『対話する力』は、ファシリテーターに関する問いに答えながら対話とは何かを考える本。
ファシリテーターのハウツーではなく、マインドセット・あり方がわかります。
ワークショップ企画プロデューサーの中野民夫さんと、組織コンサルタントの堀公俊さんの対話形式で、実際のファシリテーターの悩みや課題に答えています。
★『対話する力』の要約ポイント★
・対話にどう巻き込むか:つかみと問いが大切
・ファシリテーターは中立より公平であれ
対話は新しいものを一緒に創り出していくクリエイティブな行為です。
参加者を巻き込む方法とファシリテーターとしての心構えをまとめました。
この記事では『対話する力』の要約を紹介します。
目次
要約①:対話にどう巻き込むか【つかみと問いが大切】
対話とは”率直に話し合うなかで新しいものを一緒に見つけ出していく、ともに創り出していくこと”です。
一緒に創り出すために、対話に参加する人を巻き込む必要があります。
どれだけ前のめりで、熱量を持って参加してくれるかで、対話の成否が決まります。
参加者を巻き込むポイントはつかみと問いです。
対話は最初の場づくりが重要
当事者意識を持って対話に参加してもらうには、最初の場づくりが重要です。
具体的には次のようなアクションが考えられます。
・目的を共有する
・チェックイン、アイスブレイクなどで場をほぐす
対話の場では自由に発想を広げてよいのですが、目的は常に念頭に置きます。
脱線しすぎて本来の目的を見失わないようにしましょう。
そのためにはまず冒頭でこの場の目的を共有します。
自分事の目的とするために、「この場をどういう場にしたいか」を参加者を入れて決めるのも良いでしょう。
テーマ決めなど準備段階から参加してもらうことで当事者意識を高めることもできます。
対話の口火を切るのは勇気が要ります。
まずはチェックインやアイスブレイクで発言しやすい雰囲気をつくりましょう。
チェックイン:お互いの今の感じ(感情や状態)をシェアする
アイスブレイク:かんたんなゲームやお題に沿ってひと言ずつ話す
(例)最近のうれしいできごとやGood&New(良かったことと新しい発見)
ポイントは、自分の感情など体験ベースの話をすることです。
自己開示することでその後に発言しやすくなる効果もあります。
考えたくなるような問いを立てる
『対話する力』によると、”ファシリテーターは問いが命”だそうです。
<良い問いとは?>
・本質を突いていて、かつ、誰でも話し合える
・共通の関心事をいつもと違う角度から深く掘り下げる
良い問いには、ハッとする意外性があって思わず考えたくなるものが多いです。
問いの立て方はサイエンスよりアートなのだとか…
たくさんの問いを立てて投げかけてみる、反応を見て問いの立て方を上達させるより他ありません。
PDCAを回して問いの質を上げるには、相手のレスポンスが読めることが重要です。
少なくとも、相手の反応をフィードバックとして受け取ろうという姿勢は持っていたいですね。
要約②:ファシリテーターは中立より公平であれ
ファシリテーターは全体を見る役割だから対話に参加してはいけない、と思っていませんか?
必ずしもファシリテーター自身の感情や意見を言ってはいけないわけではありません。
著者は2人とも、ファシリテーターに決まったやり方はないと言います。
自分なりのファシリテーションのやり方を見い出せばよく、対話を促進できるならやり方はいろいろあっても構わないのです。
ファシリテーターを仕事にしている人はともかく、会社で任されるファシリテーションは自分も関わるテーマであることが多いでしょう。
対話の中で起こったことには意味があります。
もしファシリテーターの中に感情が湧きおこってきて、それが対話の促進につながると思えば、場にフィードバックするのも選択肢の1つ。
参加者の様子や進行だけでなく、自分の感じていることに気づく力(マインドフルネス)も大切な武器です。
ファシリテーターが気を付けたいことは2つあります。
・中立より公平であること
・落としどころを持っていても良いが固執しないこと
何をもって中立(意見の中心点、偏りがない)であるかは定義が難しく、
参加者がファシリテーターに対して”公平(フェア)である”と信頼されることのほうが重要です。
ファシリテーターが多数派だけでなく少数派の意見も同じように大切に扱うことで、ファシリテーター自身が意見を持っていても納得感が得られます。
落としどころ(仮説や方向性)を持っているのは悪いことではありません。
対話の方向を自分の落としどころに誘導するのが問題です。
対話の準備としてゴールイメージや方向性を持って臨み、
対話のときには今その時の対話プロセスに集中します。
準備はしてもこだわらない柔軟性が必要です。
ファシリテーターは対話の場において力を持っていることを常に自覚しましょう。
『対話する力』の次に読むなら?おすすめの3冊を紹介
『対話する力』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『ファシリテーションの教科書』
ファシリテーションスキルが体系的に学べる本です。
ファシリテーションによって参加者の腹落ち感が得られるための準備がわかります。
話を聞く姿勢や場の設定、論点の整理などがまとまっています。
参考記事:『ファシリテーションの教科書』の要約:主体的に行動するための腹落ち感が重要
②『問いかけの作法』
『問いかけの作法』では、質の高い問いかけでチームの魅力と才能を引き出すための本です。
メンバーのどういう行動に注意して観察し、どんな仮説を立てるのか?など、
ファシリテーターや研修講師だけでなく、チームリーダーをはじめ多くの人に参考になる内容です。
参考記事:『問いかけの作法』の要約:問いかけのサイクルモデルでチームのアイディアを引き出す
③『超ファシリテーション力』
ワークショップというよりも、会議やディスカッションの場で実践的なテクニックが知りたい人には『超ファシリテーション力』がおすすめです。
QA方式が多くてサクッと読める、実際に使える問いや相槌が紹介されていて、
すぐに取り入れやすいです。
参考記事:『超ファシリテーション力』の要約まとめ:会議は団体戦!全員参加の場づくりのコツ
まとめ:ファシリテーターに必要なマインドがわかる本
・対話は新しいものを一緒に創り出していくクリエイティブな行為
・対話に巻き込むにはつかみと問いが重要
-つかみ:話しやすい場づくり(目的の共有、チェックイン、アイスブレイク等)
-問い:意外性があって思わず考えたくなる(反応をみて試行錯誤する)
・時にはファシリテーターの気づきを場にフィードバックするのも有効
・ファシリテーターは中立より公平であれ
・落としどころは持っていても良いが、こだわると誘導になる
『対話する力』を読んで、ファシリテーターは奥が深い仕事だと感じました。
会社で会議や研修のファシリテーターをすることが多いので、
時々読み返して復習したい本です。
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