『統計学が最強の学問である』は前提知識なしで読める統計学の入門書です。
なぜ統計学が最強なのか、サンプリングの生産性の高さやランダム化比較実験、
意味のある解析とはどういうものか?などが気軽に学べます。
★『統計学が最強の学問である』の要約ポイント★
・データを集めて分析することで最速で最善の答えを導ける
・サンプリングで意思決定に必要十分なデータを集める
・適切な比較をして意味のある偏りを見つける
この記事では、『統計学が最強の学問である』の要約と感想を紹介します。
目次
『統計学が最強の学問である』の種類
『統計学が最強の学問である』シリーズは2021年12月現在、4種類の本が出ています。
今回紹介する『統計学が最強の学問である』は入門書であり、
その後の3冊は実践的な内容や分野に特化した本です。
発売順に紹介します。
『統計学が最強の学問である』
『統計学が最強の学問である[実践編]』
『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』
『統計学が最強の学問である[数学編]』
入門の『統計学が最強の学問である』を読み、
・ビジネスに活かしたいならビジネス編
・統計のプロを目指すなら実践編
・統計学と合わせて機械学習を学びたいなら数学編
がおすすめの順です。
『統計学が最強の学問である』の要約
『統計学が最強の学問である』の要約ポイントは次のとおりです。
★『統計学が最強の学問である』の要約ポイント★
・データを集めて分析することで最速で最善の答えを導ける
・サンプリングで意思決定に必要十分なデータを集める
・適切な比較をして意味のある偏りを見つける
1つずつ詳しく紹介します。
要約①:データを集めて分析することで最速で最善の答えを導ける
まず、統計学がなぜ最強の学問なのかという理由は、
どんな分野でもデータを集めて分析すれば最速で最善の答えが出せるからです。
ひと昔前まではデータの収集や分析が手作業でコストがかかりましたが、
今は簡単な解析ならExcelなどでサクッと行えます。
今までは経験者の成功体験など、主観的で偏りのある情報に頼らざるを得なかったのが、
現在はエビデンス(証拠)を元に意思決定できるようになりました。
望むと望まざるとにかかわらず、ほとんどすべての学問に関わる学者は統計学を使わざるを得ない時代がすでに訪れているし、統計リテラシーさえあれば、自分の経験と勘以上の何かを自分の人生に活かすことがずいぶんと簡単になる。
どうすれば〇〇の病気を予防できるのか?、何が人間に幸福を感じさせるのか?、
優秀なリーダーはどんな特徴があるのか?など・・・
いろいろな分野で事実を明らかにするために統計学のアプローチが使われています。
要約②:サンプリングで意思決定に必要十分なデータを集める
データの分析が重要だからといっていつも全量調査をしていたら、
予算がいくらあっても足りません。
最善の答えを最速でコストパフォーマンス良く導くためにはサンプリングを使います。
サンプルのデータを抽出して全体を推測するのです。
サンプルのデータにしたら精度が落ちるのが心配ですよね。
たしかに誤差はありますが、その誤差が意思決定に影響するかどうかが重要です。
サンプルの量を増やすほど誤差は小さくなりますが、
改善される誤差はサンプルの増加に比べてコスパが悪くなります。
例:10万人のデータからサンプリングして男女比を調べる(女性の割合は70%とする)
・100名を抽出 標準誤差4.6% 61~79%
・1,000名を抽出 標準誤差1.4% 67~73%
・8,000名を抽出 標準誤差0.5% 69~71%
・10,000名を抽出 標準誤差0.4%
・20,000名を抽出 標準誤差0.3%
8,000名を抽出すれば、誤差±1%以内の精度で調査できるのに、
さらにコストをかけて10,000名や20,000名を調査する必要はあるでしょうか?
なんらかの意思決定や仮説検証のために分析しているはずなので、
その結論が変わらないレベルの精度があれば十分です。
思考停止で大量のデータを分析するのは生産性が低くなります。
分析に必要十分なデータ量がどのくらいか?をまず確認しましょう。
要約③:適切な比較をして意味のある偏りを見つける
統計学を使って解析することは、それ自体では価値を生み出しません。
その結果をどう活かすかで解析に価値があったか決まります。
価値を生み出す解析には3つのポイントがあります。
・適切な比較をしていること
・意味のある偏りであること(誤差ではないこと)
・ゴールを達成したものとそうでないものを比較していること
適切な比較とはフェアな比較、
つまり、明らかにしたい違い以外の条件が同じことです。
意味のある偏りであることを確かめるには、カイ二乗検定を使ってp値を算出します。
(p値とは、偶然にデータの差が生まれる確率)
p値が5%以下であれば、『結果が偶然出たとは考えにくい』と言えます。
さらに、ゴールを達成するために意味のある偏りを見つけるために、
ゴールを達成したものとそうでないものを比較しましょう。
・売上が上がった広告と効果がなかった広告
・成績が良い営業マンと成績が悪い営業マン
・事故が起きた製品と起きなかった製品
・病気になった人と健康な人 など
『統計学が最強の学問である』のオーディオブック
『統計学が最強の学問である』は耳で聴けるオーディオブックがあります。
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『統計学が最強の学問である』の感想
『統計学が最強の学問である』を読んで、個人的に心に残ったポイントを紹介します。
日当たりや水はけといった「諸条件をランダム化してしまえば、平均的に比較したい両グループ間で同じになる」という性質をあなたの仕事に置きかえるならば、顧客や従業員の年齢や性別、心理的特性といったものが仮に結果を歪める可能性があったとしても、「ある程度の数でランダム化してしまえば問題にならない」というありがたい性質を示すことになる。
フェアな比較をするためには、調べたいこと以外は同じ条件のグループを用意する必要がありました。
しかし、ランダム化比較実験のおかげで、まったく同じことがありえない人間についても影響を受けずに比較ができるようになったのです。
よく考えたら、1人1人違うはずなのに人間心理や行動の実験ができるなんてすごいですよね。
フィッシャーは現代統計学の父と言われています。
社内のありとあらゆる「正解のない意思決定」について、正解がないのであればとりあえずランダムに決めてしまう、という選択肢の価値はもっと認められるべきだろう。
”何も決まらないよりは、失敗でも何か決めたほうがマシ”と聞いたことを思い出しました。
たとえば5人が会議に参加して2時間悩んでも正解がわからないなら、
時給分のコストが無駄です。
小さく効果をテストするほうが失敗しても1つ前に進めます。
『統計学が最強の学問である』の次に読むなら?
『統計学が最強の学問である』とあわせて読みたい2冊を紹介します。
①『シン・ニホン』
『シン・ニホン』は『イシューからはじめよ』で有名な安宅和人さんの著書。
日本の現状とこれから再生するために必要なことが書かれており、
特にデータ・サイエンスの深い理解が重要です。
参考記事:『シン・ニホン』の要約と感想:これから求められる人材と教育とは?
②『ファクトフルネス』
ファクトフルネスとは事実を元に正しく世界を理解するという意味です。
正しく世界を見ているつもりでも、人間の本能が見せ方を歪ませているかもしれません。
メディアの報道やネットの情報もフラットに読み解けるはず!
参考記事:【要約】ファクトフルネスの意味とは?批判も多いが読むべきベストセラー
まとめ:統計学はどんな分野でも使える最強ツール
・『統計学が最強の学問である』は統計学の入門書(シリーズは全部で4冊)
・データを集めて分析することで最速で最善の答えが導ける
・サンプリングで必要十分な量のデータを集める
・解析の結果をどう活かすかで統計解析の価値が決まる
・適切な比較をして意味のある偏りを見つける
・ランダム化比較実験であらゆる分野に統計学が適用できるようになった
統計学はほとんど触れたことがありませんでしたが、
読みやすくて難しそうな統計学が身近に感じました。
特にサンプリングの解説にあった、
必要以上に完璧を求めないことを肝に銘じたいと思います。
★今回紹介した本★
『統計学が最強の学問である』シリーズ
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