『はじめに子どもありき』は子どもの事実から始める教育のあり方を説く本。
教育書の名著と言われ、とても評価が高い本です。
子どもを信頼する、子どもの事実から始める、優れた点に目を向ける等、子育てに限らず、人と関わるときに大切な態度が身に染みてわかります。
★ 『はじめに子どもありき』 の要約ポイント★
・人間として善なるものへの信頼
・能動的学習者としての信頼
・はじめに子どもありき=子どもの事実から出発する
教える知識や技術だけでなく、人間への向き合い方を問われていると感じました。
この記事では 『はじめに子どもありき』 の要約を紹介します。
目次
要約①:人間として善なるものへの信頼
人と人との関わりは信頼がベースであり、まず人間として善なるものへの信頼が重要です。
人間として善なるものへの信頼:
向上心や良心など、善なるものがその人の中に存在すると信じる
たとえ、非難されるような言動をしていたとしても、何か事情がある、本当は良い子であると信じてもらえれば、心の支えになります。
人間として善なるものへの信頼によって、その子ども自身が、やがて自分の持つ善きものに目覚め、その自らの善きものによって立ち直ったり、よりよく生き抜くことができるようになる。
問題を起こす子を良い子だと思うのは難しいですが、思おうという努力がやがて本物の信頼になります。
要約②:能動的学習者としての信頼
もう1つの信頼が、能動的学習者としての信頼です。
能動的学習者としての信頼:
もともと何かを知ろう、できるようになろうと学習する存在だと信じる
やる気のない子は本当にやる気がない子でしょうか。やる気の対象が親や教師の期待するものとは違うだけです。
「子どもは教えなければ学ばない」、「指示しないとやらずに遊んでしまう」という見方では、能動的学習者としてのやる気や主体性を奪ってしまいます。
もし能動的学習者に見えない子どもがいたら、まわりの大人の関わりや環境がその子の力を阻害していないか振り返ってみましょう。
子どもが自分の考えや持っている力を率直に出さないのは、子どもがそうしようとしないからだというように、子どもを責める前に、教師である自分がその子どもにどのようなかかわり方をしてきたかをよく考えたい。思っていることをますます言わなくなるばかりか、教師に対する子どもの不信感をつのらせるだけである。
また、至らない点ばかりに目がいくのは、教師の怠慢かもしれません。欠点は努力しなくてもすぐにわかります。
優れた点を認めれば、優れた点がますます伸びるだけでなく、欠点も自分で克服しようという意欲がわきます。
至らない点、欠点は目につきやすいが、優れた点はみつけにくい。しかし、往々にして、優れた点がないようにみえても、ないのではなくて、見えないのである。つまり今の自分にはそれを見る力がないだけなのである。
要約③:はじめに子どもありき=子どもの事実から出発する
タイトルの『はじめに子どもありき』とは、子どもの事実から出発するという意味です。
子どもがどんな風に捉えているか、教わる子どもたちがどんな子たちか関係なく、カリキュラムは決められています。子どもをカリキュラムに近づけさせるのではなく、子どもたちの事実から出発するのが本来の教育です。
子どもの事実から始めるためには、子どもたちが思っていることを素直に出せる場である必要があります。
自分に素直になれるということは、自分のもっている力を遺憾なく発揮できるということであり、自分の考えをゆがめることなく表せるということであり、自分の心情を偽りなく出せるということである。他人の意思決定に追随するのではなく、まずそうしたありのままの自分があって、それが対象とかかわる過程で様々な抵抗にぶつかり、そのために自己のあり方を検討し、より高次のものに変容させるところに、真の成長があるといえよう。
もし子どもが期待した以外の答えを出したとしても、真剣に聞き、大事にし、その発言を生かそうとします。
すでに学んだ者の視点から、最短距離で答えまで導こうとしてしまいがちですが、現在進行形で学ぶ者には寄り道も重要な学びです。自分で考える過程の、最短距離ではない思考も許容してもらえるかで学びの深さが変わります。
最後に、本当の厳しさについて印象的だった部分を紹介します。
それは、教師自らが自分の生き方を厳しく問い直しながら生きて行く過程にある者としての立場から、子どものとるべき行動を子どもとともに考えようとすることである。
『はじめに子どもありき』 の次に読むなら?おすすめの本3選
『はじめに子どもありき』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『エックハルト・トールの「子育て」の魔法』
子どもは先生であり、親やまわりの大人が向き合うべき問題を提示してくれる存在でもあります。
子どもにつらいことを乗り越える力がある、と信じて側にいる大切さが重要です。
参考記事:『エックハルト・トールの「子育て」の魔法』の要約まとめ:子どもは最高の先生
②『私たちは子どもに何ができるのか』
非認知能力を身につけるためにはどうすればよいか?をさまざまな研究や支援の取り組みから解説した本です。
非認知能力:認知能力の土台となる心の能力
粘り強く取り組む力(グリット)、内発的に取り組む意欲、
困難なことに遭遇したときの回復力(レジリエンス)などを含む。
参考記事:『私たちは子どもに何ができるのか』の要約まとめ:非認知能力は環境の産物である
③『Humankind 希望の歴史』
『Humankind 希望の歴史』は性善説をベースにした世界がテーマです。
人間のポジティブな面を見る大切さを教えてくれます。
調和する可能性がある、という前提で関係性を築くところに共通点を感じました。
参考記事:『Humankind 希望の歴史』の要約と感想:人の本質は善であると信じられる本
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