『心理的安全性のつくりかた』は、
チームに心理的安全性をつくりだす理論と実践方法がまとめられた本です。
心理的安全性:積極的に人間関係のリスクが取れること
つまり、「嫌われたらどうしよう」、「間違ってたら評価が下がるかも」などと心配せず、
意見を言える職場は心理的安全性が高いと言えます。
Googleが生産性の高いチームに必要な要素を調べたところ、
心理的安全性が高いチームは離職率が低くて収益性が高いという結果になったそうです。
★『心理的安全性のつくりかた』の要約ポイント★
・心理的安全性を測る4因子:話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎
・心理的安全性の職場をつくるリーダーには心理的柔軟性が必要
・行動分析で心理的安全性を高める行動を増やす
第5章には心理的安全性の導入アイディア集になっていて、
読んだ後に実践しやすい形になっています。
離職率が高いのが悩みの人事部門や経営者におすすめです。
この記事では『心理的安全性のつくりかた』の要約を紹介します。
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目次
『心理的安全性のつくりかた』の要約
『心理的安全性のつくりかた』の要約ポイントをまとめました。
★『心理的安全性のつくりかた』の要約ポイント★
・心理的安全性を測る4因子:話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎
・心理的安全性の職場をつくるリーダーには心理的柔軟性が必要
・行動分析で心理的安全性を高める行動を増やす
1つずつくわしく紹介します。
日本における心理的安全性の4因子:話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎
”心理的安全性”は、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が考えた概念です。
日本の組織に当てはめて心理的安全性を測定するために、
『心理的安全性のつくりかた』の著者、石井さんは4つの因子にまとめています。
①話しやすさ:すべての土台
②助け合い :相互で補完し合える
③挑戦 :挑戦を得だと思える、失敗を恐れない
④新奇歓迎 :さまざまな個性を受け入れて所属意識を持たせることができる
この4つが揃っている職場=心理的安全性が高いと言えます。
まず、すべての土台であり最も重要な”話しやすさ”が感じられない職場が多そうですね。
上司がいつも忙しそう、雑談・私語は厳禁、意見を言うときは裏付けを取ってから…
『1兆ドルコーチ』を読んだとき、話しかけずらい人は優秀に見えるバイアスがあると知りました。
常に忙しそうで部下に冷たい・批判的な態度を作っているかもしれませんね。
参考記事:1兆ドルコーチの要約まとめ:コーチやリーダーに必要な資質と価値観がわかる本
4つ目の新奇歓迎は、多様性と包摂(ダイバーシティ&インクルージョン)を表しています。
価値観の違う人を異質なものとして排除するのではなく、
組織に所属しているメンバーであり、尊重されていると感じさせることです。
心理的安全性の職場をつくるリーダーには心理的柔軟性が必要
心理的安全性を高めるにはリーダーが大きな役割を果たします。
組織やチームを変える=リーダーシップを発揮して他者の行動を変えることであり、
そのために心理的柔軟性が必要です。
心理的柔軟性:場合に応じてリーダーシップのタイプを使い分けること
リーダーシップにはいろいろなタイプがあります。
どれか1つで対応できるような時代ではなく、
チームの状況に応じて一番役に立つリーダシップを選べるのが、
心理的柔軟性のあるリーダーです。
心理的柔軟性は具体的に3つあります。(p.79)
柔軟性①変えられないものを受け入れる
柔軟性②大切なものへ向かっていく
柔軟性③それらをマインドフルに見分ける(=気づいている)
変えられないものはすでに起きてしまった結果や人の気持ちなど、
変えられるものはこれからできる行動です。
変えられないものをいったん受け止めて、今の状況で何が大切か?を見極めて、
大切なものに近づく行動にフォーカスします。
「観察者としての私」(p.140)という感覚を持つと、
まず自分の心理的安全性が高まって客観的に状況を観察できます。
「物語としての私」 :自己イメージ、自分の属性、過去の歴史
「観察者としての私」:自分の思考や感情を俯瞰して見ている存在
行動分析で心理的安全性を高める行動を増やす
心理的安全性を高めるには、心理的安全性が高くなる行動を増やすことです。
『心理的安全性のつくりかた』では、
「きっかけ→行動→みかえり」フレームワークが紹介されています。
分かりやすい表現に変えてくれているのかな?と思います。
みかえり(結果)によって行動の量が増えたり減ったりするので、
望ましい行動を増やしたければ望ましい行動を増やすようなみかえりが有効です。
【ABCモデルの例】
ミスしてしまったので報告した(行動)
⇒隠さず報告しなかったことを感謝された(結果)
ミスしてしまったら早く報告しよう(行動が増える)
急いで期日通りに資料を作った(行動)
⇒ずっと机に置いたまま(結果)
急ぎの仕事を頼まれても実際は急いでやらなくていいみたいだ(行動が減る)
特に、即時性=すぐにみかえりがあることが重要。
「定例ミーティングのときに…」では効果激減です。
また、みかえりだけでなく、きっかけ(誘因)も行動を促します。
無意識のうちにきっかけになっていることを探し出せば、
望ましい行動を増やすor望ましくない行動を減らすのに役立つでしょう。
フレームワークでは悪い結果(嫌子)を使って望ましくない行動を減らせそうですが、
効果は薄く、心理的安全性の高い職場と相反する人間関係を作り出します。
悪い結果(嫌子)は罰や叱責など心理的安全性を低くする要因になります。
できるだけ好子(感謝やサポートなど)を使いましょう。
『心理的安全性のつくりかた』の感想
『心理的安全性のつくりかた』を読んで心に残ったポイントを紹介します。
心理的安全性がない状況下では、意見の対立はたやすく人間関係の対立になってしまいます。(中略)これでは学習は起こらず、パフォーマンスの改善にもつながりません。そのため、よい業績のためには、心理的安全性のある状況での「健全な対立(ヘルシー・コンフリクト)」が重要なのです。 p.45
健全な対立という考え方が良いですよね。
意見の良し悪しと感情が切り離されているからこそ、健全な対立は成り立ちます。
健全な対立を避けることは自分の成長の機会を失っているということです。
「相手より一枚、薄く鎧を着る」。つまり、相手より少しだけ、オープンでいることを心がけてみてください。また、「この人は、なぜ鎧を着ているのだろう」と、その人に鎧を着せた「きっかけ」や過去の「みかえり」に想いをはせてみると良いでしょう。 p.280
一気にオープンになるのはなかなか難しいので、
”相手より一枚だけ薄い”というのが素敵な表現だと思いました。
心理的安全性が高い職場なら、
鎧を着る必要がないと感じて自分から鎧を脱いでくれるかもしれません。
リーダー自身が薄着じゃないと説得力がないですね。
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『心理的安全性のつくりかた』と『恐れのない組織』との違い
心理的安全性に関する本として、『恐れのない組織』も有名です。
『恐れのない組織』はたくさんの事例や研究結果が載っていて、より専門性が高い印象。
『心理的安全性のつくりかた』は心理的安全性を日本の職場や文化に当てはめた内容で、
より日本のビジネスに適用しやすい形になっています。
『恐れのない組織』
→心理的安全性そのものの定義や心理学的な側面に興味がある人
『心理的安全性のつくりかた』
→日本の職場で組織づくりやチームビルディングに活用したい人
『恐れのない組織』も要約しているので興味があったら読んでみてくださいね。
参考記事:『恐れのない組織』の要約:心理的安全性を高めたいリーダーにおすすめの本
『心理的安全性のつくり方』の次に読むなら?
『心理的安全性のつくり方』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『世界最高のチーム』
『世界最高のチーム』は、心理的安全性が高いチームのつくり方がわかる本です。
無条件の肯定的関心を寄せる、ネガティブな意見をより大きなゴールに向ける等、
コーチング的な関わり方が具体的に紹介されています。
参考記事:『世界最高のチーム』の要約まとめ:心理的安全性を高めるリーダーの関わり方とは?
②『ワクワクする職場をつくる。』
一緒に働くメンバーの関係を起点に、企業風土を改善する方法を解説した本。
職場の閉塞感を吹き飛ばすための具体的な工夫がわかります。
参考記事:『ワクワクする職場をつくる。』の要約まとめ:感情を抑え込まずに共有しよう
③『失敗の本質』
大東亜戦争での日本軍の失敗の原因を分析することで、
日本的な組織の欠点を明確にする本です。
日本軍の失敗の本質をひと言でまとめると、変革に失敗したこと。
心理的安全性が高い組織の対極、戦時中の軍隊から教訓を学べます。
参考記事:『失敗の本質』の要約まとめ:失敗の原因と自己革新組織になるための教訓を解説
まとめ:『心理的安全性のつくりかた』を実践してみよう!
・心理的安全性が高いとは、人間関係のリスクを恐れず取れる状態のこと
・心理的安全性を測る4因子:話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎
・心理的安全性の職場をつくるリーダーには心理的柔軟性が必要
→いま本質的に大切なことを見極めて変えられることにフォーカス
・行動分析で心理的安全性を高める行動を増やす
・嫌子(罰や叱責)のみかえりで行動を変えるのは非効率
・健全な対立(ヘルシーコンフリクト)は生産性を上げる
「部下となれ合うなんてダメ」、「厳しさもときに必要」と信じてきたリーダーには、
価値観がぐるっと変わってしまうかもしれません。
ぜひ『心理的安全性のつくりかた』を読んでみてくださいね。
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