『論点思考』は、解決すべき問題を設定するための思考法を解説した本。
問題の解決策を考える前に、
そもそも問題設定が正しいかを確認する重要性がわかります。
著者は早稲田大学ビジネススクールの教授の内田和成さんです。
ボストンコンサルティンググループ(BCG)での経験を元に、
BCG流の問題設定の技術がまとめられています。
★『論点思考』の要約ポイント★
・論点思考とは真に解くべき問題を設定すること
・現象と論点を分ける
・論点を絞り込む3つの基準
上司から言われた仕事をやったはずなのにダメ出しをもらってしまう、
仕事の意義・目的がわからず、ただデータを集めているだけな気がする、
という悩みを抱える人にピッタリの本。
『イシューからはじめよ』と同様のテーマですが、
『論点思考』は具体的なビジネス事例が多く載っていて理解しやすいです。
参考記事:『イシューからはじめよ』は難しいけどおすすめの本!【要約でポイントを紹介】
この記事では、『論点思考』の要約と感想を紹介します。
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目次
『論点思考』の要約
『論点思考』の要約ポイントは次のとおりです。
★『論点思考』の要約ポイント★
・論点思考とは真に解くべき問題を設定すること
・現象と論点を分ける
・論点を絞り込む3つの基準
1つずつ詳しく紹介します。
要約①:論点思考とは真に解くべき問題を設定すること
論点思考は問題解決の最上流プロセス、つまり最初に取り組むべきプロセスです。
論点思考=真に解くべき問題を設定すること
まず最初に論点思考で真の問題を設定するべき理由は、
間違った問題を設定していたら正しく解いても意味がないからです。
間違った場所にはしごをかけたら、一生懸命登っても間違った場所に早く着くだけ。
ゴールを明確にしてから始めなさい、という教訓です。
実際には自分で問題設定するよりも、
上司や顧客に与えられた問題を解くことが多いかもしれません。
その場合にも、与えられた問題を疑う姿勢を持ちましょう。
何を望んでそのような問題を与えたのだろうか?
本当にその問題を解決すれば依頼者の望む結果が得られるのか?
などと考えます。
与えられた問題を疑うというのは、
学校や受験のテストでは問われない能力・求められない思考法です。
与えられた問題をただ解くのはコンピューターでもできること。
問題意識を持って問題を設定する能力は、人間にしかできない強みです。
要約②:現象と論点を分ける
論点は何か?と考える際に注意することは、現象と論点を分けることです。
現象を論点のように設定していると、何を解いたらよいかあいまいになります。
『論点思考』で挙げられている例の1つに少子化問題があります。
少子化はただの現象であり、少子化の何が問題なのかを明確にすることで論点になります。
現象:少子化
論点①:労働人口が減ることでGDPが減少する
論点②:高齢者の割合が増えて社会保障制度が維持できなくなる など
ビジネスでよくある”売上が落ちている課題を解決したい”というのも、業界全体で落ちているのか・自社だけが落ちているのか・新商品が出せていないのかなど、論点はたくさん考えられます。
論点は一見してわかる単なる問題点(現象・観察事実)ではない。このことを最初に頭に刻み込んでおくことが大事だ。
要約③:論点を絞り込む3つの基準
論点思考の手順は次のとおりです。
<論点思考のステップ>
①論点候補を拾いだす:現象と論点を分ける、なぜを繰り返す
②論点を絞り込む :答えが出ることにこだわる
③論点を確定する :仮説を相手にぶつける
④全体像で確認する :構造化して確認する
それぞれ章を割いて解説されていますが、
特に論点を絞り込むステップのポイントを紹介します。
論点を絞り込むステップはどうしても経験が頼りの部分があります。
筋が良い論点かどうかを判断するにはトレーニングが必要ですが、
次の3つの基準を満たしているかが参考になります。
①解決できるか、できないか
②解決できるとして実行可能(容易)か
③解決したらどれだけの効果があるか
投入できるリソースは限られています。
解決できる可能性が低い問題やコストとリターンのバランスが見合わない問題は、
良い論点とはいえません。
たとえば、成功するかわからない画期的な新商品の開発や大規模な設備投資など、
仮に1番重要な論点だとしても実行可能性が低い論点は選ばないほうが良い場合もあります。
そのほか、白黒つけやすいところ/依頼主の関心が薄いところ/組織間のはざまなど、
著者の経験則から論点になりやすいポイントが紹介されていました。
『論点思考』と『仮説思考』の関係
『論点思考』は著者の前作『仮説思考』とペアになっています。
『仮説思考』は複数の選択肢の中から仮説→検証を繰り返して最良のものを選び出す思考法です。
『論点思考』の論点を絞り込むステップや、解決策を絞り込むときに使います。
『論点思考』は問題解決プロセスの中の問題設定に焦点を当てていますが、
『仮説思考』は問題解決プロセス全体で使える思考法を解説しているイメージです。
合わせて読んでみてはいかがでしょうか?
どちらを先に読んでもよいそうですよ。
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『論点思考』の感想
『論点思考』を読んで個人的に心に残ったポイントを紹介します。
ベテランは「本当の論点はなにか」を考える。初心者はインプットと構造化を繰り返す。ここがベテランと初心者の大きな違いだろう。
初心者はインプットと構造化から始めてしまう、
に心当たりがある人も多いのではないでしょうか。
問題を設定するのにまずはヒアリングやアンケートをしてしまう。
ロジックツリーなどいきなりフレームワークに当てはめてしまう。
インプットや構造化は論点の仮説を持ったうえでやらなければ、
けっきょく何がわかったのかわからない作業になってしまいます。
論点は意思決定ができるようになるとわかるようになる。小さいレベルでも意思決定をしていくと、自分として「こうではなくて、こうだと思う」という判断力がついてくる。
判断できるということは裏側に論点があって判断している。
論点思考を鍛えるには、「論点は何か?」を考えてトライ&エラーで精度を上げていきます。
意思決定をしなければ学びがないのでもったいないです。
「上司の指示通りやった」とか「データはこうでした」という逃げ道を用意して自分の意見を持たないことは、自分を守っているようで自分の思考力を弱くしていると感じました。
コンサルティング業界では、自分の意見を示すことを”ポジションを取る”というそうです。
ポジションをとって意見を戦わせることで、
より多様な視点から考え抜かれた結論を出すことができます。
『論点思考』の次に読むなら?おすすめ本3選
『論点思考』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『イシューから始めよ』
本当に解決すべき問題(=イシュー)は何か?を見極める重要性を説いた本。
解説Youtubeなども多いのでぜひ読んでみることをおすすめします。
参考記事:『イシューからはじめよ』は難しいけどおすすめの本!【要約でポイントを紹介】
②『問題解決』
『問題解決』は、問題解決の定番教科書をイメージして書かれた本。
問題解決の手順をWhere⇒Why⇒Howの順で進めていきます。
Whereでどこに問題があるのかを明確に設定し、Whyで広く深く掘り下げます。
解決の仕方より問題設定に時間をかけるところが『イシューからはじめよ』との共通点です。
参考記事:【本の要約】『問題解決-あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』
③『生産性』
決断の質とスピードは生産性に大きく影響します。
まず仮説を持つ・ポジションを取る等、共通点も多かったです。
参考記事:本の要約『生産性』:マッキンゼー流の生産性の考え方がわかる【研修、資料、会議】
まとめ:『論点思考』で真に解くべき問題を見つける
・論点思考とは真に解くべき問題を設定するための思考法
・「それは本当に解くべき論点なのか?」を問う姿勢が大切
・現象と論点は分けて考える。現象・観察事実は論点にならない
・論点を絞り込むときは答えが出ることにこだわる
・『仮説思考』は『論点思考』とペアになっている
・インプットや構造化は論点を絞った後に行う
・意思決定をして自分の意見を持つことで論点思考は鍛えられる
論点思考で解くべき問題を設定すれば、
ムダな調査やヒアリングなどの作業は減るのに生産性は上がります。
まずは着手する前に、論点について考える時間を取ってみましょう。
真の論点と言えるかどうかとその理由を明確にすることが、
論点思考のトレーニングになるはずです。
★今回紹介した本★
⇓前作『仮説思考』
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