『脳の外で考える』は、脳の外のリソース(身体の感覚、動き、環境、他者など)を活用してもっと脳のパワーを引き出す方法がわかる本。
脳の能力には限界がありますが、他の刺激との組み合わせによる発達にはまだまだ伸びしろがあります。500ページ超えの分厚い本の割に、実験結果や事例が多くてとても読みやすいです。
★ 『脳の外で考える』 の要約ポイント★
・身体の感覚によるサインを受け取る
・レジリエンスが高い人は内受容感覚が高い
・どこにいるかで生産性が変わる
この記事では 『脳の外で考える』 の要約を紹介します。
目次
要約①:身体の感覚によるサインを受け取る
身体感覚は思ったより多くのことを教えてくれます。
優秀な金融トレーダーは、身体の感覚に敏感な人いが多いです。腹にズシンと来る感覚をヒントに投資判断をしているトレーダーもいます。
身体の感覚に気づくことを内受容感覚と言います。
内受容感覚:体内の状態に気づくこと
胸がどきどきする、呼吸のペースが速い、手に汗がにじんできた、そわそわする等、身体の感覚に敏感に気づける人は内受容感覚が鋭い人です。内受容感覚は学力のようにテストされることがないので、個人差が大きく、その差に気づくこともほとんどありません。
たとえば、ある実験で「自分の心拍のタイミングを教えてください」と指示された夫婦は、まったく正反対の反応を示しました。
「自分の心拍のタイミングを教えてください」
⇒「自分の心拍のタイミングなんてわかるわけないじゃない」
⇒「自分の心拍のタイミングなんて誰だってわかるじゃないか」
内受容感覚が鋭いと、頭では認識できていない情報を身体のサインとしてキャッチすることができます。
4つのカードの山からランダムにカードを引く実験で、2つの山は良いカードが多い山、残りの2つは悪いカードが多い山でした。参加者はカードを引きながらだんだんその違いに気づいていくのですが、頭で気づく前に、身体が先に反応を示していたのです。
非常に関連性が高そうなパターンを検知したとき、それをこっそり教えてくれるのが内受容感覚の機能です。震えやため息、呼吸の加速、筋肉の緊張などで教えてくれます。
内受容感覚のサインを受け取れるようになれば、まだ意識では分かっていない因果関係を直感的に理解することができます。
要約②:レジリエンスが高い人は内受容感覚が高い
レジリエンスが高い人は内受容感覚が高いという実験結果もあります。
レジリエンスとは困難や逆境からの回復力であり、長期的な成功に必要な要素と言われています。
内受容感覚が高い人は、ストレスの要因が来る前に不快な感覚を予知的に経験し、そのおかげでストレスを受けている最中やその後には相対的に落ち着いた状態でいられます。
内受容感覚が低い人はストレス要因が来てから急激にストレスを感じ、その後も続きます。
また、内受容感覚が高い人は認知的再評価の効果も高いです。
認知的再評価:感情や物事の捉え方を別の角度から解釈すること
たとえば、ドキドキして緊張している状態をワクワクと捉え直すとパフォーマンスが上がります。このとき、緊張しているのに”落ち着いている”と全然違うものに再評価しようとしても効果がありません。
認知的再評価はストレス対処に有効なので、レジリエンスが高くなります。
内受容感覚は後天的に鍛えられる能力です。トレーニング方法を紹介します。
ボディスキャン
身体の各部分(つま先~かかと~足首~・・・)に意識を向けて2~3回ずつ呼吸する。
身体の中から湧き上がるものに何の判断もしない。
⇓
感情ラベリング
感じたものに名前をつける。「私は〇〇を感じている」
できるだけ正確に詳しく表現する。
要約③:どこにいるかで生産性が変わる
どこにいるかで集中力や創造力が変わります。
人間は本能的に食べ物がありそう、休憩できそう、水源がありそうで緑豊かな場所を美しいと感じるそうです。自然が多いところでは、自制心・創造性が高まり、利他的な行動が増えます。
また、フラクタル構造(相似図形が並んでいる)の模様を見ると、リラックスして考える力が上がります。
たとえば雪の結晶や⇓ロマネスクがフラクタル構造です。
人間の脳は、自然界にあるフラクタル的な特徴を処理するのに最適化されているようです。何十万年にも及ぶ進化によって、人間の知覚能力は、視覚的情報が自然環境で作られた形に合うように「調整」されたのです。
テクノロジーは進化しても、人間の脳の進化はもっとずっとゆっくりしているのですね。
空間は集中力や生産性にも影響します。人間にはある程度の密室、プライベートな空間が必要です。
本能的に、他の人が何をしているか、何を話しているか気になってしまいます。オープンスペースと人間の本能は相性がよくありません。ずっとつながっているより、1人で集中する時間と他者とつながる時間が分かれている断続的なコミュニケーションが最適です。
人間は、自分が所有していると思うスペースにいるとパフォーマンスが上がります。本拠地で試合をするチームの勝率が高くなるホームアドバンテージが代表例です。
自分のアイデンティティを表すものがある場所では自信を感じやすくパフォーマンスが上がるので、自分の仕事場や作業スペースには自分らしいものを飾りましょう。
ほかにも、専門家の知識を有効活用する方法やグループで思考する方法、運動の効果的な取り入れ方などが紹介されています。
『脳の外で考える』 の次に読むなら?おすすめの本3選
『脳の外で考える』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『LEARN LIKE A PRO 学び方の学び方』
効率的な学習のためにどう脳を活用するかがわかる本。
集中力が足りない、難しい問題はすぐ諦めてしまう、なかなか覚えられない、など、学び方の悩みがある人におすすめです。
休憩時間を活用する、脳の集中モード/拡散モードを切り替える、自分で思い出そうとする等のコツがわかります。
参考記事:『LEARN LIKE A PRO 学び方の学び方』の要約まとめ:思い出そうとすると記憶が定着する
『リミットレス 超加速学習』
読書法に限らず、学び方を学ぶメタ学習の本です。
知能や能力は生まれつきのものではなく、自分が脳にどのような刺激を与えるかで変化させることができます。
わたしはできるというマインドセットに変える、小さなステップから始める、シングルタスクにする、想起学習(思い出せるかチェックする)等がポイントです。
参考記事:メタ学習におすすめの本『リミットレス 超加速学習』の要約:自分の限界を超える
③『「安心のタネ」の育て方』
内受容感覚の大切さが、安心感という面から分かる本。
この本では安心を”個人の主観に基づく、人との関係性や環境への信頼感覚”と定義しています。
ポリヴェーガル理論によると、副交感神経には背側迷走神経と腹側迷走神経があり、それぞれを刺激することで安心感が養われるそうです。
日常でかんたんにできる、信頼感覚を育てるためのワークがたくさん紹介されています。
参考記事:『「安心のタネ」の育て方』の要約まとめ:ポリヴェーガル理論のワークがわかる
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