『自分が欲しいものだけ創る!』は、スープストックトーキョーなどを運営するスマイルズのマーケティングがわかる本です。
特定の会社を特集した本は宣伝が多くてあまり良いイメージがないのですが、この本はマスマーケティングから共感を重視したマーケティングへの変化がわかりやすくまとまっていました。
★スマイルズ流マーケティング3つのポイント★
・課題設定力が肝心
・すべてがN=1から始まる
・関係性を考えてブランディングする
ブランドづくりの裏側がわかる、おもしろい本でした。
この記事では『自分が欲しいものだけ創る!』の要約を紹介します。
目次
要約①:課題設定力が肝心
どう課題設定をするかで、解決策の良し悪しが決まります。
解決策のアイディアを斬新にするより、課題設定をユニークにすれば自然とユニークな解決策が生まれるのです。
たとえば、エレベータの待ち時間が長くてクレームが来る状況を改善するケースでは、”エレベータの待ち時間が長い”を課題に設定するとエレベータの速さや止まる階の決め方にフォーカスしてしまいます。
”待ち時間が長いと感じること”を課題に設定すれば、横に鏡を設置してエレベータを待つ時間⇒身だしなみを整える時間に変える解決策が浮かびます。
エレベータの待ち時間がなぜ嫌なのか?と一歩踏み込んで深掘りしてみます。
安易な課題設定をせず、問題をじっくり考えてみましょう。
要約②:すべてがN=1から始まる
N(Number)=1とはサンプル数1という意味です。
マスマーケティングではマス(大衆)にどれだけ当てはまるかが重要であり、
サンプル数は多い方が商品やサービスが受け入れられる可能性が上がります。
しかし、マスマーケティングの結果は誰が調査しても同じになり、
競争力・資金力がある強者には勝てません。
そこでN=1、つまり自分や確実に存在する特定の人を出発点に、その人の深いニーズや不満からアイディアを考えていくのです。
N=1 ⇒ 不特定多数の顧客よりも自分志向
自分志向とは自分の直観や強いこだわりから始めるという意味で、
商品やサービスを提供する側の都合に合わせることではありません。
(オペレーションの効率化、リソースの流用、新技術ありきの商品など)
お客様として自分が望むもの、生活者としての自分がどう感じるかに意識を向けることが重要です。
N=1をキャッチするためのヒントは次のとおりです。
・いいな/いやだなと感じた理由を考える
・思いつきの理由を掘り下げる
直観や感情、思いつきの感度を上げ、気づいたらそのままにせず立ち止まって考えて言語化する。
日頃の洞察力がアイディアを生みます。
要約③:関係性を考えてブランディングする
昨今は機能の良し悪しよりも、ブランドとの関係の重要性が増しています。
顧客や取引先とどんな関係を築きたいか?を考えると、ブランドの立ち位置が見えてきます。
『自分が欲しいものだけ創る!』では、上下関係ー並列関係と論理的信用ー情緒的信用の2軸で整理しています。
論理的信頼:価値がわかりやすい、期待を裏切ったときのリスク大
情緒的信頼:ニッチになりやすい、リスク耐性がある
論理的信頼は、機能が優れている・コスパが良いなどわかりやすい価値があるため規模が拡大しやすいです。
ほとんどのブランドが規範的な関係性を目指し、「〇〇と言えばこのブランドで間違いない!」という状態を目指します。
ただ、論理的信頼は価値の理由がなくなった途端に顧客は離れていくでしょう。
情緒的信頼は、刺さる人には刺さるという意味でニッチになりやすいですが、気づいていなかっただけで多くの人に刺さる場合もあります。
わかりやすい価値以外の部分、ストーリー/背景/意味などでつながっているので、一度関係性ができれば顧客が離れにくいです。
機能が飛び抜けて優れているわけではないのに愛される、そんなブランドは共感的と言えます。
どの関係性が優れているというわけではなく、現状とこれから目指す関係性を知っておくのが重要です。
『自分が欲しいものだけ創る!』では、スマイルズがどうやってブランドを構築しているかの実例がたくさん紹介されています。
『自分が欲しいものだけ創る!』の次に読むなら?
『自分が欲しいものだけ創る!』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『プロセスエコノミー』
商品やサービスの物質的なクオリティが変わらなくなるにつれて、
人間理解や共感をベースに経験価値が選ばれるようになります。
レストランで完成した料理を食べるより、バーベキューで一緒につくりたい!
そんな時代の変化が感じられる1冊です。
参考記事:『プロセスエコノミー』の要約まとめ:自分のこだわりを持って共感する理由をつくる
②『プレゼン思考』
隠れたニーズや本質的な課題を見つけて、人の心に刺さるアイディアを考えるための本。
『プレゼン思考』というタイトルですが、話し方・資料のつくり方ではなく、
伝わるコンセプトやビジョンのつくり方が中心です。
『自分が欲しいものだけ創る!』の課題設定力やN=1と重なる部分が多く、
機能ではなく、心を動かすビジョンのつくり方がわかります。
参考記事:『プレゼン思考』の要約まとめ:ワクワクする未来(ビジョン)があるプレゼンをしよう
③『直感と論理をつなぐ思考法』
自分のワクワクする直感や妄想からアイディアを形にする思考法についての本。
自分の「やりたい!」という強い気持ちを出発点に、アイディアを形にしていきます。
たくさんのヒントが得られるはず!ワークもたくさん載っています。
参考記事:『直感と論理をつなぐ思考法』の要約まとめ:ビジョンドリブンとは自分モードで生きること
まとめ:1人の共感からはじまるマーケティング
・どう課題設定するかで解決策の良し悪しが決まる
・表面的な問題を一歩踏み込んで深掘りする
・1人の深い悩みやニーズを出発点にすると共感が生まれる
・事業者ではなく、生活者としての自分のこだわりや直感を大切にする
・機能や価格よりもブランドとの関係性の重要性が増している
・論理的信頼は価値がわかりやすいが期待を裏切ったときのリスク大
・情緒的価値はストーリーや意味でつながっているからファンになりやすい
ブランドづくりの裏側がわかるおもしろい本でした。
個人的に1番おもしろかったのは、ネクタイ専門店ジラフの女性に広めてもらう戦略です。
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