『私たちは子どもに何ができるのか』は、非認知能力を身につけるためにはどうすればよいか?をさまざまな研究や支援の取り組みから解説した本。
非認知能力とは、粘り強く取り組む力(グリット)や内発的に取り組む意欲、困難なことに遭遇したときの回復力(レジリエンス)等、認知能力の土台となる心の能力を指します。
非認知能力は学習するものではなく幼少期の環境が重要です。
したがって、貧困層で育った子どもは非認知能力の発達が妨げられ、ますます貧富の差が拡大します。
★『私たちは子どもに何ができるのか』の要約ポイント★
・非認知能力は鍛えるものではなく幼少期の環境に依存する
・非認知能力の発達を邪魔するのは慢性的なストレス
・内発的動機づけを促すようなささいな働きかけが重要
非認知能力を高めるためには大人や社会が子どもの邪魔をしないこと、
高度なカリキュラムなど必要なく、愛情を感じられるささやかな行動をするだけでよいのです。
この記事では『私たちは子どもに何ができるのか』の要約を紹介します。
目次
要約①:非認知能力は幼少期の環境に依存する
非認知能力はいわゆる心の能力と言われています。
それに対して認知能力は、知能検査で測れる文章理解や数学の能力などです。
非認知能力は国語や算数のように学ぶことはできず、
特に就学前の子どもの環境によって左右されます。
幼少期に貧困などの逆境にあった子どもたちは非認知能力の発達が阻害されており、
結果として進学率の悪化や貧富の格差拡大につながります。
私の至った結論はこうだ。「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも、「非認知能力は子供をとりまく環境の産物である」と考えたほうがより正確であり、有益でもある。(中略)子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。環境なのである。
特に家庭に問題を抱えた就学前の子どもたちをケアし、非認知能力の発達が追い付くように支援することは、非認知能力が育たないまま成長したときに発生するコストを考えても社会全体でプラスになります。
そもそも子どもには非認知能力を育むポテンシャルがあるということ。
大人や社会が発達を阻害しないように環境を整えるのが先決です。
要約②:非認知能力の発達を邪魔するのは慢性的なストレス
非認知能力の発達を阻害する1番の要因はストレスです。
幼少期に高ストレスにさらされていると、感情や認知の制御能力が育ちにくくなります。
瞬間的な高ストレスだけでなく、慢性的・継続的なストレス状態が続くと子どもの心の発達に悪影響を与えます。
慢性的・継続的なストレス状態:貧困、ネグレクト、親の口論など
ストレス状態が続く=自分の環境が不安定だと学習することになり、
いつも精神的に警戒状態になってしまいます。
ささいなことでも攻撃されたと感じたり、小さな失敗が大きな挫折に感じたりするため、
学校生活で問題を起こす・勉強についていけなくなる可能性が高くなるでしょう。
逆境にある子どもたちを支援するには、親を筆頭に周りにいる大人の行動や態度を改善することです。
子どもに向き合う時間が増え、笑顔や温かい会話などの機会が増えます。
貧困をすぐに解決することはできないかもしれませんが、貧困家庭に訪問して育児の悩みを聞いたり、子どもへの関わり方をほめたりする支援も一定の効果を挙げているそうです。
要約③:内発的動機づけを促すようなささいな働きかけが重要
非認知能力を育むためには、内発的動機づけを促すような大人の働きかけが重要です。
内発的動機づけを促す要素は3つあります。
・自律性:子ども自身が選んでやっていると思える
・有能感:今の能力より少しだけ難しいことに取り組む(やればできる)
・関係性:価値を認められ尊重されている
子どもが3つの要素を感じられるように接することで、内発的動機づけを持ちやすくなります。
特に子どもたちは、失敗に対するメッセージを敏感にキャッチします。
失敗=能力の否定 :すぐあきらめる
失敗=学ぶチャンス:あきらめずやり抜く
失敗=学ぶチャンスというメッセージを大人の言動から受け取れば、
子どもたちは失敗しても今度はできる!というマインドセットになるでしょう。
教師のちょっとした行動が生徒のやる気に影響を与える実験が紹介されていました。
白人の生徒とアフリカ系の生徒に作文を書かせ、それぞれ半分には中立なフィードバック、もう半分には期待を込めたフィードバックを行う。
(フィードバックの内容は同じで、期待を込めたフィードバックには最後に大いに期待している旨が一言添えられている)
フィードバックを受けた生徒は、修正して再提出するか選択できる。
<白人の生徒が再提出した割合>
中立なフィードバック:72%
期待を込めたフィードバック:87%
<アフリカ系の生徒が再提出した割合>
中立なフィードバック:17%
期待を込めたフィードバック:72%
偏見による差別を受けやすい層はフィードバック=非難・否定と受け取りやすく、
期待を込めたコメントによってフィードバック=期待と捉え方が変わったのでしょう。
たった一言だけで、高いストレス状態で培われたものの見方を変えることもあります。
子どもの貧富の差を解消する、というと個人ではどうしようもない気がしますが、
まずは自分の周りの子どもたちにできることがあるはずです。
私がここで説明してきた研究が明らかにしているところによれば、子供たちの人生の軌跡は、大人にとってはたいして重要でもないように見える些細な物事から変わりはじめる。親の声の調子。教師が付箋紙に書くメモ。数学の授業のやり方。難題に直面した子供の話を聞くために、メンターやコーチがほんの少し余分な時間を取ること。こうした個人的な行動が強力な変化を生むこともある。そして個々の変化が国じゅうで共鳴することもある。
『私たちは子どもに何ができるのか』の次に読むなら?
『私たちは子どもに何ができるのか』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『隷属なき道』
貧困をなくす最善の方法として、ベーシックインカムを提唱した本です。
愚かだから貧困になるのではなく貧困が愚かな決断をさせること、
貧困がいかに人を不幸にするかがわかります。
参考記事:『隷属なき道』の要約まとめ:ベーシックインカムが貧困を効率的に解決する
②『実力も運のうち』
自由主義の限界、平等や道徳に興味がある方は、
マイケル・サンデル教授の『実力も運のうち』もおすすめです。
貧困かどうかは生まれる場所と時代、遺伝子の影響が大きいので、
自己責任にするのは優しくない世界だとわかります。
関連記事:【要約】実力も運のうちー能力主義は正義か?ー能力主義のデメリットとは?
③『いじめを生む教室』
いじめ問題を解決するためのヒントや提言がまとめられた本です。
感情論ではなく、データに基づいて有効な解決策を考えるのに役立ちます。
非認知能力の発達と同じく、いじめも環境の影響が大きいです。
参考記事:『いじめを生む教室』の要約まとめ:データをもとに根拠のある対策が必要
まとめ:非認知能力を育む環境を整えよう
・非認知能力とはやり抜く力や内発的に取り組む意欲などの心の能力
・非認知能力の発達には幼少期の環境が重要
・貧困やネグレクトなどの継続的なストレスが非認知能力の発達を阻害する
・貧困層の子どもたちは非認知能力の発達が阻害され、貧富の差が拡大しやすい
・自律性/有能感/関係性を重視した働きかけは内発的動機づけを促す
・大人のささいな行動が子どもたちの将来に大きな影響を与える
大人が子どもにできる1番重要なことは、発達を邪魔しないことだと思いました。
愛情たっぷりなコミュニケーションを取る、失敗しても大丈夫と思えるように存在を受容する等、親として当たり前のことをすれば良いのです。
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