『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』は、
ビジネスの場におけるアート(直感、感性)の重要性と鍛え方がわかる本です。
教養のためにアートに親しもう!ということではなく、
ビジネスで生き残るために、変化で適応するために美意識を鍛える必要があります。
★『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の要約ポイント★
・サイエンスだけでは不十分!ビジネスにアートが必要
・エリートは自己規範を持つために美意識を鍛える
・美意識を鍛える方法(アート作品を観る、哲学に親しむ、文学や詩を読む)
と懐疑的な人にこそおすすめです。
この記事では『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の要約を紹介します。
目次
要約①:ビジネスにアートが必要
今のビジネスでは論理や合理性などサイエンスに基づいた経営判断がされており、
その結果みなが同じ結論にたどり着きレッドオーシャンで疲弊する事態が起こっています。
サイエンス:論理、理性、正しさ、合理性
アート :直感、美しさ、楽しさ、感情
サイエンスもアートもどちらも大切ですが、サイエンスが偏重されてきました。
野球の野村監督が引用したことで有名な、松浦静山の言葉が紹介されていました。
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
つまり、勝ちには論理的に説明できないものがあるが負けは論理的に説明できる、という意味です。
負けないために論理は必要ですが、勝つためには論理だけでは不十分。
勝つために必要なのは、論理では説明できないアートの部分です。
論理や合理性に頼る問題点は次のようなものがあります。
・データがなければ決められずに意思決定に時間がかかる
・みんな同じ結論になる⇒スピードとコストの競争に陥る
・合理的な判断を理由にリーダーシップを放棄する
論理的に答えを導くためのデータがないことは判断に時間がかかったり、なかなか決定が下せなくなる可能性があります。
また、論理的である=みなが理解できることであるため、同じ結論に至って差別化ができません。
そして、合理的な判断というお墨付きは「誰が決断しても同じ結論だったはず」という責任逃れに使われることもあります。
論理による意思決定は良くも悪くもアカウンタビリティ(説明責任)が高いです。
アカウンタビリティが高いからみんなを説得できる反面、言い訳のしやすさの指標にもなります。
アートに基づいた判断はアカウンタビリティに乏しいので、議論すれば劣勢に立たされます。
アカウンタビリティは言い換えれば、再現性があるか/言語化できるか/理由が説明できるかです。
・〇〇というデータから判断してA案にしましょう。
・とてもワクワクするからB案にしましょう。
経営学者のミンツバーグは、”経営とはアートとサイエンスとクラフトがまざりあったもの”と述べています。
・アート:感性によるビジョン
・サイエンス:論理による分析
・クラフト:経験値による実行力
本来はこの3つがバランスよく融合すべきなのに、アートが後ろに追いやられているのが現状です。
要約②:エリートは自己規範を持つために美意識を鍛える
エリートが美意識を鍛えるのは、自己規範を持つためです。
サイエンス重視で数字による成果や合理性を追求するような環境で、
自己規範がなければ道を踏み外す危険性があります。
自己規範の反対、外部の規範とは法律です。
変化の激しい時代には法律の制定が追い付いていない分野があります。
法律に違反していないからといって成果を追求すれば、後出しじゃんけんで違法になるリスクもはらんでいます。
実社会で影響力を持つエリートは、自分を守るために自然法主義的な考えで行動する必要があり、そのために美意識を鍛えているのです。
実定法主義:法そのものの是非は問わない(悪法もまた法である)
自然法主義:「真・善・美」に則っているか、法自体も批判対象
マーケティングの観点でいえば、外部の基準とは市場調査です。
客観的な市場調査のデータに基づく商品開発では差別化できません。
誰でも使える客観的な外部のモノサシよりも、主観的な内部のモノサシを持つ重要性が増しています。
要約③:美意識を鍛える方法
美意識を鍛える重要性がわかったところで、どうやって鍛えればよいのでしょうか。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』では、次のような方法を紹介しています。
・アート作品を観る(VTS)
・哲学に親しむ
・文学や詩を読む
1つずつ紹介します。
アート作品を観る(VTS)
アート作品を観ることで、観察眼・鑑賞力を磨きます。
VTS (visual thinking strategy):アート作品を観て、感じて、言葉にする
芸術家や作品の背景情報を学ぶ必要はありません。
多様な解釈ができる作品を選び、次のような質問に答えます。
・何が描かれていますか
・絵の中で何が起きていて、これから何が起こりますか
・どのような感情や感覚が自分の中に生まれましたか など
あまり抽象的すぎる作品でも答えにくいので、人物など具体的なものが描かれている作品のほうが良いそうです。
正解はないので、どんな発言でも許される雰囲気で行います。
大人向けにもやってほしい!
哲学に親しむ
哲学は、その内容(コンテンツ)よりも思考の過程(プロセス)や世界との向き合い方(モード)を学びます。
たとえば”万物の根源は水である(タレス)”、”万物の根源は火である(ヘラクレイトス)”など、
コンテンツだけで言えば学ぶ意味がないように見えることもあります。
しかし、その時代にそう考えるに至ったプロセスやモードは学ぶ価値があるのです。
なぜなら、真に重要なのは、その哲学者が生きた時代において支配的だった考え方について、その哲学者がどのように疑いの目を差し向け、考えたかというプロセスや態度だからです。
哲学を学ぶことで、世界やシステムに疑いの目を向ける態度が身につきます。
文学や詩を読む
文学は哲学的な問いを物語の形で考察したものです。
「文学は役に立たないから読まない」というビジネスマンもいますが、
答えのない問いに自分なりの基準で考えることが美意識を鍛えることにつながります。
「偏差値は高いけど美意識は低い」という人に共通しているのが、「文学を読んでいない」という点であることは見過ごしてはいけない何かを示唆しているように思います。
詩を読むことは、レトリック(修辞)を学ぶことにつながります。
人々に影響力を与える、言葉の力を養うのです。
リーダーの仕事は役職が上がれば上がるほど、コミュニケーションの比重が増します。
詩に親しむことで、人のこころを動かす言葉のセンスが鍛えられるでしょう。
本書では谷川俊太郎さんが紹介されていました。
女性の詩人では茨木のり子さんが有名ですね。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の次に読むなら?
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『ビジネスの未来ーエコノミーにヒューマニズムを取り戻す』
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』と同じ著者、山口周さんの本です。
経済成長ありきの時代から、人間らしく生きる価値を創造する時代への変化がわかります。
資本主義の次の未来に興味がある人におすすめ。
参考記事:【要約まとめ】ビジネスの未来ーエコノミーにヒューマニズムを取り戻す
②『直感と論理をつなぐ思考法』
自分のワクワクする直感や妄想からアイディアを形にする思考法についての本。
データではなく自分の「やりたい!」という強い気持ちを出発点に、アイディアを形にしていきます。
たくさんのヒントが得られるはず!ワークもたくさん載っています。
参考記事:『直感と論理をつなぐ思考法』の要約まとめ:ビジョンドリブンとは自分モードで生きること
③『13歳からのアート思考』
『13歳からのアート思考』は、アート作品を通じて自分だけのものの見方・自分なりの答えをつくる思考が体験できます。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で紹介されたVTSのやり方がわかります。
参考記事:『13歳からのアート思考』の要約:自分だけの答えをつくる思考法とは?
まとめ:美意識を鍛えて自分のモノサシを持つ
・論理や合理性などサイエンスと同じくらい、経営にアートの感性が必要
・サイエンスに頼ると同じ結論に至り、レッドオーシャンで疲弊する
・アート/サイエンス/クラフトのバランスを取る
・美意識を鍛えるのは自己規範を持つため
・外部のモノサシ(法律など)に頼るには時代の変化が早すぎる
・美意識を鍛える方法:アート作品を観る/哲学に親しむ/文学や詩を読む
既存ビジネスの行き詰まり感を打破するにはアートなのかもしれませんね。
情報に振り回されずに自分なりのモノサシを持つのは、エリート以外にも大切だとわかりました。
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