『U理論入門』は変容やイノベーションを起こすプロセスを紹介した本。
優れたリーダーの内面に注目し、どんな意識変容が卓越した成果を生み出すのかを研究して体系化されたのがU理論です。
U理論の提唱者であるオットー・シャーマー氏の本『U理論』もあります。
『U理論』の翻訳者である中土井僚さんが書いたのが『U理論入門』です。
★『U理論入門』の要約ポイント★
・U理論とは直観を活かして出現する未来から学習すること
・ダウンローディングの状態から抜け出す
・U理論のプロセス:センシング/プレゼンシング/クリエイティング
外から見えにくい意識変容について理解が深まる本です。
この記事では『U理論入門』の要約を紹介します。
目次
要約①:U理論=出現する未来からの学習
U理論は、過去の延長線上にはない変容やイノベーションを起こすプロセスです。
”出現する未来”からの学習と表現されています。
過去のパターン思考から自由になって観察し、内省することで、そこから現れる未来をキャッチして具現化していきます。
最初からゴールや成果物が見えているわけではありません。
U理論が何かを端的に表現するとすれば、それは「何か(what)」でも「やり方(how)」でもない領域である、「誰(who)」を転換することで、過去の延長線上にはない変化を創り出す方法である、ということです。
U理論と対称的なのがPDCAです。
PDCA:過去からの学習、左脳的納得感、whatやhowを重視
U理論:出現する未来からの学習、直感、whoを重視
U理論にはソーシャルフィールドという概念があります。
ソーシャルフィールド:社会的土壌、イノベーションの種が育つ土台
U理論はソーシャルフィールドを耕して質を上げることとも言えます。
要約②:ダウンローディングの状態から抜け出す
ソーシャルフィールドが耕されていない状態は、ダウンローディングで物事を捉えています。
ダウンローディング:過去の経験によってパターン化した考えを再現
パターン化とは、過去に当てはめてバイアス(偏見)やレッテルに意識が奪われている状態です。
ダウンローディングの状態に陥ると、次のようなデメリットがあります。
黙殺、否定、思考停止、新しいことを受け入れない、ありのままに見られない
ダウンローディングから抜け出すには、反応的になった自分に気づくことです。
自分のVOJ(voice of judge:判断の声)に気づけると、自分を客観視できます。
VOJの例
それはそうだ/的外れだ、それは知っている、結論は?、オチは〇〇でしょ など
「いまダウンローディングに陥っている」と思えるようにしましょう。
要約③:U理論のプロセス
U理論のプロセスは大きく3つに分かれます。
①センシング:目の前のことに意識を向ける
②プレゼンシング:大きな自己につながる
③クリエイティング:出現しようとする未来を具現化する
1つずつ詳しく紹介します。
①センシング
センシングは目の前のことに意識を向けること。
自分の思いこみを覆すできごとに遭遇した瞬間、ハッとした瞬間の状態です。
思いこみに気づくきっかけは待つしかありませんが、待つ姿勢の質を高めることはできます。
具体的には判断を保留することです。
言い換えれば、「評価・判断、結論や決めつけをいったん保留し、どこにも着地できない居心地の悪さに身を置き続ける」ということです。
判断を保留し、他人の気持ちを追体験したり自分以外の視点を持ったりするようにします。
次のように表現されていました。
・自分のくつを脱いで他人のくつをはく
・他人の目玉をインストールする
自分の感じていることを表現するのは有効ですが、
ただ批判の声をぶちまけるのは自己開示ではありません。
本当の自己開示は、内省で見えてきたことをシェアすることです。
何でも口に出せばいいということではないですね。
②プレゼンシング
プレゼンシングは大きな自己につながることです。
大きな自己:最高の未来の可能性の自己
「私は何者なのか?私の成すことは何か?」の問いに答えることで、本当に望む自分、行動の源を見つけます。
アイデンティティと一体化した小さな自己を手放します。
ちょうどUの字の底の部分です。
『U理論』の事例を読むとプレゼンシングのきっかけがわかります。
③クリエイティング
クリエイティングはビジョンと意図を明らかにして、出現する未来を具現化することです。
U理論では、われわれという器を通して現れたがっているものに道を譲ることこそが、創造性と関連していると言っています。
境界を超えた協働、部署や自分の利益を超えて”ひとはだ脱ぐ文化”という水平方向での創造と、
日常的に大きな自己とつながる垂直方向での創造があります。
お手並み拝見モードやコメンテーターモードではクリエイティングが起きません。
批評家や解説者としてのマインドセットは捨てましょう。
当事者として飛び込むことが必須です。
『U理論入門』の次に読むなら?おすすめ本3選
『U理論入門』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『未来を共創する経営チームをつくる』
コミュニケーションで感情のつながりをつくり、自分事化することの大切さがわかります。
経営者以外でも、チームで働く人に参考になる本です。
参考記事:『未来を共創する経営チームをつくる』の要約まとめ:チームになるとはどういうことか?
②『Think Again』
思考柔軟性(メンタル・フレキシビリティ)の重要性がわかる本です。
思考柔軟性:既存の考えを新たな視点から見つめ直すこと
思考柔軟性が高い人は、ソーシャルフィールドの質が高いのではないでしょうか。
参考記事:『Think Again』の要約まとめ:思考柔軟性(メンタル・フレキシビリティ)を上げるには?
③『他者と働く』
知識やノウハウで一方的に解決が難しい問題(適応課題)を対話で解決するための本です。
特に意見が対立するときや一緒に目指すゴールを見つけたいときに、
他者との関係性を見つめて再構築する方法がわかります。
まとめ:過去の成功パターンを捨てよう
・U理論=過去の延長線上にはない変容やイノベーションを起こすプロセス
・直感を活かして出現する未来から学習する
・過去の経験によってパターン化した思考(ダウンローディング)から抜け出す
・自分の中のVOJ(判断の声)に気づく
・U理論のプロセス
①センシング:目の前のことに意識を向ける
②プレゼンシング:大きな自己につながる
③クリエイティング:出現しようとする未来を具現化する
事例と一緒に読まないとなかなか伝わらないかもしれません。
化粧品会社の事例がとても心に響きました。ぜひ『U理論入門』を読んでみてくださいね。
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