『それをお金で買いますか』の要約と感想:市場化で失われるものは何?

『それをお金で買いますか』の要約と感想:市場化で失われるものは何?

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『それをお金で買いますか』は市場化の道徳的限界がテーマの本。

売り物として扱う道徳的な是非をたくさんの事例で検討しています。

著者は『これからの「正義」の話をしよう』で有名なマイケル・サンデル教授です。

NHKのハーバード白熱教室で有名ですね!

 

★『それをお金で買いますか』の要約ポイント★

 

・規範や道徳が重視される領域に市場が拡大している

 

・市場の拡大は不平等と腐敗を引き起こす

 -不平等:貧富の差があらゆる面で影響する

 -腐敗 :金銭に換えられない価値が貶められる

結論としては、お金に換算すべきでないもの・領域があり、

その境界線は社会として何を大切にしたいかによる、というものです。

 

お金を払うに値する価値を見つけ出すのは新しいビジネスチャンスになり得ます。

しかし、お金に換算してもよいものか、お金を得る代わりにお金にならない価値を損なっていないかは確認する必要があります。

この記事では『それをお金で買いますか』の要約と感想を紹介します。

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『それをお金で買いますか』の要約

『それをお金で買いますか』の要約ポイントは次のとおりです。

★『それをお金で買いますか』の要約ポイント★

 

・規範や道徳が重視される領域に市場が拡大している

 

・市場の拡大は不平等と腐敗を引き起こす

 -不平等:貧富の差があらゆる面で影響する

 -腐敗 :金銭に換えられない価値が貶められる

1つずつ詳しく紹介します。

 

規範や道徳が重視される領域に市場が拡大している

 

著者は、市場主義があらゆる領域に適用されたことで道徳的限界を迎えていると主張します。

 

市場は、何が売り物にされているか、売り物として扱うのに道徳的に問題がないかを考慮しません。

売り手と買い手がいて価値交換に合意していればよい、という考え方です。

しかし、売り物にしてはいけないものは確かにありますよね。

 

お金で買えるものと買えないものはどう違うのか、

その違いの裏にどのような価値観があるのかがこの本のテーマになっています。

 

著者の見解は次のとおりです。

あるものを売買してもかまわないと判断するとき、われわれはそれを商品として、利益を得る道具、使うための道具として扱うのが妥当だと、少なくとも心のなかでは判断している。

 

道具としてみなせるもの、私有財産として考えて問題ないものは市場化しても良いが、

道具としてみなすと不平等であり本来の価値を損なうものは市場化すべきではない。

 

道具としてみなすべきでないものの典型例は人間です。

奴隷として売り買いするのは人間の尊厳を損ねる行為だというのは誰でもわかります。

 

奴隷制度ほどわかりやすく非道徳的なら議論の余地はありませんが、

『それをお金で買いますか』には、意見が分かれる市場化の例がたくさん載っています。

・アトラクションの行列をお金で回避する

 

・人を雇って行列に並ばせる

 

・不妊手術を受けたら/勉強したら/禁煙したらお金をあげる

 

・謝罪を代行させる

 

・プレゼントに現金/ギフトカードを贈る など

 

市場化に積極的に賛成する人は、社会的効用の最大化を主張します。

社会的効用:社会全体の満足度

つまり、「売り手も買い手も満足しているんだからいいじゃない」ということ。

 

たとえば、アトラクションの行列を回避するチケットを購入するケースや、

ホームレスを雇って行列に並ばせるケースは次のようになります。

買い手:時間が節約できてうれしい

 

売り手:収益が増えてうれしい

 

それに対して、市場化に反対する人は、

市場化することで不平等と腐敗が起こる危険性を理由に反対します。

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市場の拡大は不平等と腐敗を引き起こす

 

市場化の問題点は大きくわけて2つあります。

不平等:貧富の差があらゆる面で影響する

 

腐敗 :金銭に換えられない価値が貶められる

まず、不平等について考えましょう。

市場化があらゆる領域で進めば、あらゆる領域でお金がモノを言う社会になります。

 

お金がある人は立派な家で立派な車に乗る。そのくらいの差なら許容範囲かもしれません。

 

しかし、お金がある人だけがすぐに病院で診てもらえる(予約券を買う)、

子どもに良い教育を受けさせられる(寄付で入学させる)、ような世の中は健全でしょうか。

 

市場化に賛成派の人は、

お金がたくさん払える=一番価値を感じている人だと反論します。

 

しかし、お金がたくさん払えるのは支払い能力の差であり、必ずしもニーズの強さとは限らないでしょう。

野球場で高額な席に座っている人々は、遅くやってきて早く帰ってしまうことが多いのだ。こうした事実を知ると、彼らはどのくらい野球に興味があるのだろうかと思ってしまう。

 

市場化を促進することは、本当にニーズがある人には手が届かないのに、ニーズは低いけど支払い能力がある人はたいていのものが手に入る世の中を促進することになります。

 

次に、市場化で起こる2つ目の問題点、腐敗について考えます。

腐敗と聞くと政治の賄賂などを思い浮かべますが、少し意味合いが違います。

腐敗 :金銭に換えられない価値が貶められる

たとえば、”1冊読書すると2ドル渡す”と読書を市場化してしまうと、

本来の読書の楽しみ・目的は忘れられ、読書=お金をもらえる作業になってしまいます。

 

本来の価値が金銭的価値・市場価値に換算されて失われることを指摘しているのです。

 

行動経済学のベストセラー『予想どおりに不合理』でも

”社会規範と市場規範は混ぜるな危険”というテーマが出てきます。

 

社会規範から困った人に親切にしても、

その行為に値段をつけられる(対価を払われる)とやる気がそがれるという内容です。

参考記事:『予想どおりに不合理』の要約・感想:行動経済学のはじめの一歩に最適!

 

市場化に違和感があったら、その裏で失われている価値を考えてみましょう。

・人を雇って行列に並ばせる⇒順番を守るという価値観

 

・不妊治療をしたらお金をあげる⇒子どもを持つ権利

 

・禁煙したらお金をあげる⇒自分の健康は自分で気遣うという自尊心

 

・プレゼントに現金/ギフトカードを贈る⇒思いやりや心遣い

 

わかりやすい例は、罰金と料金の違いです。

 

スピード違反の罰金を『好きなだけスピードを出すための料金』と捉えると、

車で人を傷つけないように注意すべきであるという価値観を軽んじることになります。

 

保育園のお迎えに遅れる人を減らすため、

罰金を課すようにすると逆に遅れる人が増えた事例も紹介されていました。

延滞の罰金を『子どもを延長して見てもらえる料金』と捉えたために、むしろ罪悪感から解放されてしまったのです。

 

市場化するかどうかは、規範や道徳の価値を損なわないかを問う必要があります。

社会の一員として損ないたくない規範ならば、市場化に反対すべきです。

つまり、結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにしてともに生きたいかという問題なのだ。われわれが望むのは、何でも売り物にされる社会だろうか。それとも、市場が称えずお金では買えない道徳的・市民的善というものがあるのだろうか。

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『それをお金で買いますか』のオーディオブック

 

『それをお金で買いますか』は耳で聴けるオーディオブックがあります。

 

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『それをお金で買いますか』の感想

 

市場化できない領域がある、市場化すると損なわれる価値がある

というのは賛成でした。

 

しかし、薬物中毒の女性が不妊手術・避妊手術を受けたら300ドルもらえる予防プロジェクトは、必ずしも市場化が悪いとは思えなかったです。

 

毎年、数十万人の赤ん坊が薬物中毒の母親のもとに生まれる。こうした赤ん坊の一部は生まれたときから薬物中毒で、その多くが虐待されたり育児を放棄されたりすることになる。

300ドルをもらって不妊手術を受ける薬物中毒の女性が増えれば、

薬物中毒で生まれてくる赤ちゃん・生まれて虐待される赤ちゃんが減るのです。

 

不平等の面から見れば、薬物中毒の女性は貧困層が多いので、

金銭的魅力にあらがえない、自由取引に見せかけた強制であるとも言えます。

 

また、腐敗の面から見れば、生殖能力を金銭的価値を生む道具として扱うことで、

道徳的価値を貶めることになるでしょう。

代理母出産に反対する人と同じ理屈かもしれません。

 

しかし、薬物中毒で生まれてくる・高い確率で虐待されたり育児放棄されたりする赤ちゃんを産む権利は守るべきものなのか。

 

高確率で不幸になるのがわかっているのに自由に産む権利があるのか、

それとも虐待や育児放棄は不幸とは限らないのか、

わたしには違和感がありました。

 

市場化に手放しで賛成はできないが、子どもを産むことに対する道徳的価値を守るよりも、実際に生まれてくる赤ちゃんを待ち受ける境遇を避けるほうが優先なのでは?と感じます。

生まれてくる赤ちゃんを全員保護できたら良いのですが、

そうもいかないんでしょうね。

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『それをお金で買いますか』の次に読むなら?おすすめ本3選

 

『それをお金で買いますか』とあわせて読みたい3冊を紹介します。

①『実力も運のうち』

 

自由主義の限界、平等や道徳に興味がある方は、

マイケル・サンデル教授の『実力も運のうち』もおすすめです。

 

民主主義が信じられなくなっていること、信条によって分断が進むことがよくわかります。

関連記事:【要約】実力も運のうちー能力主義は正義か?ー能力主義のデメリットとは?

 

②『これからの「正義」の話をしよう』

 

マイケル・サンデル教授の著作の中で、1番有名かもしれません。

 

「正義とは〇〇です」という答えは書いておらず、

自分なりにこの状況でどう判断するか?を考える本です。

子どもが大きくなったら一緒にもう一度読みたい!

 

③『21Lessons』

 

現代とはどういう時代で人類はどういう課題に直面しているのかがテーマの本。

 

自由主義という物語が信じられなくなっている現代で、

どういった価値観が選ばれるのか考えさせられます。

参考記事:21Lessonsの要約&目次紹介!21世紀の課題と瞑想で自分を観察する意味【感想】

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まとめ:『それをお金で買いますか』と自分に問いかける

・市場主義がいろいろな領域に適用されたことで道徳的な限界に直面している

 

・道具としてみなすのが不平等であり価値を損なうものは市場化すべきではない

 

・市場は売り物が道徳的に問題ないかは考慮しない

 

・市場化が進むとあらゆる領域で貧富の差が現われる

 

・市場取引の商品として扱うことで本来の価値が失われるものがある

 

・何を市場化する/しないかはどんな価値観を大切にしたいかによる

何でも商品になる時代だからこそ、知らない間に大切な価値観・道徳心を失っていないか、

お金で取引することに違和感がないかは自問自答したいと思います。

 

お金を持っている人は市場化大歓迎かもしれませんが、

今、お金を持っていることも幸運によるものです。

お金に換算できないものも大切にできる社会に暮らしたい!

と強く思いました。

 

★今回紹介した本★

 

★マイケル・サンデルさんの他の本もレビューしています★

参考記事:【要約】実力も運のうちー能力主義は正義か?ー能力主義のデメリットとは?

 

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