『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』はカルチャー(組織風土と組織文化)の重要性と変革の事例がわかる本。
組織風土はそこにいる人に影響を与える環境であり、組織文化はその集団らしさです。
そして、徹底的に実践できる実行能力が伴ってこそ、カルチャーとなります。
★ 『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』 の要約ポイント★
・組織風土とは組織の人のあり様に影響する環境
・組織文化とは組織の”らしさ”であり心理的エンジン
・カルチャー変革に必要な条件
この記事では 『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』 の要約を紹介します。
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目次
要約①:組織風土とは組織の人のあり様に影響する環境
組織風土と組織文化は異なります。
組織風土とは、そこにいる人のあり様に影響を与える環境です。
自然の風土はその土地の特性によって形作られるものですから良い悪いはありません。
しかし、組織風土はそこにいる人によって人工的につくられる部分があるため、組織の経営にとって良い風土/悪い風土が存在します。
良い組織風土:風通しが良い、前向き、主体的、挑戦的、協力的 など
悪い組織風土:風通しが悪い、後ろ向き、受動的、消極的、非協力的 など
年功序列で同質性の高い組織では、組織風土を特別意識しなくても集団として機能していました。
しかし、時代の流れが早く、雇用も流動的、価値観も多様化しているなかで、良い組織風土は意識してつくりだす必要があります。
組織風土が劣化すると、社員のモチベーションや生産性の低下、最悪の場合は不正や不祥事が起こります。
典型的な組織風土劣化のメカニズムは次のとおりです。
①上司の高圧的・威圧的な態度や言動
⇓
②過剰防衛(自分を守るための付加価値の低い資料作成や情報収集)
⇓
③中間管理職の疲弊(過剰防衛の対応が降ってくる)
⇓
④部下のケア不足(部下との関係性が薄くなる)
⇓
⑤部下のやる気が下がる、退職する
組織風土が劣化していく過程にはコミュニケーション不足・ものが言えない空気が蔓延しています。
この劣化を食い止めるには、心理的安全性が重要です。
心理的安全性:率直に話すなどの対人関係のリスクを安心して取れる環境
心理的安全性は部下に気を遣って優しくすることではありません。
健全な衝突を恐れずに自分の意見を言い合えるのが、心理的安全性が高い組織の特徴です。
組織風土づくりの事例として次の企業が紹介されています。
・「コオウンド経営」を目指す良品計画⇒社員が株主になることで自分事化する
・「言える化」を大事にしている赤城乳業⇒言い出しっぺが得をする、プラスに評価される
・「助け合うのが当たり前」の旭山動物園⇒あいさつ、感謝を1人ひとりが実践
社員1人ひとりが組織風土の重要性を理解して、主体的につくり上げることが重要です。
健全な組織風土は与えられるものではなく、全員で力を合わせてつくり上げるものである。社長から最前線の社員まで、全員が健全で良質な組織風土づくりの意識と意志を持ち、何気ない日常のルーティンから変えていかなければならない。(中略)経営における組織風土の意味や価値をみんなが正しく理解し、自分は何ができるのかを考え、実践することが、風土改革の第一歩である。
要約②:組織文化とは組織の”らしさ”
良い組織風土には共通する特徴があるのに対して、組織文化は組織の”らしさ”を表すものです。
組織文化:成功に裏付けされた信念、価値観
文化は簡単にはマネできないので、競争力の源でもあります。
組織風土という心理的基盤=活気に満ち溢れている。組織文化という心理的エンジン=独自の価値観が浸透している。この両方が揃ってこそ、組織の心理的環境は整い、成長・発展を目指すことができるのである。
組織風土は強い組織文化を育む土台であり、組織風土が劣化しているところに強い組織文化はつくれません。だから、まずは組織風土を整えることが重要です。
強い組織文化は強いアイデンティティとなり、社員に帰属意識を芽生えさせます。
強い組織文化をつくっている事例として、次の企業が紹介されています。
・「トヨタ生産方式」にこだわりつづけるトヨタ自動車
⇒改善が活動から文化になる(エピソードで思想を腹落ちさせる)
・「やってみなはれ」「みとくんなはれ」のサントリー
⇒失敗を恐れずに挑戦し続ける+諦めない反骨精神
・リクルートグループの「圧倒的当事者意識」
⇒「あなたはどうしたい?」といつも聞かれる
成功体験とエピソードを文化の源として言語化することから始めます。
一見すると当たり前の”らしさ”を組織文化にするには徹底的な実践が必要です。
現場で当たり前に実践されるようになってこそ、組織文化になったと言えます。
大事なのは、らしさを社員の行動習慣にまで落とし込み、組織のくせにまで昇華させることである。わかりやすくいえば、組織文化とはそれぞれの会社のくせである。社員がらしさに共感し、現場でみずから実践し、それが日常化し、くせのように当たり前にならなければ組織文化とは呼べない。組織文化を形成するとは、そうした社員を丹念に1人ずつ育てていくことに他ならない。それはとてつもなく時間がかかり、エネルギーを必要とすることである。だからこそ、優れた組織文化は他社がマネのできない競争優位となるのである。
要約③:カルチャー変革に必要な条件
カルチャーが劣化すると他責の発言が増えます(経営層が悪い、上司が悪い、環境が悪い…)。
健全なカルチャーは自分でつくるという意識を持つのが第一歩です。
カルチャー変革に必要な4つの条件は次のとおりです。
<カルチャー変革に必要な4つの条件>
①トップのコミットメント
②草の根運動を泥臭く(点ー線ー面)
③見える化による意識変革と行動変容
④仕組み化による変革の加速
カルチャー変革は長期戦であり、トップの強いコミットメントがなければやり切ることはできません。カルチャー変革の決断はトップダウンですが、変革の実行は現場からのボトムアップ型です。
まずはパイロット展開して成功事例の点をつくり、それを水平展開して線に、やがて面にしていきます。その取り組みを見える化し、全社に発信して啓蒙していくことも必要です。
変化の芽を伸ばして広げるには、どこかのタイミングで仕組み化をします。たとえば、点の成功事例からカルチャー変革の役割を任命する等して、全体に広げていきます。また、つくりたいカルチャーに合わせた人事評価制度の見直しなども必要です。
次のような事例が紹介されていました。
・ソシオークグループ
⇒現場力ワークショップ、エバンジェリスト(伝道師)の養成で広げる
・住友林業
⇒足元の変化を自分たちでつくり出す、点ー線ー面につなげる
さらに、カルチャー変革のコツはLOFTなカルチャーとしてまとめられています。
Light:内向き業務をやめて身軽になる
Open:風通しがよい、壁がない
Flat:対等な関係、仲間意識を築く
Torelant:多様性を受け入れる耐性がある
何でも自分たちでやってみる、さん付けなど形から入る、感謝を伝える、コーチングを取り入れる等、それぞれ豊富な事例が紹介されています。
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『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』 の次に読むなら?
『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『ウィニングカルチャー』
『ウィニングカルチャー』は勝ちぐせのある組織文化づくりがわかる本。
著者はラグビーの監督をされていた方。
組織の暗黙知、共有する価値観をどう変革するかがテーマです。
参考記事:『ウィニングカルチャー』の要約:組織文化を変革するためには?
②『THE CULTURE CODE(カルチャーコード)最強チームをつくる方法』
個々の能力ではなく、メンバー同士の相互作用がチームの成否を左右します。
成功するチームに共通する文化とそのためのアクションがわかる本です。
参考記事:『THE CULTURE CODE(カルチャーコード)最強チームをつくる方法』の要約まとめ
③『恐れのない組織』
”心理的安全性”という言葉の生みの親、エドモンドソン教授の著書。
心理的安全性を知るには欠かせません。
事例が多く、心理的安全性がいかにチームの生産性・創造性を高めるかがわかります。
参考記事:『恐れのない組織』の要約:心理的安全性を高めたいリーダーにおすすめの本
まとめ:カルチャーは経営の根幹
・組織風土はそこにいる人に影響を与える環境、組織文化はその集団らしさ
・上司の高圧的・威圧的な態度や言動から組織風土が劣化する
・良い組織風土=心理的安全性が高い
・組織文化は醸成が難しいからこそ競争力の源になる
・カルチャー変革に必要な4つの条件
①トップのコミットメント
②草の根運動を泥臭く(点ー線ー面)
③見える化による意識変革と行動変容
④仕組み化による変革の加速
・LOFTなカルチャーをつくる
カルチャーをつくるのは泥くさく地道な取り組みなので、短期的に成果が出る取り組みに飛びつきがちです。
しかし、競争優位性をつくるのはカルチャーであり、経営の根幹に関わる重要なものであると改めてわかりました。
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