『困難な組織を動かす人はどこが違うのか』はポジティブ・リーダーシップの戦略が学べる本。
ポジティブ・リーダーシップとは、ポジティブなものに目を向けることで逸脱した成果を出し、美徳や善を重視する組織文化を生み出すリーダーシップの取り方です。
すべての生物には向日性効果(ひまわり効果)があり、ポジティブな活力を求める傾向があります。
ポジティブな期待は期待された人の能力を実際に伸ばす事例なども証明されており、ポジティブなエネルギーを組織運営に活かすことが業績の高い組織風土のポイントです。
業績が高くて働いている人も幸せな組織をつくるために、コミュニケーションや人間関係で取り組むべき4つの戦略がわかります。
★ 『困難な組織を動かす人はどこが違うのか』 の要約ポイント★
・戦略①:ポジティブな組織風土
・戦略②:ポジティブな人間関係
・戦略③:ポジティブなコミュニケーション
・戦略④:ポジティブな意味づけ
この記事では 『困難な組織を動かす人はどこが違うのか』 の要約を紹介します。
目次
要約①:ポジティブな組織風土
ポジティブな組織風土は、その組織で働く人の視野やアイディアを広げます。
発想力や視野の広さは個人の性格や能力によると思いがちですが、組織風土によっても変わります。
<ポジティブ感情に関する「拡張ー形成理論」>
ポジティブ感情:認識の範囲が広がり、ものごとの解釈が豊かになる
ネガティブ感情:思考と行動の選択肢が狭まり、対処能力が下がる
人間にはネガティビティバイアスがあり、ネガティブな情報のほうが生死に影響するため、本能的にネガティブな事ほど重要だと認識します。
ネガティブ感情はポジティブ感情よりもインパクトが大きく長く続くので、意識的にポジティブな雰囲気をつくることが重要です。
ポジティブな点を強調しなければ、ネガティブ傾向がポジティブを圧倒し、ネガティブな組織風土が自動的にデフォルト・オプションとして残るだけだ。このことは、ポジティブな組織風土を育むためには、リーダーが意図的に何らかの戦略を用いる必要があることを意味している。
ポジティブな組織風土をつくるための具体的な働きかけが3つあります。
・思いやり:気がかりなことを共有していい、思いやりを発揮していいという場
・寛容:有害な感情のトゲを抜いて、前向きに捉え直す
・感謝:感謝することで、健康、認知機能、業績が上がる
要約②:ポジティブな人間関係
ポジティブな人間関係は、そこから支援や励ましが得られるだけではなく、他者に貢献できることが重要です。
ポジティブな人間関係が、心理、感情、身体の健康に有利に働くのは確かだ。だが、研究で明らかになったのは、それらの有利な働きが、他者に貢献することで生じるということだ。ポジティブな人間関係が人々の幸福感や仕事の成果に最大の効果をもたらすには、利他的行動、思いやり、寛容、親切などの実践があればこそである。
ポジティブなエネルギーを与える人か否かという観点で、2つのタイプがあります。
ポジティブ・エナジャイザー:周りに活力を与えて力を引き出す人
ネガティブ・エナジャイザー:ブラックホールのようにやる気を吸い取る人
リーダーはまずみずからがポジティブ・エナジャイザーとなりましょう。
そして他のポジティブ・エナジャイザーを発見して功績を承認し、人と関わる役割を与えます。
ネガティブ・エナジャイザーは、その悪影響が最小限で済む役割にするか、別の職を探すサポートをします。そのくらい、周りのやる気を奪う人は組織にとって厄介な存在です。
要約③:ポジティブなコミュニケーション
ポジティブなコミュニケーションとは具体的にどういうものでしょうか。
60チームの業績とコミュニケーションの関係を調べた研究によると、次のような特徴がありました。
ポジティブ:ネガティブの比率
・業績が高いチーム⇒5.6:1
・業績が中程度のチーム⇒1.8:1
・業績が低いチーム⇒0.36:1
問いかけ:主張の比率
・業績が高いチーム⇒1.1:1
・業績が中程度のチーム⇒0.67:1
・業績が低いチーム⇒0.05:1
業績が高いチームは、ネガティブなコメント1つに対してポジティブなコメントが5~6こあるのに対して、業績が低いチームはネガティブなコメントが3つでやっとポジティブなコメントが1つです。
ネガティブなコメントを避けて、ポジティブなことばかりを選んでいたわけではありません。
高業績の組織でも、誤りの修正・批判・対立はある。ただ、それらがポジティブな文脈の中で表現されているのだ。
また、業績が高いチームは主張と同じくらい問いかけを使っていたのに対し、業績の低いチームはほとんどが主張し合うコミュニケーションでした。
問いかけは相手を理解しようという姿勢の表れであり、対話に重要なポイントです。
この実験結果から学べることは、ネガティブ1に対してポジティブを5くらい伝えたほうがよいということ、そして主張し合うだけでなく問いかけを使って対話をしようということです。
ネガティブなフィードバックを行うときに使えるコミュニケーションの方法として、サポーティブコミュニケーションが紹介されています。
サポーティブ・コミュニケーション
状況を叙述する⇒客観的な結果や個人の感情を伝える⇒受け入れやすい代替案を示す
ポイントは、状況を叙述することです。ここでは評価(間違っている、ダメだ等)を入れません。次に、その状況がもたらす客観的な結果や話し手自身の感情(Iメッセージ)を伝えます。
そして、受け入れやすい代替案を示しましょう。
ここで言う”受け入れやすい”とは、修正できる行動にフォーカスしていることです。
”誰が正しい/間違ってる”や変えることが難しい人格・性格にはフォーカスしません。
要約④:ポジティブな意味づけ
仕事にポジティブな意味づけを持っている人は、並外れた成果を出すことができます。
イェール大学のヴェジェスニエフスキーによると、人は自分の仕事を3つのどれかで捉えているそうです。
・勤め:生活のために働く
・キャリア:昇進、名誉、肩書のために働く
・天職:仕事そのものに充実感や意味を感じる
リーダーは、メンバーにとって今の仕事が天職であると思えるような働きかけが求められています。
人が自分の仕事を天職であると思い、自分のしていることは正しく善良な行為だと確信するほど、仕事は意味を持つようになる。仕事に大きな意味が感じられると、ポジティブな変化が起き、個人も組織も並外れた業績につながることがわかってきた。
仕事に意味を持たせるには、次の4つのうち、1つ以上を備えていることが必要です。
・1人ひとりの幸福に重要なプラスの影響をもたらす
・大切な美徳や個人的価値観と結びついている
・仕事がもたらす長期的影響を重視する
・コミュニティの一員という意識を育てる
たとえば、自分の仕事から利益を得られるお客様に直接関われる機会をつくる、コミュニティに貢献できる機会を創り出すなどが考えられます。
『困難な組織を動かす人はどこが違うのか』 の次に読むなら?
『困難な組織を動かす人はどこが違うのか』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『だから僕たちは、組織を変えていける』
やる気に満ちたやさしいチームのつくり方がわかる本です。
組織の人間関係の質を改善するポイントがよくわかります。
参考記事:『だから僕たちは、組織を変えていける』の要約まとめ:関係の質を高めるには?
②『心理的安全性のつくり方』
相手との信頼関係を築くには心理的安全性が大切です。
安心して感情や思いを表現できる場所をつくりましょう。
参考記事:『心理的安全性のつくりかた』の要約:脱ぬるま湯職場!心理的安全性の4因子とは?
③『新コーチングが人を活かす』
コーチングのコツをサクッと知りたい人には『新コーチングが人を活かす』がおすすめ。
相手の考えや価値観を尊重するようなコミュニケーションとして、コーチングを学ぶのは役に立つと思います。状況に応じたコツが逆引きできて便利です。
参考記事:『新コーチングが人を活かす』の要約・感想【コミュニケーション技術の基本がわかる】
まとめ:組織からポジティブさを引き出そう
・向日性効果(ひまわり効果):ポジティブな活力を求める傾向
・ポジティブなエネルギーを組織運営に活かすと業績の高い組織風土ができる
・戦略①:ポジティブな組織風土
ーポジティブ感情で認識の範囲やものごとの解釈が広がる
ー思いやり、寛容、感謝を大切にする
・戦略②:ポジティブな人間関係
ー他者に貢献できると幸福感が高まる
ーポジティブ・エナジャイザーになる/見つける
・戦略③:ポジティブなコミュニケーション
ーポジティブ:ネガティブ=5~6:1にする
ーネガティブなフィードバックは状況の叙述から始める
・戦略④:ポジティブな意味づけ
ー今の仕事が天職であると思えたら並外れた業績につながる
ー仕事に意味を持たせるような関わりを増やす
業績につながって、しかも働いている人まで幸せになるのに、今の日本の会社ではポジティブさがないがしろにされている、と感じました。
具体的にできるアクションが載っているので、実際にどう行動すればいいかがわかります。
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