『組織になじませる力』は、新卒/中途採用者に有効なオンボーディングの取り組みがわかる本。
オンボーディングとは船や飛行機に乗っている状態のこと。
新しく組織に参加する人が円滑に適応できるようにサポートすることで、組織に早く・長く貢献してもらえるメリットがあります。
★ 『組織になじませる力』 の要約ポイント★
・新卒採用のオンボーディング
・中途採用のオンボーディング
この記事では 『組織になじませる力』 の要約を紹介します。
目次
要約①:新卒採用のオンボーディング
新卒採用のオンボーディングで課題となるのは、リアリティ・ショックです。
リアリティ・ショック:「高い期待と実際の職務での失望させるような経験との衝突」
リアリティ・ショックは期待が高すぎてショックを受けるだけではありません。
「厳しい指導を期待していたのにぬる過ぎる」という肩透かしのリアリティ・ショックや、「覚悟はしていたが想像以上だった」という専門職型リアリティ・ショック(看護師など)もあります。
リアリティ・ショックはたしかに離職につながるネガティブな面もありますが、ポジティブな効果もあります。
<リアリティ・ショックのポジティブな効果>
・覚醒効果:学生時代とは違うんだと気づく
・学習促進効果:どう対処するか自己学習する
・人的ネットワーク広範化効果:信頼できる人を見つける
・メンタル効果:ショックを乗り越えることで精神的に強くなる
離職につながるリアリティ・ショックと学びや成長につながるリアリティ・ショックには、次の3つの違いがあります。
・自分で解決できるか
・正当化(納得)できるか
・成長につながるものか/将来を邪魔するものか
リアリティ・ショックが自分では解決できないこと(会社の雰囲気など)に起因している、会社から十分な説明がなく正当化できない(事前に聞いていた話と違う等)ときは、離職につながりやすいです。
また、このリアリティ・ショックを乗り越えた先に自分の成長や将来が開ける可能性が見えるかどうかも大きく影響します。将来が描けるかどうかで、リアリティ・ショックがポジティブなものになるか、離職につながるネガティブなものになるか決まります。
リアリティ・ショックへの対策
リアリティ・ショックへの対策は、入社前と入社後の対策に分けられます。
入社前:正確な情報提供、トランジション・スロープをかける
入社後:相談窓口やメンター制度、研修、リアリティ・ショック・マネジメント
入社前はリアリティ・ショックを抑制するような対策が必要です。
正確な情報提供をして、会社が内定者に非現実的な期待を抱かせないようにします。リアリティ・ショックを引き起こすのは、伝えるべきことをあえて伝えていないときです。ネガティブなことでも伝えるべきことは正直に伝えておくほうが、後から早期離職されるよりも良いでしょう。
トランジション・スロープとは、学生から社会人へなめらかに移行できるようにサポートすることです。インターンシップや若手社員との交流などで、実際の現場の様子がわかる機会をつくります。また、リアリティ・ショックに関する知識を伝えて、事前に心の準備をさせるのも有効です。
入社後は、リアリティ・ショックに直面している新入社員のサポートが対策になります。
特に新鮮だったのは、リアリティ・ショックを適切にデザインして成長に活かす、リアリティ・ショック・マネジメントという考え方です。
リアリティ・ショックのポジティブな効果を引き出すように、あえてリアリティ・ショックに直面させて成長を促します。その際、離職につながるようなリアリティ・ショックの要素を盛り込まないことがとても重要です。
それゆえ、リアリティ・ショック・マネジメントでは自己完結性が高く(自分の力で乗り越えられる)、正当化可能性も高く(そのリアリティ・ショックに直面することが納得できる)、展望に連鎖している(そのリアリティ・ショックを乗り越えることで、自分自身の成長につながったり、やりたい仕事ができるようになる)ようなものに直面させることが重要です。
要約②:中途採用のオンボーディング
中途採用のオンボーディングで課題になるのは次の3点です。
・排除する:再適用の障壁になる経験や意識を捨てる
・構築する:信頼関係、人的ネットワークの構築
・理解する:暗黙のルール、新しいスキル
過去の経験が新しい組織への再適応を邪魔する場合は、その経験を捨てる(アンラーニング)必要があります。
学び壊し、学びほぐし(unlearn):過去の知識や価値観を手放すこと
ただし、過去の経験は中途採用者の強みや多様性でもあるので、すべてを捨てる必要はありません。活かせるところは活かしつつ、修正が必要なところを柔軟に変えていきます。
自分で生かすところ・捨てるところを判断するのは難しいので、会社の丁寧なサポートが必要でs。
もう一つ捨てるべきものは、中途意識です。「中途採用だから…」と自分から既存社員と線を引いたり、遠慮したりしていては、いっこうに距離が縮まりません。
既存の社員は中途社員を”お手並み拝見意識”で見ていれば、中途社員は「成果を出さなくては!」とプレッシャーになります。
信頼関係を構築し、仕事に必要な人的ネットワークができれば、暗黙のルールや新しく必要な知識も理解できますが、成果を出す前に信頼関係を構築するのが難しいです。
組織再適応への対策
中途採用者の組織再適応への対策は次のようなものがあります。
・脱色教育
・中途採用だけの研修(同質)+既存社員との研修(異質)
・適応エージェント
・準備期間を設ける
脱色教育とは、前職での色を落としてアンラーニングするための機会です。中途採用者の強みを活かしつつ、適応の障害になる考え方ややり方は修正します。
また、人的ネットワークを構築する機会も会社で設けます。その際、同じ悩みを相談しやすく心の支えになれそうな中途採用のつながりをつくる研修と、仕事に必要な情報を得られるような既存社員とのつながりをつくる研修を行います。
新卒採用ではメンター制度が普及していますが、中途採用にも適応をサポートする担当者(適応エージェント)が必要です。適応エージェントは複数人で担当すると、負荷軽減、エージェント同士の悩み相談ができます。
そして、3か月程度の準備期間を設けることで、中途採用者が安心してアンラーニングや人的ネットワーク構築に取り組めます。準備期間は成果で判断しないことを約束しましょう。
中途採用のオンボーディングの課題は、会社や既存社員の意識の問題でもあります。
会社が「中途=即戦力」という考え方を持つと、人事レベルでの大きな問題としては、中途採用者に対する教育制度やサポートが乏しくなることです。
既存社員にとって、中途採用者は「よそ者」であり、ライバルになります。そのため、既存社員の「お手並み拝見意識」は、積極的なコミュニケーションを阻害し、中途採用者と既存社員の心理的な溝を深めます。そして、それが中途採用者の組織不適応を引き起こす原因になるのです。
上司においても、「中途採用者は既に社会人経験があるので、教育やサポートがなくてもいいだろう」という思い込みを持つと、それが中途採用者の組織不適応を引き起こす原因になるのです。
中途採用者が活躍するにはオンボーディングが必要であり、中途採用者への魅力が増せばより優秀な社員を中途採用できるチャンスが広がるのです。
『組織になじませる力』 の次に読むなら?おすすめの本3選
『組織になじませる力』 とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『THE CULTURE CODE(カルチャーコード)最強チームをつくる方法』
個々の能力ではなく、メンバー同士の相互作用がチームの成否を左右します。
成功するチームに共通する文化とそのためのアクションがわかる本です。
参考記事:『THE CULTURE CODE(カルチャーコード)最強チームをつくる方法』の要約まとめ
②『だから僕たちは、組織を変えていける』
やる気に満ちたやさしいチームのつくり方がわかる本です。
組織の人間関係の質を改善するポイントがよくわかります。
参考記事:『だから僕たちは、組織を変えていける』の要約まとめ:関係の質を高めるには?
③『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さてどうする?』
良い人材が定着するための組織づくりがわかる本。
離職を最適化して、組織にいてほしい人がモチベーション高く定着する組織を目指します。
おすすです!
参考記事:『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さてどうする?』の要約【離職最適化】
まとめ:効果的なオンボーディングがわかる
・オンボーディング=新しく組織に参加する人の円滑な適応をサポートする
・新卒採用の適応課題はリアリティ・ショック
・リアリティ・ショックにはポジティブな効果もある
・入社前の正確な情報提供と研修で移行をスムーズにする
・適切にデザインすればリアリティ・ショックを成長の機会にできる
・中途採用は適応の障害になる経験と中途意識を捨てることから始める
・同質なつながりと異質なつながりを組み合わせる
・会社や既存社員の「中途=即戦力」という考えは捨てる
なんとなく「交流会をやろう」という思い付きではなく、直面する課題から逆算したオンボーディングの対策がわかりました。
人事部門、新卒や中途社員の教育担当者、離職率を下げたいマネージャーや経営者には実践的に役立つ本だと思います。
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