『「その日暮らし」の人類学』は、その日暮らしという生き方を通して、主流の資本主義的価値観を見つめ直せる本です。
「はじめに」の下記の文章に惹かれて読み始めました。
安心・安全を志向する秩序から零れ落ちて否応なくLiving For Todayであることを見つめなおす必要に迫られた人びとは、「負け組」や「希望」を失っている人間であると見なされる。これが秩序であり絆である。そういう人間を増やしてはならない。不確実であることが、「希望」がないことと同義で語られる。先がどうなるかわからないことは新しい希望にあふれているとも言えるのに。
恵まれた日本という国で暮らしている者のないものねだりかもしれませんが、『「その日暮らし」の人類学』に出てくる人びとのたくましさに、ちょっと憧れました。
ピダハン族の時間感覚や生き方、アフリカでの心理的借りによってつながるネットワークなど、自分の知っている世界がいかに狭いか、生き方や価値観の多様性に気づかされます。
★ 『「その日暮らし」の人類学』 の要約ポイント★
・ピダハン族の直接体験の法則
・社会全体での生計多様化
・借りの仲間が人生のリスクヘッジ
この記事では 『「その日暮らし」の人類学』 の要約を紹介します。
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目次
要約①:ピダハン族の直接体験の法則
アマゾンの奥地に暮らすピダハン族は、究極のその日暮らし(living for today)をしています。
ピダハン族の生活の特徴は次のとおりです。
・保存食をつくらない、長く持たせる加工をしない
・食べれるときに食べつくして、ときに何日も食べない
・口頭伝承がない、抽象的・記号的な言語がない(右左、数、色) など
日本に暮らすわたしからすると信じられない暮らしです。明日の食べ物も明日にならないとわからないなんて、不安でたまらないですよね。
ピダハン族は保存食がつくりたいのにつくれなくて困っているのではなく、この生活スタイルが良いと信じています。食べ物が取れなければその事態を受け止めるのみです。
ピダハン族の暮らしや言語を研究すると、直接体験の原則があることがわかりました。
直接体験の原則:自分、自分と同時期に生きている人の直の体験しか発話にない
ピダハン族の言語には過去・未来の時制がなく、血縁関係に実際にはほとんど会わない曾祖父母は含まれません。
マインドフルネスや「いまここ」を生きるという価値観が流行していますが、生産性を上げる手段としての「いまここ」を生きる、が小手先のものに感じてしまいました。
時間は元々、人間が生活しやすいように生み出した便宜上の概念です。待ち合わせしたり、時給を払ったりするのに共通の時間認識があったほうが便利ですよね。
しかし、いまや人間が時間に支配されてしまっているのではないでしょうか。
ここで重要なことは、未来や過去を前提とした生産主義的な生き方は普遍的なものではなく、またそのような生き方は当事者たちにとって必ずしも「不幸」で「貧しい」ものではないということである。
要約②:社会全体での生計多様化
生計を多様化するとは、一つが失敗しても他の何かで食いつなぐことを指しています。
日本でも収入源を複数持て、という副業ブームがありますが、タンザニアの若者はもっと短期間で幅広い仕事をしながら経験とネットワークを広げています。
タンザニアの若者は、予定表のない生き方を「前へ前へ」スタイルと表現するそうです。日雇いや短期の仕事を転々とし、ジェネラリスト的職歴を積み重ねていきます。
生計多様化は、個人や世帯だけでなく、社会全体でも起こっているようです。何かの事業で成功した者はそのやり方を後進に快く教えます。そしてその事業が飽和して稼げなくなればまた別の事業に移る。うまくいったやり方を独占せず、わぁ~っとたくさんの人が群がり、また別のビジネスが流行る、そのような繰り返しです。
ケニアに向かう20代後半の古着商人の言葉が印象的でした。
誰かが動けば、道ができる。ばらばらに動けば、誰かは成功する。誰かが成功して団子状態から一抜けすれば、その分だけ誰かの余地が生まれる。動けるのに動かない人間は、ほかのみんなの余地を奪う。
仕事を次から次に変えることは、ネガティブなことではなく誰かのチャンスをつくることであり、1つのことにしがみついているほうがネットワークも広がらないしリスクであると考えているようです。
この古着商人の目に日本人の働き方はどう映るのか、聞いてみたくなりました。
要約③:借りの仲間が人生のリスクヘッジ
タンザニアでは、心理的な借りが人生のリスクヘッジとして機能しています。
タンザニア人がお金に困った場合、過去にお金を貸した人から取り立てるのではなく、そのときに貸してくれそうな人に頼む傾向があります。
お金を借りているのにまだ返してない=きっと返す余裕がないのだろう、と慮って、それよりは今余裕がありそうな人に新しい借金を申し込むのです。
もはや誰が誰にいくら借りているか正確なところはわからず、借りの感情だけが残ります。
つまり、彼らの関係性において残るのは「借り」だけであり、かつて貸したことのある人間は、自身に「借り」の感情を抱いているから、自分が困ったときには、いつでも助けを求められるという論理だけが機能した。このように自身に「借り」をもつ仲間を増やしていくと、長期的にみれば、困ったときに借りることができる「人生の保険」が広がっていくことになる。
借りはさっさと返して清算したい/するべき、というのが一般的ではないでしょうか。お金という手段でかんたんに借りを清算できるようになりましたが、借りでつながるというポジティブな面もあるんですね。
誰もが誰かに借りていて誰もが誰かに貸しているという状態が、互恵的で寛容な社会をつくるヒントなのかもしれないと感じました。
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『「その日暮らし」の人類学』 の次に読むなら?
『「その日暮らし」の人類学』 とあわせて読みたい本を紹介します。
①『うしろめたさの人類学』
社会は他者とのやり取りで構築されているという構築主義の本。
人類学や構築主義と聞くと難しそうですが、エチオピア滞在中のエピソード等が多く、前提知識がなくても読みやすかったです。
多少うしろめたい場面やめんどくさいことがあっても、感情の結びつきがあるほうが幸せだよね、と思えます。
参考記事:『うしろめたさの人類学』の要約と感想:うしろめたさをまっすぐ受け止める
②『「利他」とは何か』
美学者、政治学者、批評家/随筆家、哲学者、小説家という、ジャンルの違う視点からの利他の捉え方を知ることができます。
善意の押し付けでない、他者をコントロールしないよき利他とは、相手への信頼があります。
参考記事:『「利他」とは何か』の要約まとめ:純粋な利他は個人の意思を超えたところにある
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