『うしろめたさの人類学』の要約と感想:うしろめたさをまっすぐ受け止める

『うしろめたさの人類学』の要約と感想:うしろめたさをまっすぐ受け止める

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『うしろめたさの人類学』は、構築人類学の観点から人や社会のつながりを見つめ直す本。


最初から決まった性質を持っているのではなく、さまざまな作用で構築されてきたという構築主義という考え方で人類学を捉え、構築された今の社会が息苦しいならどう構築し直せるか?を考えます。

贈与と商品交換の違いはなにか、交換モードで生きることで何が失われるのか、うしろめたさとどうつきあえばよいのか等を探求できる本です。

★ 『うしろめたさの人類学』 の要約ポイント★

 

・社会は他者とのやり取りで構築されている

 

・贈与と交換の違い

 

・うしろめたさを起動させて公平な社会を目指す

著者のエチオピアでのフィールドワークの場面が写真とともにエッセイ風に差し込まれていて、人類学の本!と身構えずに読めました。

この記事では 『うしろめたさの人類学』 の要約を紹介します。

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要約①:社会は他者とのやり取りで構築されている

構築主義とは、何事も本質的な性質を持っているのではなく、さまざまな作用で構築されたとする考え方です。

たとえば、ジェンダーは社会の制度や慣習のなかで男らしさや女らしさを身につけていくものであり、生まれたときから男らしさ/女らしさが備わっているわけではありません。ストレスは”ストレス”という言葉がないときから感情としては存在していたものの、名前をつけられたことで「これがストレスだ」と直感的に思うようになりました。

さまざまな作用で構築されたものならば、責任はその対象物だけにあるわけではありません。自分には責任がないと言って見ないフリをするのが難しくなることも意味します。

自分の「こころ」が人柄や性格をつくりあげている。誰もがそう信じている。でも、周りの人間がどう向き合っているかという、その姿勢や関わり方が自分の存在の一端をつくりだしているとしたら、どうだろうか。ぼくらは世界の成り立ちそのものを問い直す必要に迫られる。ある人の病や行いの責任をその人だけに負わせるわけにはいかなくなるのだから。

構築されているということは、もしもっとより良いものがあるなら構築し直せるということです。

他者とのモノや行為のやりとりが社会/世界を構築する作業であることを確認しながら、そのどこをどう動かせば変えることができるのか、その手がかりを探したいと思う。

構築し直せるという希望であると同時に、自分は無関係であると言えないうしろめたい感じを受け取らなければなりません。

要約②:贈与と交換の違い

 

他者とのやりとりには大きく分けて贈与と交換があります。

贈与ー贈り物ーバレンタインデーにチョコを渡す

 

交換ー商品ーバレンタインデーにコンビニのレジでチョコを買う

同じチョコのやり取りでも、贈与と交換は大きく違います。

たとえば、バレンタインデーにチョコを渡すときは、値札を剥がして、レジ袋以外のもっとマシな包装をしますよね。それはチョコの商品としての側面をそぎ落としているとも言えます。あとは、等価交換ではないのも贈与の特徴です。ホワイトデーに同等の価値のものが返ってきたとしても、そこには時間的な隔たりがあります。

 

わたしたちのなかには、贈与と交換を区別しなければならない、という暗黙のルールが存在します。

贈り物に対価を払おうとしたら好意を踏みにじることを理解していますし、お祝いはその場で直接お財布から出したら失礼だと知っていてわざわざご祝儀袋などに入れて渡します。

 

贈与モードにあって交換モードにないものは、感情や共感です。交換モードでいるとき、そこに込められた感情を読み取る必要がなく、取引として対等であるかだけ考えればよいです。一方、贈与モードでは贈り物に込められた思いを汲み取ることが要求されます。

 

エチオピアで物乞いにお金を要求されたとき、日本人は無視する人が多いそうです。

同時にそれは、ぼくらがたんに日本に生まれたという理由で彼らより豊かな生活をしているという「うしろめたさ」を覆い隠す。そして物乞いになにも渡さないことを正当化する。交換のモードでは、モノを受け取らないかぎり、与える理由はないのだから。心にわきあがる感情に従う必要はないのだから。

贈与モードのとき、人とのつながりはウェットなものになり、感情のやり取りが発生するためめんどくさいことも増えます。うしろめたさも感じます。でも、それを避けるためにずっと交換モードでいることが幸せなのか?と疑問に思います。うしろめたくても、感情的なつながりがある社会のほうがより良い気がしました。

要約③:うしろめたさを起動させて公平な社会を目指す

 

より良い社会/世界とは、ひと言でいうと公平な社会ではないでしょうか。

偏りを見て見ぬふりすれば自分の見える世界は公平かもしれません。でもそこには排除されている人たちがいますし、自分でも排除していることを薄々気づいています。

偏りを是正するには交換/贈与/再分配の方法がありますが、どれも一長一短があります。

わたしたちにできることは、「うしろめたさ」を真正面から受け止めることです。

まず、知らないうちに目を背け、いろんな理由をつけて不均衡を正当化していることに自覚的になること。そして、ぼくらのなかの「うしろめたさ」を起動しやすい状態にすること。人との格差に対してわきあがる「うしろめたさ」という自責の感情は、公平さを取り戻す動きを活性化させる。そこに、ある種の倫理性が宿る。

「うしろめたさ」はバランスを回復したい、という本能的なアラートなのかもしれません。

国家や市場はわたしにはどうにもできない大きな存在、という捉え方ではなく、わたしを含めた人々の行為の積み重ねが国家や市場を構築しているのだから、そのつながり方を少しずらせばバランスを回復するきっかけになるかもしれない。

そんな希望が持てる本でした。

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『うしろめたさの人類学』 の次に読むなら?おすすめの本3選

 

『うしろめたさの人類学』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。

①『共感という病』

 

共感したい人だけにスポットライトを当てることで他の人を排除してしまう、共感を利用したマーケティングで共感疲労をしてしまう等、”共感にどこか感じていた違和感”が言語化されています。

著者はNPO法人でテロリストの社会復帰や更生を支援している方。

ソマリアなど、自分が知らない紛争地域でのエピソードを知ることができます。

支援されにくい人ほど、支援を必要としていることがわかりました。

参考記事:『共感という病』の要約:共感されない人をどうやって助けるか?【惻隠の情と社会規範】

②『「利他」とは何か』

美学者、政治学者、批評家/随筆家、哲学者、小説家という、ジャンルの違う視点からの利他の捉え方を知ることができます。

善意の押し付けでない、他者をコントロールしないよき利他とは、相手への信頼があります。

参考記事:『「利他」とは何か』の要約まとめ:純粋な利他は個人の意思を超えたところにある

③『アンソロ・ビジョン』

人類学のように虫の目で集めた情報と、ビッグデータのような鳥の目で見た情報を合わせることで、新しい洞察が得られる、という本。

ビジネスに生かすという主旨の内容ですが、虫の目で見ることに、差別から自由になるヒントもあります。

アンソロ・ビジョン=人類学(anthropology)の視野(vision)

異なる他者を理解するためには、単なるデータからではわからない、そこに見出している意味の違いを理解することが重要です。

この人はどんな意味を見いだしているのか?どんな世界を見ているのか?を理解すれば、きっと差別の気持ちはなくなるでしょう。

参考記事:『アンソロ・ビジョン』の要約まとめ:人類学の視点で世界を見てみる

 

★今回紹介した本★


 

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