『whyから始めよ』は、whyが人を動かすために重要であると説いた本です。
著者のサイモン・シネックさんは”人々をインスパイアする方法”を教えるコンサルタントであり、TEDでのスピーチはYoutubeで1500万回以上も再生されています。
「なぜわれわれは存在するのか」というwhyをまず明確にし、
whyと一貫したhow(差別化)とwhat(具体的な商品)をつくる。
というのです。
★『whyから始めよ』の要約ポイント★
・whyとは存在理由/信念/夢=人を動かすもの
・why⇒how⇒whatに向かって一貫していると信頼される
「顧客に長く愛される企業やサービスを作りたい」、
「価格や広告に頼らず顧客と信頼関係を結びたい」、
という人にぴったりの本です。
また、ビジネスに限らず、自分の価値観に立ち返って人生を振り返るときにもヒントになる考え方だと感じました。
この記事では『whyから始めよ』の要約と感想を紹介します。
目次
要約①:whyとは存在理由/信念/夢=人を動かすもの
上記は、サイモン・シネックさんが考えた、ゴールデン・サークルと呼ばれるものです。
『whyから始めよ』のwhyとは、「あなたの目的はなんですか?なぜそれをしているのですか?」の答えになる部分です。
why:なぜ存在しているか?なぜwhatをしているか?
(存在理由/信念/夢/理念/大義)
how:どのようにwhyを実現するか
(他者との差別化ポイント)
what:何をしているか
(具体的な行動、商品やサービス)
アップルに当てはめると次のようになります。
アップルのwhy:現状に挑戦し、他者と違う考え方をする(think different)
アップルのhow:おしゃれでシンプル、洗練されたデザイン
アップルのwhat:コンピュータ、デジタル製品
アップルは明確なwhyを打ち出している例として、本書に頻繁に取り上げられます。
whyから始めることは優良顧客(ロイヤルカスタマー)を得る必須条件です。
whatでは顧客の忠誠心・信頼は得られず、他に品質が良い/安い/話題の商品が出てきたら簡単に鞍替えします。
whyで人を動かす対比として、操作で動かす方法があります。
操作(マニュピレーション):
値引き、広告、キャンペーン、セールストークなどで顧客を引き付ける
操作によって購買意欲を掻き立てることは短期的に効果はあっても、顧客との長期的な関係は作れません。
(目撃証言に対する警察の報奨金など)
しかし、LTV(life time value:顧客生涯価値)が高い、他の製品に目もくれず自分の商品・サービスを使い続けてくれる顧客は、whyに共感している顧客です。
whyが人を動かす根拠として、生物学的な脳の構造が解説されています。
whatは新皮質(言語や合理性を司る)で理解され、
whyとhowは大脳辺縁系(感情や意思決定を司る)で理解されます。
whyから始めることで感情や意志決定を司る部分に最初にアプローチすることができるのです。
要約②why⇒how⇒whatに向かって一貫していると信頼される
whyから始める重要性はわかったところで、もう1つ重要なことがあります。
それはhowとwhatがwhyと一貫していることです。
内側(why)から外側(how・what)へ、一貫性がある・矛盾していない必要があります。
SNSなどが発達してきた時代背景から、
オーセンティシティ(真正性)という言葉がよく聞かれます。
オーセンティシティ(authenticity):嘘がないこと、メッセージと行動が一致していること
企業の発信するwhyがあらゆる面で一貫している、あらゆる行動に行き届いていることが顧客の信頼につながります。
SNSなどインターネットが普及すると、一貫性のない行動はすぐに露呈して批判されます。
商品だけでなく、採用・労働環境・プロモーションなど、企業の一挙手一投足にwhyが浸透していることで、whyが届きやすくなり魅力を感じる人が増えるでしょう。
⇓オーセンティシティは『ナラティブ・カンパニー』でも解説されています。
(この本もアップルの事例が紹介されていました)
参考記事:【ナラティブカンパニーの要約・書評】ビジネスにおけるナラティブの意味とは?
一貫性のある行動を取るためには、whyのフィルターを通して意思決定します。
whyは判断基準・自分の軸とも言えますね。
いろいろな人があなたに食べ物をおすすめしてきます。
すすめられたのはチョコレート、豆乳、クッキー、セロリ。
とりあえず全てスーパーで買うと、あなたに合わないものはムダな出費になり、
他人からあなたを見ると「食べ物に何を求めているのか?」がわからなくなります。
体重を減らすというwhyがあれば、豆乳とセロリだけを買い、
”健康に気を遣っている人”と明確なメッセージが伝わります。
買う前に、自分のwhyのフィルターを通しましょう。
『whyから始めよ』の感想
『whyから始めよ』を読んで、個人的に心に残ったポイントを紹介します。
アップルは二〇〇七年に、社名をアップル・コンピュータからアップルへと正式に変更した。すでに単なるコンピュータ会社ではないという事実を反映してのことだった。本当のところ、会社の正式名称などたいした問題ではない。(中略)だがそれは、社員の思考法に限界をもたらす。社名変更は実用的なものではなく、哲学的なものだった。
whyに合っているかが優先すべき判断基準になれば、どの業界で何を売るか(what)は変わっても良いものです。
むしろ、変化が速い時代にはwhatは変わってしかるべきなのかもしれません。
whyに合っていればそれを具体化したときの形やジャンルに捉われることはない、
ということですね。
指針を明確にするには、動詞を使うといい。「誠実」ではなく、「つねに正しいことをしよう」と書こう。「イノベーション」ではなく、「問題を違う角度から眺めよう」と書こう。自分の価値観を動詞で表現すると、はっきりとしたアイディアが浮かび、どんな状況に直面しても、どう行動すべきかが明確にわかるようになる。
行動指針は動詞で表現するほうがわかりやすい、という点にとても納得しました。
『デザイン思考が世界を変える』でも、”これからはモノ(名詞)ではなく経験(動詞)をデザインする時代”という部分がありました。
参考記事:『デザイン思考が世界を変える』の要約:イノベーションの新しいアプローチ
自分でも他者でも誰かを動かしたいときは、
メッセージのわかりやすさ・イメージしやすさが重要ですね。
『whyからはじめよ』の次に読むなら?おすすめ本3選
『whyからはじめよ』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『ナラティブカンパニー』
多くの人を魅了できる物語であり、共創できる余白があり、あらゆる企業活動の中で構造として機能しているか?
この質問にすべてYESなら、その企業はナラティブカンパニーということ。
人を惹きつける物語にはwhy(存在理由)が必要です。
参考記事:【ナラティブカンパニーの要約・書評】ビジネスにおけるナラティブの意味とは?
②『メモの魔力』
企業だけでなく、自分の人生にもwhyが必要です。
自分は何が好きで、どんなことなら努力を努力と思わずにずっとやっていられるのか。
そのためにメモで自分と対話・内省する方法がわかります。
参考記事:『メモの魔力』の要約:知的生産としてのメモで抽象化能力を鍛える
③『超決断力』
後悔しない選択をするには、自分の価値観をもとに決断のルールを決めておきます。
決断のルールが明確で、何度も決断し慣れていると、
最小限の負荷でほぼ自動的に決断が下せるようになります。
参考記事:『超決断力』の要約:決められない!に効くクネビンフレームワークの入門に最適!
まとめ:『whyから始めよ』で軸のブレないリーダーへ
・whyとは存在理由/信念/夢/理念などを指し、人の感情を揺さぶるもの
・具体的な商品(what)と差別化(how)の前にwhyを伝える
・whyに共感する顧客には信頼や忠誠心が生まれる
・値引きや巧みなセールストークは操作であり、感情を揺さぶっていない
・howとwhatは、whyと一貫性がなければならない
・品質や価格よりもオーセンティシティ(真正性)が重視される
・whyに基づいて意思決定をする(whyのフィルターを通す)
ビジネスの事例が中心ですが、どう生きるか・どう人を巻き込みながら目標を成し遂げるのかに広く当てはまるテーマでした。
自分の軸を持ち、その軸に沿った行動を取ることで、ブレない意思決定ができそうです。
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