『チームが機能するとはどういうことか』は学習する組織をつくるためのチーミングについて理論と実践がわかる本。
チーミングとは組織で共通ゴールを目指して協力し合う動的な活動であり、組織学習を促進します。
著者が提唱した言葉であり、状態ではなく絶え間ない活動を示す動詞であることが強調されています。
もっとメンバー同士が協力し合えるチームをつくりたい!
個人プレーの足し算ではなくチームとして成果を出したい!
と考えるリーダーにおすすめの1冊です。
変化が激しい時代に、多様な人をどうチームにするか・どう協力関係を築いて変化に適応していくかがわかります。
★『チームが機能するとはどういうことか』の要約ポイント★
・チーミングとは組織学習を促進する動的活動のプロセス
・チーミングの障壁は不安や思いこみ
・チーミングに必要な4つのリーダーシップ行動
ー学習するための骨組みをつくる
ー心理的に安全な場をつくる
ー失敗から学ぶ
ー境界を超えたチーミング
この記事では『チームが機能するとはどういうことか』の要約を紹介します。
目次
要約①:チーミングは組織学習を促進する
チーミングとは組織学習を促進する動的活動のプロセスです。
チームメンバー同士が協力してお互いに助け合う、本当の意味でチームになるための活動全般を指します。
簡単に言えば、チーミングとは、新たなアイデアを生み、答えを探し、問題を解決するために人々を団結させる働き方のことだ。(中略)今日の組織で学習するには、互恵的な相互依存が不可欠であり、コミュニケーションと協調があって初めてきちんと仕事ができるようになるのである。
VUCA(先が見えない不明確な時代)に適応するために、組織は絶えず学習する必要があります。
ちょっとした気づきや改善を日々の仕事の中で実践するための土台がチーミングです。
チーミングに成功しているチームには具体的に次のような行動が見られます。
・率直に意見を言う:個人間の誠実な会話がある
・協働する :目標や情報を共有する
・試みる :不確実性にチャレンジする
・省察する :プロセスと結果を振り返って共有する
チーミングを行うとパフォーマンスが上がり、従業員の仕事に対する満足度が上がります。
メンバー1人ひとりが尊重され、自分の知識や気づきを共有し合いながら目標に向かって働く。
それはとても楽しくて充実した時間になるでしょう。
しかし、チーミングを阻む社会的・認知的な障壁があります。
要約②:チーミングの障壁は不安や思いこみ
チーミングの活動を妨げる1つ目の障壁は不安です。
特に上下関係が強い組織では、率直に意見を言ったり失敗する可能性があることに挑戦したりするのが難しいでしょう。
リーダーは近寄りがたい人で失敗が評価につながるとなれば、自分の知識や気づきを積極的にシェアする気は起きません。
対人リスクを犯さないためには沈黙しているほうが楽であり、個人にとっては最善の策に見えても組織学習においては学習の機会が損なわれることになります。
不安を取り除くために必要なのは、リーダーが率先して率直であることの手本を見せ、そして手本にならうメンバーに感謝して賞賛することです。
何より重要なのは、従業員を尊敬していることをリーダーが明確に伝えると、従業員が進んで知識を提供しやすくなる点だ。
チーミングの活動を妨げる2つ目の障壁は思い込みです。
心理学者リー・ロスが定義した、代表的な思いこみが2つ紹介されていました。
【素朴実在論】
”自分意外の他者も、理性的で道理をわきまえているかぎりにおいて、自分と全く同様に知覚する”という思い込み
つまり、自分と意見が違う=相手は理性的でないと思ってしまう認知バイアス。
自分が関心を持っていることについて意見が異なると、驚きと不快の感情がこみ上げてくるのです。
SNSでの議論でもよく見かけます。
違う意見は違う意見として受け止める、意見の対立は新しい理解のチャンスだと思うことができれば、もっと心穏やかに、新しい発見を楽しめるでしょう。
【根本的な帰属の誤り】
他人の失敗は他人の能力や性質のせい、自分の失敗は状況のせいにしてしまう
自分が遅刻したときは電車の遅延のせいだとするのに、相手が遅刻をしてきたら「自己管理がなっていない」などと短絡的に本人のせいにしがちです。
自分の状況は自分でよくわかっていますが、他人の状況は理解しようとしないとわかりません。
根本的な帰属の誤りを克服するには、結論を出す前に意識して余白をつくることです。
具体的には「〇〇さんにもなにか事情があるのかもしれない」と結論を保留にします。
認知的バイアスに陥らないためには認知的負荷がかかります。
特に失敗や問題に直面して短絡的に結論を出したくなるときこそ、認知的バイアスに気を付けましょう。
要約③:チーミングに必要な4つのリーダーシップ行動
具体的にチーミングの活動とはどのようなものでしょうか。
チーミングを成功させる4つのリーダーシップ行動があります。
・学習するための骨組みをつくる
・心理的に安全な場をつくる
・失敗から学ぶ
・境界を超えたチーミング
1つずつ紹介します。
学習するための骨組みをつくる
1つ目は組織学習に適した認知フレームに変えることです。
認知フレーム:ある状況での一連の思いこみや信念
メンタルモデル、固定観念、物事の捉え方とも言えます。
チーミングに特に重要なのは、リーダーの役割/チームメンバーの役割/プロジェクトの目的に対する認知フレームです。
【リーダーの役割】
OK:尊敬し合い相互依存するチームリーダー
NG:命令する人、一個人の専門家
リーダー自身も間違う可能性があり、持っている知識に限界があることを示せば、オープンな環境が生まれやすくなります。
リーダーが自分自身の役割をどう捉えているかを積極的にメンバーに示すことで、チームメンバーがそれぞれ自分の役割をどう捉えるかにも影響を与えます。
”わたしは相互依存するリーダーであり、メンバーの協力が必要である”というメッセージが伝われば、メンバー自身も自分の役割を果たそうとするのです。
【チームメンバーの役割】
OK:権限を与えられたチーム、仲間
NG:命令に従う作業者
チームメンバーがなぜ選ばれてどんな役割が期待されているかを伝えること、成功するかはメンバー全員にかかっていることを伝えることが重要です。
1人ひとりが責任感を持つことにつながります。
任された範囲の作業者の1人という認識では、範囲内の作業にしか目が向きません。
プロジェクト全体の成功や本来の目的を意識するには、「わたしはプロジェクトの重要な役割を担っている」とメンバー自身が思える必要があります。
【プロジェクトの目的】
OK:向上心あふれるワクワクする目的
NG:受け身、恐れや不安が動機
プロジェクトの目的を明確に説得力を持って伝えられるかが肝心です。
メンバーの意欲が高まるような目的を提示できれば、目的に向かって積極的に貢献してもらえます。
向上心を刺激する目標には、なんらかの行動によって誰かほかの人を支援したりチームメンバーが困難を伴う学習を頑張り抜くのを手伝ったりするというわくわく感がぎゅっと詰まっている。
心理的に安全な場をつくる
チーミングを成功させるリーダーシップ行動の2つ目は心理的に安全な場をつくることです。
心理的安全性:他人の評価や反応を気にせず、率直に意見を言えること
職場には主に次のような対人関係のリスクがあります。
・無知:質問したらこんなことも知らないのかと思われる
・無能:失敗したら能力がないと思われる
・ネガティブ:批判的な評価を言うと否定的な人だと思われる
・邪魔:意見を求めると邪魔な人だと思われる
このようなリスクを恐れずに、学習のための行動を取れる環境をつくるにはリーダーの影響が大きいです。
心理的安全性を高めるリーダーの行動は次のとおりです。
・親しみやすい人、話しかけやすい人になる
・知識の限界や自分も間違う可能性を認める
・失敗=学習の機会ととらえる
・境界を設ける(なにが賞賛され、なにが非難されるのか)
著者のエイミー・C・エドモンドソン教授は、心理的安全性をテーマにした『恐れのない組織』という本を出しています。
参考記事:『恐れのない組織』の要約:心理的安全性を高めたいリーダーにおすすめの本
失敗から学ぶ
学習する組織はちょっとした失敗を積極的に認識して学んでいきます。
大切なのは、できるだけ小さく早く失敗することです。
失敗をするのが難しいのは、失敗と責任がひもづいていて罰や評価の低下につながるからです。
リーダーは失敗に気づいた人にインセンティブを与え、失敗を報告した人を歓迎する必要があります。
安心して報告できることを行動で示さないと信頼されません。
失敗についてオープンに議論できる場が学習につながります。
失敗を個人の責任にひもづけていては、失敗をポジティブに考えることは難しいでしょう。
いかに失敗を個人の責任に結び付けているかについて、”失敗した理由のスペクトル”を紹介します。
失敗の理由は非難されるものから称賛されるものまでさまざまです。
次のうち、どこまで個人の責任として咎められるべきだと思いますか?
<失敗の理由のスペクトル>
・逸脱:意図的に手順や指示を無視した/誤った
・不注意:うっかりミスした
・能力不足:スキルやトレーニングが足りなかった
・プロセスの不備:手順が間違っていた/不十分だった
・困難な仕事:難易度が高すぎていつも成功するとは限らない
・プロセスの複雑さ:相互作用するプロセスが多いため滞る
・不確実性:妥当に見える行動をしたが好ましくない結果に終わる
・仮説検証:仮説を証明する検証が失敗する
・探索実験:可能性を調べるための試みが失敗する
企業の幹部は、平均的に2つ目前後で線引きをしたそうです。
そして、企業幹部に咎められるべきではない理由で咎められている失敗の割合を聞いたところ、「70~80%」と答えました。
失敗を個人の責任にしすぎているせいで、失敗をポジティブに捉えられない環境がつくられています。
境界を超えたチーミング
チーミングを成功させるリーダーシップ行動の最後は、境界を超えたチーミングです。
境界とは、アイデンティティが同じ人の集まりの区切りを指します。
境界には目に見えやすいものと目に見えにくいものがあります。
目に見えやすい:ジェンダー、国籍、年代、役職など
目に見えにくい:価値観、信念など
境界を超えたチーミングとは、多様性のある人々をチームにするための行動を取るということです。
境界があることで、誤解、権力による服従、意見の対立が起こる可能性があります。
境界を超えたコミュニケーションをどう取るかがリーダーのがんばりどころです。
・上位の共通目標を設定する:学習の機会と捉えれば対等な立場になる
・関心を持つ:他人の考えや心配事、感情などを知ろうとする
・プロセスの指針を示す:全員が従おうと思える指針をつくる
境界を超えたチーミングの例として、2010年に起きたチリの鉱山事故の事例が紹介されていました。
事故から70日で33人全員が救出された裏には、作業員のチーミングだけでなく、救出チームや政府のチーミングがあったことがわかります。
『チームが機能するとはどういうことか』の次に読むなら?
『チームが機能するとはどういうことか』とあわせて読みたい3冊を紹介します。
①『恐れのない組織』
『チームが機能するとはどういうことか』と同じ、エドモンドソン教授の著書です。
心理的安全性を知るには欠かせません。
事例が多く、心理的安全性がいかにチームの生産性・創造性を高めるかがわかります。
参考記事:『恐れのない組織』の要約:心理的安全性を高めたいリーダーにおすすめの本
②『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』
アンコンシャス・バイアスとは無意識の思いこみや偏見のこと。
多様な価値観を活かすためにアンコンシャスバイアスに気づいて対処するマネジメントがわかる本です。
自分のアンコンシャス・バイアスに気づくことは自己認識を高めることにつながります。
参考記事:『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント』の要約:最高のリーダーは自分を信じない
③『メンタリング・マネジメント』
チームメンバーを変えたければリーダー自身から変わる、
リーダーは見本/信頼/支援という行動基準で行動するという内容。
リーダーの在り方として『チームが機能するとはどういうことか』に通じるものがあります。
参考記事:『メンタリング・マネジメント』の要約まとめ:相手を変えたければまず自分を変える
まとめ:チーミングで学習する組織をつくる
・チーミングとは組織学習を促進する動的活動のプロセス
・ちょっとした気づきや改善を日々の仕事の中で実践するための土台をつくる
・チーミングの障壁は不安と思いこみ
・リーダーが率直であることの手本を見せる/認知的バイアスに気を付ける
・チーミングに必要な4つのリーダーシップ行動
ー学習するための骨組みをつくる
ー心理的に安全な場をつくる
ー失敗から学ぶ
ー境界を超えたチーミング
★今回紹介した本★
★読書好きな人におすすめのサービス★
・Amazon Kindle Unlimitedで電子書籍を無料体験
・Amazon Audibleで聴く読書を無料体験
電子書籍で多読したい!人にはAmazon Kindle Unlimited!
定価より安くてコスパがいいです。
時間がないけど読書したい人にはAmazon Audible!
手が離せないときにも耳で読書できます。
無料体験後はいつでも解約可能です!
⇓⇓登録手順や解約手順はこちら!
【Amazon Audibleの無料体験はかんたん】12万冊以上の本が聞き放題で効率的に読書できる
★さくっとインプットしたいなら本の要約サービスflier(フライヤー)★
読み放題のゴールドプランが7日間無料で試せます。
参考記事:本の要約サービスflier(フライヤー)の料金プランはどれがおすすめ?【お得に試せる】
本業の会社員では研修講師やファシリテーターをしています。コーチングも提供しているので興味がある方はぜひご検討ください。
自分を信じて行動が続けられる方法:コーチングを受けてみませんか?