囲が広くなり、集合知としては大きくなるのです。
違いを差別の要因にするのではなく、価値に変えていけるという希望が持てる本です。
参考記事:『多様性の科学』の要約と感想:多様性がなぜ必要なのか?がわかる本
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