『スマホ脳』はデジタル社会が人間に与える影響を理解する重要性を訴えた本。
著者はスウェーデンの精神科医である、アンデシュ・ハンセンさんです。
スウェーデンでは大人の9人に1人以上が抗うつ剤を服用しており、
他の国々でも同様にメンタル不調が増えています。
テクノロジーの発達により豊かで便利になったはずなのになぜ不健康になる人が多いのか?
と疑問を持ったところからこの本が誕生したそうです。
★『スマホ脳』の要約ポイント★
・長い時間かけて進化した脳はデジタル社会に適応していない
・スマホに脳がハック(攻略)されている
・睡眠/運動/他者との関わりでメンタル不調を予防する
スマホやSNSとのつき合い方、
特に子どもにデジタル機器を使わせる時期を悩んでいる方にはぜひ読んでほしい本です。
みんな「このままではダメかもしれない…」と思っていたんですね。
この記事では『スマホ脳』の要約と感想、今日からできることをまとめました。
目次
要約①:脳はデジタル社会に適応していない
なぜうつ病などのメンタル不調が増えているか?の答えは、
脳がデジタル社会に適応していないからです。
”生存に必要な特性を残し、生存に不利な特性を捨てる”という基準の元、
脳は長い時間をかけて進化します。
人類が誕生してから20万年のうち、人類は多くの時間を狩猟民族として過ごしてきました。
コンピューターやインターネットが当たり前になったのはほんの数十年前なので、
デジタル社会の中で生存率を高めるように脳は適応していません。
狩猟民族として有利だった特性が現代では不健康を引き起こすこともあるのです。
たとえば、次のようなミスマッチがあります。
・食べ物が見つからなくてもしばらく生きられるから高カロリーのものは食べたい
→太り過ぎて病気になる
・危険を避けるためにネガティブなニュースは知りたい
→悲観的なニュースにばかり触れてメンタル不調になる
・周りに敵がいるか等、脅威の兆候は敏感にキャッチしたい
→少しの不安で過度にストレスを感じる
テクノロジーの進化に伴うライフスタイルの変化のスピードが脳の進化のスピードに比べて格段に速いので、生存のための本能がかえって幸福になりにくくしています。
要約②:スマホに脳がハック(攻略)されている
脳がデジタル社会に適応していないなら、
デジタル社会が脳の特性に合わせて適応すれば問題ありません。
しかし、脳をハックしたほうがお金が儲かるので、
人間の脳の特性を十分に理解した上でスマホに依存するようにITサービスが作られています。
たとえば、フェイスブックやtwitter、グーグルなどは広告を主な収入源にしています。
広告効果が上がってフェイスブックは儲かるのです。
フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなごほうびへの期待値を最大限にもできる。
同時にいいね!が2つつくよりも、1つついた15分後にまたいいね!がつくほうが依存させやすいなら、実際には同時についたいいね!をインスタグラムの判断で分散させることがあるということ。
スマホに依存することで、幸福度や能力が下がるという実験がたくさん紹介されています。
・スマホが存在するだけで気が散る(たとえ他人のスマホでも)
・SNSに熱心な人ほど孤独を感じる
・SNSの利用を制限すると、うつ病の症状が改善した
・ティーンエイジャーの女子はインスタグラムで自己肯定感が下がりやすい
・スマホに記録すると記憶に残らない(グーグル効果)
・ブルーライトで睡眠の質が落ちる
・学校でスマホの使用を禁止すると成績が上がった など
特に子どもにスマホなどデジタル機器を与える危険性がよくわかりました。
SNSやデジタル機器を作った張本人たちのコメントが危機感・憂慮を物語っています。
⇓iPodやiPhoneの開発に携わったアップル社の幹部トニー・ファデルさんの言葉
「冷や汗をびっしょりかいて目を覚ますんだ。僕たちはいったい何を創ってしまったんだろうって。うちの子供たちは、僕がスクリーンを取り上げようとすると、まるで自分の一部を奪われるような顔をする。そして感情的になる。それも、激しく。そのあと数日間、放心したような状態なんだ」
子どもは報酬を先延ばしにする領域が発達途中であり、
目の前の魅力的なもの(スマホのゲームやSNSの通知など)に抗えません。
すぐに報酬が得られる状態に慣れているため、
習得や上達に時間がかかるものに取り組めない子も増えているそうです。
要約③:睡眠/運動/他者との関わりでメンタル不調を予防
脳をハックしようとするSNSやスマホから身を守り、
メンタル不調を予防するにはどうすれば良いでしょうか。
重要な要素が3つあります。
睡眠:スマホに睡眠を邪魔させない
運動:集中力や記憶力のアップ、ストレス予防
他者との関わり:リアルなつき合いを大切にする
無防備になる危険を冒してまで睡眠が必要なのは、
脳の情報整理をする重要な役割があるからです。
寝不足は当然健康に悪いですし、仕事や勉強のパフォーマンスも落ちます。
運動は週に2時間程度、できれば心拍数が上がる運動をすると良いそうです。
運動をすると集中力が上がり、体力がつくのでストレス予防にもなります。
脳が本能的に感じるストレスは危険から走って逃げることなので、
運動する⇒逃げ足が速くなる⇒ストレス耐性が上がるのだとか。
(人間っておもしろいですね)
最後の他者との関わりは孤独やデジタル嫉妬から身を守ってくれます。
断定はできないけれど、スマホの影響で共感力が弱くなっている兆候が見られるそうです。
他者を理解したいという欲求や他者の痛みを想像できる力を失くしたくなければ、
リアルな人間関係を大切にしましょう。
自分がスマホを触れば相手もスマホを触ります。
スマホは見えないところに閉まっておきましょう。
『スマホ脳』から身を守る!今日からできること
『スマホ脳』を読んで、今日からできることをまとめました。
・自分のスマホ時間を測定する
・プッシュ通知をオフにする
・スマホを見えないところに置く
・スマホを見る代わりの行動を決める
1つずつ紹介します。
自分のスマホ時間を測定する
まずは自分がいかにスマホに時間を奪われているか自覚しましょう。
iphoneではスクリーンタイム、androidでは”digital wellbeingと保護者による利用制限”からアプリごとの使用時間がわかります。(どちらも設定から参照できます)
プッシュ通知をオフにする
本当に見逃したら困る通知以外はオフにしましょう。
緊急なら電話がかかってくるはずです。
数秒チェックするだけでも、一度途切れた集中力を取り戻すのに数秒以上かかります。
脳はマルチタスクが苦手なので、タスクを切り替える回数はなるべく減らします。
(1つずつ仕事を片付ける、メールに返信する時間を決めておくなど)
スマホを見えないところに置く
スマホは存在を感じるだけで気が散ります。
使うと決めた時間だけ取り出し、それ以外は見えないところにしまいます。
「それだと時間がわからない。時計代わりなのに・・・」という人は、
腕時計を買いましょう。
本当に時間を確認するだけで終わっていますか?
SNSをチェックする時間ではないのに、ついでにタイムラインを見たりしていませんか?
スマホを見る代わりの行動を決める
”スマホを触らない”と決意すると、かえってスマホを意識してしまいます。
決意をするときは否定形ではなく肯定形にするのが鉄則です。
21時以降スマホを見ない⇒21時以降は紙の本で読書をする
SNSをダラダラと見ない⇒SNSは休憩時間に5分以内でチェック
スマホ脳から身を守るために運動や人と実際に会う予定を入れるのも良いでしょう。
スマホよりももっと楽しいことは溢れています。
『スマホ脳』の次に読むなら?
『スマホ脳』とあわせて読みたい2冊を紹介します。
①『デジタルで変わる子どもたち』
急速に進んだデジタル化が子どもたちの学習や言語能力の獲得にどう影響するかを解説した本。
さまざまな研究結果とその考察がわかりやすく紹介されています。
を悩んでいる親におすすめです。
参考記事:『デジタルで変わる子どもたち』の要約:デジタル化と言語能力の関係がわかる
②『13歳からのアート思考』
『13歳からのアート思考』は、
アート作品を通じて自分だけのものの見方・自分なりの答えをつくる思考が体験できます。
答えのないものから自分が感じたものを素直に表現する大切さがわかる本です。
自分で考える時間を大切にしたいですね。
参考記事:『13歳からのアート思考』の要約:自分だけの答えをつくる思考法とは?
まとめ:スマホ脳の影響を自覚しよう
・人間の脳はデジタル社会に適応していない
・SNSやスマホが脳をハック(攻略)すると、IT関連企業はお金が稼げる
・スマホは人間の幸福度や能力を低下させるという研究結果がたくさんある
・子どもは報酬を先延ばしにする力が弱いのでスマホに依存しやすい
・ブルーライトを遠ざけて睡眠の質を上げる
・週に2時間の運動で集中力が上がり、ストレス予防にもなる
・他者とのリアルな関わりで幸福を感じやすくなる
・通知を切る、スマホを見えないところにしまう等、今日からやってみよう
スマホは禁止・制限しよう!と言われないのは、
テクノロジーの進化が速くて実験が追い付いていないのか、
それともグーグルなどのIT企業が力を持ちすぎているのか・・・
スマホを欲しがる年齢になったら、
『スマホ脳』の内容を説明したいと思います。
★今回紹介した本★
★デジタル社会の子育てに役立つ本★
参考記事:『デジタルで変わる子どもたち』の要約:デジタル化と言語能力の関係がわかる
参考記事:『働き方5.0』の要約:人間がやるべきことの本質とは?【教育本としてもおすすめ】
参考記事:『シン・ニホン』の要約と感想:これから求められる人材と教育とは?
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