『生産性』はマッキンゼーの元人事マネージャー伊賀泰代さんが書いた、
生産性の本質と生産性を上げるためのアイディアが分かる本です。
”生産性”と聞くと1時間あたりに何個生産できるか?という工場の現場が思い浮かびますが、ホワイトカラーやサービス業でも生産性は重要です。
生産性が高ければ、少ない労働時間で大きな付加価値を生み出せる
=ワークライフバランスの改善や労働人口減少の対策にもなります。
この本を読むと生産性が高いとは具体的にどういうことか?が理解でき、
会議や資料作りなど、日常の業務で使いたくなるアイディアを知ることができます。
★『生産性』の要約ポイント★
・生産性向上は量より質をコントロールする
・生産性を上げる4つのアプローチ:日本には革新的アプローチが足りない
・生産性が高い研修、資料作り、会議の共通点はアウトプットをイメージすること
この記事では『生産性』の要約と感想を紹介します。
目次
要約①:生産性向上は量より質をコントロールする
生産性は次の式で表すことができます。
生産性=アウトプット(成果) ÷ インプット(投下した資源)
少ない資源で効率的に大きなアウトプットを算出することが、
生産性が高いということです。
生産性を上げるというと、投下する資源の量を減らすことに目が行きがちです。
(たとえば、残業時間を減らす/人員を削減する/会議の時間を短縮する等)
しかし、なんの工夫もせずに資源を減らすのは限界があるため、
質の意識への転換が必要です。
『生産性』の序章は、生産性が高い新卒採用とは?というテーマです。
10人の優秀な人材を最も生産性が高く採用するにはどうしたらよいか?を考えてみてください。
答えは、内定を出すレベルの人材が10人ぴったり応募してくることです。
応募人数が多ければ選考プロセスにコストがかかります。
たくさん人を集めて…という発想が、量に捉われているということですね。
要約②:生産性を上げる4つのアプローチ
生産性を上げるには4つのアプローチがあります。
生産性は下記の式の結果なので、
働きかける対象はアウトプットを増やすかインプットを減らすかです。
生産性=アウトプット(成果) ÷ インプット(投下した資源)
さらに、どうアプローチするかで改善と革新に分かれます。
改善(improvement):全体のスキルアップ、手順の見直しなど
⇒現状の延長線上のゆるやかな変化
革新(innovation) :新しいビジネスモデルや素材の開発、オフショア移転など
⇒革新的なアイディアによる大きな変化
この組み合わせて4つのアプローチがあります。
①改善による投入資源の削減
②革新による投入資源の削減
③改善による付加価値額の増加
④革新による付加価値額の増加
日本では生産性向上というと①改善による投入資源の削減に集中してしまいます。
①以外にも②~④の選択肢があること、
生産性向上は製造現場だけの問題ではないことを意識する必要があります。
以前は企業価値=売上やシェアと考える人も多かったですが、
最近ではROEや利益率を重視した生産性の高さを企業価値と考える風潮です。
『売上最小化、利益最大化の法則』でも利益率を重視する重要性が強調されていました。
高い利益率を達成するためのリアルな取り組みを知ることができます。
参考記事:『売上最小化、利益最大化の法則』を要約:起業前に読むべき超実践的な本
要約③:アウトプットをイメージすると生産性が上がる
『生産性』では研修・資料作り・会議の場面における生産性向上のアイディアが紹介されています。
共通点はアウトプットをイメージすること。
終章では『イシューからはじめよ』が紹介されていましたが、
まさにイシュー(解決すべき問題)を設定してから取り掛かるのが重要です。
参考記事:『イシューからはじめよ』は難しいけどおすすめの本!【要約でポイントを紹介】
研修・資料作り・会議のそれぞれについて、
生産性を上げるアイディアをかんたんに紹介します。
生産性が高い研修のアイディア
生産性が高い研修を行うには、ロールプレイングを取り入れると効果的です。
ロールプレイング型の研修とは、
たとえば上司役、お客様役などに分かれてお題に対処するような研修です。
座学形式で話を聞くだけでは、「ためになった」で終わってしまう可能性大。
ロールプレイングには生産性向上に直結するメリットがたくさんあります。
<ロールプレイング型研修のメリット>
・フィードバックがもらえる
・相手の立場に立って考えられる
・コミュニケーションの練習になる など
「この場面ならお客様/部下/上司はどう思うかな?」と想像するのは、とても役に立ちました。
生産性が高い資料作りのアイディア
最初から要望を満たす資料を作るために、まずブランク資料を作ります。
ブランク資料とは、見出し構成や資料に盛り込む内容の骨子だけを書いたもの。
いわば、資料の設計図です。
具体的なデータを集める前に、何のデータを集めるべきかをブランク資料で確認します。
(ブランク資料の時点では、具体的な数値やデータは入っていません)
ブランク資料の時点で確認しておけば、「上司が思っていた資料と全然違った!」、「必要ないデータまで集めてしまった」などの事態が防げます。
生産性が高い会議のアイディア
まずは会議の議題について、テーマだけ提示するのではなくゴールも入れます。
”〇〇について”だけでは、
〇〇について決定したい/広く意見を集めたい/情報共有したいなど、
どのゴールかがわかりません。
最終確認するつもりで参加してもらえるはずです。
何か決定するときは、情報とロジックが必要です。
”情報が足りないから追加の調査が必要(まだ決められない)”という結論でも、
調査を待たずにロジックを確認することはできます。
「仮に調査結果が〇〇だった場合はA案で、△△だった場合はB案ですよね。」
と決まっていれば、調査した後にまた決定するための会議をしなくて済みます。
どういう結論を出すためにデータを集めるかがわかってないと、
データ収集の期間が永遠に終わらないですね。
『生産性』のオーディオブック
『生産性』は耳で聴けるオーディオブックがあります。
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『生産性』の感想:心に残ったポイント
『生産性』を読んで個人的に心に残ったポイントを紹介します。
どこの職場でも、若手トップパフォーマーに「後輩の指導」「部下の育成」を任せることがよくあります。しかしこれは、あまり賢いやり方とはいえません。(中略)「部下の指導をすることで学べることはたくさんある」とはよくいわれることで、私もそう思います。しかし、それよりはるかに多くのことを学べる機会が別にあるなら、トップパフォーマーにはそちらにチャレンジするよう促すべきです。
組織の上位数パーセントほどの突出した成果を出す人材(トップパフォーマー)は、
自分よりパフォーマンスの低い人を指導させることでさらなる飛躍の機会を潰してしまいます。
成果を出す人は人材育成に携わるのが良いことだと当たり前に思っていました。
トップパフォーマーにはとことん突っ走ってもらうことが組織として良いときもある、
という気づきがありました。
そもそも、正社員の人件費ではやる意味がないが、派遣社員の時給なら続けてもいいという仕事に高付加価値の仕事はありません。そうであれば、まず考えるべきは「この仕事はなくせないのか?」ということであり、次が「より効率的な方法はないか?自動化できないのか?」ということです。
会社には恒常的に派遣社員の人がいるので、けっこうグサッと来ました。
たしかに派遣社員が来てパッとできる仕事は自動化しやすい仕事です。
むしろ、それぞれの仕事に関して必要十分とはどのようなレベルなのか、それを見極める判断力こそがビジネスパーソンには求められているのです。
必要十分なレベルを確認してから取り掛かるのが、ムダな仕事をしないコツですね。
自己満足になっていないかは自問自答するようにします。
『生産性』の次に読むなら?おすすめ本3選
『生産性』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『採用基準』
『生産性』と同じ著者の本であり、こちらはリーダーシップがテーマです。
リーダーシップはリーダーだけが必要なのではなくメンバー全員が持つべき、という内容。
リーダーシップに関する章はとてもおすすめです!
『採用基準』の要約まとめ:いつでも誰でもリーダーシップは発揮できる
②『エフォートレス思考』
『エフォートレス思考』の中でくり返されるのは、努力=美徳ではないということ。
思考停止の努力は生産性を下げます。
参考記事:『エフォートレス思考』の要約:いちばん大事なことをいちばん簡単にやるには?
③『イシューから始めよ』
本当に解決すべき問題(=イシュー)は何か?を見極める重要性を説いた本。
同じ労力をかけるなら、本当のイシューに集中させたほうが生産性が上がります。
解説Youtubeなども多いのでぜひ読んでみることをおすすめします。
参考記事:『イシューからはじめよ』は難しいけどおすすめの本!【要約でポイントを紹介】
まとめ:『生産性』を読んで仕事に活かしてみよう
・生産性はアウトプット(成果)÷インプット(資源)で算出する
・生産性は量より質をコントロールする
・日本は改善によるコスト削減に集中しがち
・生産性を向上させるにはアウトプットをイメージする
・研修ではロールプレイングを取り入れる
・最初にブランク資料を作って必要な情報だけ集める
・ロジックが決まっているか確認する
自分の仕事において”生産性が高い”とはどういうことか?を考えたくなりました。
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